第11話――追跡
高倉は慌てて、小さい体を窓からすり抜けさせ、コンクリートの上に革靴で飛び降りた。その音に気づき、女性はこちらを振り返り、高倉と目が合った瞬間、驚いた表情を見せると、慌てて不器用にフェンスの向こうへ飛び降り、裸足で走り去って行った。
高倉は女性が重そうによじ登っていたフェンスに手をかけ、軽々と飛び越え地面に着地し後を追った。
細い路地を抜けると、上野の飲み屋が軒並み続く通りに出た。人の通りは、ポツポツと増え始めていて、左手方向にピンクの衣装が走り去っていく後ろ姿がはっきりとわかり追いかける。
走っているうちに人通りは、さっきよりは多くなり、私服姿の他に、仕事帰りのスーツを着た男性の姿も見られた。その中を、一際目立った出で立ちの女性が、歩行者とたまにぶつかりそうになりながらも詫びることもなく、時折、こちらの方を振り返り、全速力で太ももを剥き出しにして裸足のままで駆けて行く。
再び振り返り、また前を向いた瞬間、誰かとぶつかり、よろけながら足を止めた。
彼女の前には、米田刑事が警察手帳を目の前に出し、険しい顔つきで立っていた。女性は引き返そうと後ろを振り返ったが、高倉刑事が、もう目と鼻の先まで迫って来ていた。
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