第12話――所持品
「所持品を調べたら、こんなものが」
米田が、小さなジップ袋に入ったピンク色の錠剤を手に持って言った。
「中身を検査したので間違いありません。MDMAです」
高倉は米田からそれを受け取り、取調室のドアを開けた。
そして、足を組みながら座り、肩肘をついて金髪に近い茶髪のロングヘアーをいじっている長身のホステスの前に、ゆっくりと座った。そして、ジップ袋に入った錠剤を机の上に置いた。
「これをどこで?」
高倉が聞くと上目使いで、ゆりは彼女をじーっと見つめ返した後、また視線を下に遣り、怠そうに口を開いた。
「新宿のクラブで、外人さんから」
すると、今度は高倉がマジマジと、ゆりを見つめ始めた。
「な……何?」
ゆりは堪らず、のけ反るように上半身を起こし顔を歪めた。
「こういっちゃなんだけど……あなた人気ナンバーワン嬢にしては、こう……見た感じは普通ね」
あまりにも、さらりと言ってのけたので、隣に立っていた米田が驚いた表情で高倉の横顔を凝視した。
「ちょっと! あんた喧嘩売ってんの!」
ゆりが両手で思い切り机を叩きつけながら立ち上がった。しかし、高倉はピクリともせず、座ったまま上目遣いで続けた。
「よっぽど人当たりがいいか。他の理由が?」
ゆりの表情が強張り、高倉は付け加えるように言った。
「たとえば、客に薬を売りさばいていたとか――」
「いい加減にしな! でたらめ言ってんじゃねぇよ!」
高倉の言葉を途中で遮るように、ゆりが彼女に掴み掛かろうとしたが、慌てて米田が間に割って入り、なんとか事なきを得た。
取調室を出た後、米田が驚いた表情で高倉に言った。
「先輩……のっけから攻めますね……」
「ああいうタイプは、すぐ顔に出る。おそらく葉室和也も、彼女から薬物を買ってた太客だった。周囲の評価も二つに分かれるはず。クスリの影響よ」
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