第6話 見ちゃいけないものを見ちゃった気がする

「……ん? なんか今までと雰囲気が違う扉だな」


 ということでユウキとセリアのダンジョン脱出チャンネル、配信中です。

 この前の動画がそれなりにバズったので、同接が結構いるのが嬉しいポイント。


 ・ボス戦か!?

 ・初戦闘キタコレ

 ・やれんのかぁ?


「すっごくおっきい……」

「ギリセンシティブになってる可能性がある発言」

「センシ……?」


 ・俺達のセリアちゃんを汚すな

 ・こいつwwww


 心が汚れている大人は俺だけだったらしい。とにかく扉に手をかけてみる。

 セリアと共に力いっぱい扉を押してみるが、うんともすんとも言わなかった。


「っかしいな、鍵穴とかも見つからんが……」


 ・破壊する?

 ・逆走してるって話なら、引き扉なんじゃ


「その発想は無かった」

「でも、取っ手とかないよ……?」

「無いなら作るのみ」


 スキル【自在の変形】を用いて、両側の扉に引っ張る為の取っ手を創り出した。

 こんなのあるなら扉ごと変形させればと思うかもだが、ちゃんと開けたいじゃん扉。


 ・ご開帳!!

 ・さぁ、何が出てくる


 そうして二人で扉を引くと、大きな扉が鈍い音を立てながらゆっくり開いた。


「――あー、暇。暇過ぎてどうにかなりそうじゃわ!!」

「えっ」

「もう早上がりしちゃおっかな……。誰も来ないなら門番とかいる必要無いじゃろ……」


 開けた先には広いフロア。その中心ぐらいに、寝転がった様相の女の巨人がいた。

 どうやら俺達が後ろの扉から入ってきたことに気付いていないらしい。


「あの、すんません!! 今配信してるんですけど大丈夫ですかー?」

「!? な、何者じゃあ主ら!? え、というか今配信してるとか抜かしたか!? 我今すっぴんなんじゃが!? というかそんなことより何故我の後ろにおるんじゃあ!?」


 ・放送事故wwwwwwww

 ・これ映して大丈夫なやつ?w

 ・まさか後ろから来るとは思わない


 そりゃこんな反応が返ってくるだろう。誰も来なくて暇とか言ってたし。


「寝てる間か!? 我が寝てる間に後ろに抜けたのか!?」

「寝ちゃダメでしょ、門番やってるならさ」

「うぐ……返す言葉もない……」


 ・正論パンチすなwwww

 ・これは火の玉ストレート


 思ったよりコミュニケーションが取れる相手で助かった。これは取れ高になる。


「はっ、仕事じゃ仕事!! どちらにせよここに入ったからには問答無用で殺すまで!! この先に行かせるわけにはいかんのじゃ!! 数百年ぶりじゃが腕は鈍ってはおらぬぞ!!」

「!! ユウキ、危ない……!!」


 素晴らしい口上と共に、巨人は俺に向かって巨大な剣を振り下ろした。

 ついでだし【無限の夢幻】の性能テストでもしてみるか。死んだらすまん。


「なぁっ!? 我の一撃を、片手で……!?」

「そりゃ全ステータス∞なんだから、当然っちゃ当然の帰結か」


 まさに無限のステによる夢幻の体現。ダンジョン踏破のご褒美だったのも頷ける。


「お前には聞きたいことが沢山あるんだ、死ぬなよ~」

「あばぁ!?」


 そして絶妙に加減してワンパン。人(?)殴ったのなんてクソ上司以来ですよこれは。

 巨人の身体はフロアの壁まで吹っ飛ばされ、叩きつけられた後に倒れ伏した。


 ・強過ぎだろwwwww

 ・眉唾だったけど本当に強くて草

 ・えぐぅ

 ・あれ、ユウキがかっこいい……?

 ・安心して観れるな


 初めて俺が得た力の一端を見せたが、予想以上のことに度肝を抜かれるコメ欄。


「さ、このダンジョンについてみっちり話してもらおうか巨人ちゃん?」

「ユウキ、悪役みたい……」

「ここから脱出する為なら悪役にでも何でもなるわい」


 棚ぼただろうが何だろうが、得たものは全て有効活用するべき。

 最奥に行くのを阻止する門番が、最奥から来た奴に敵う道理などなかろうて。

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