第7話――トラブルメーカー


 高倉と米田は部長に絞られた後、気持ちを切り替えるように署を出て、駐車場の車に乗り込んだ。深く深呼吸するように溜息をつきながら、高倉が呟くように言った。


「……まず長男を見つけないと」


 すると、運転席の米田がメモを取り出し、再確認するように読みあげた。


「八王子の実家に住んでた頃は、相当、家族と揉めてたみたいです。亡くなった母親の房江は義母ぎぼでした。仲が悪かったのは、実の父である長治ちょうじの方だったみたいで。近所の住民の証言です。付近を通りかかると、塀から離れているにも関わらず、しょっちゅう罵声や怒鳴り声が聞こえてきたりとかで、家庭内暴力もあったとか。かなり情緒不安定で、いきなり外を歩いていた通行人にも暴力を振るって警察沙汰になってたみたいです」


「トラブルメーカーね。現在の住まいは?」


「杉並区内のアパートに一人住まいです。今回、何よりも決定的なのが」


 そう言った後、米田がスーツの内ポケットを探り、一枚の写真を取り出した。写真には、グレーのハットと黒縁の眼鏡をかけた少し小太りの中年男性の姿が写っていた。


「近所の民家の防犯カメラを調べていたら、事件のあった夜に彼の姿が映っていました」


「当日は、実家にいた」


 高倉がそう言って米田の方を向くと、彼はエンジンをかけ車を発進させた。

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