第3話 出会い
強い衝撃を受け、目を覚ました。
「うっ…。」
左半身がズキズキと痛む。 どうやら、床に体を打ちつけたようだ。 目を開けると先程の背の高い男性がこちらを見下ろしていた。
「お前は今日からここに ”処置” が終わるまで暮らしてもらう。 全く、樹人何ぞにここまでしてやっているのだ。 そんな被害者面してんじゃねぇよ。 コレだから
樹人は…。」
とブツブツ言いながら男性は去っていった。
自分が今何処にいるかを確認するため、辺りを見回す。 ふと、何かの気配を感じた。
「…。」
辺りは暗かったので、目をよく凝らして”それ”が何なのか確認した。
すると、”それ”はいつの間にか私の目の前に移動していた。
「(音もなく、どうやって…?!)」
咄嗟に後退る。 ガッ、と”それ”に顔を掴まれる。 ”それ”の顔は見えない。
なので、私に敵意を抱いているかすら分からない。 すると、手が私の顔から離された。どうするか考えていた最中だったので、ポカンとした。
「…あ、ごめん! 顔掴んじゃって、痛くなかった…?」
突然、可愛らしい声が聞こえた。 鉄格子から漏れる少しの光が、”それ”の姿を露わにした。
”それ”は私とそう変わらない齢の、黄色い目をした少女だった。
想像していた人物像との差がありすぎて、私は酷く困惑していた。 そんな私の状態を見てなのか、
「えーと…。 まぁ、そうなるよね…。 突然ここに入らされてさ。 あー、状況確認も含めて、自己紹介でもする?」
少女の名前は ”テラコ・ミカ” 。 父親がアメリカ人の日英ハーフで、黄色い目は父親譲りだそうだ。 ミカは私の一つ年上の14才で、5ヶ月前からここにいるそうだが、カレンダーなどの日付を確認する物がないので、正確な期間は分からないらしい。
「ちょっと耳にした情報なんだけどね、私達がいる場所は樹人判定を受けた10才から14才までの子供が ”処置” を受けさせるための留置場らしいの。」
「その ”処置” って、具体的に何をするか、分かる…?」
嫌な予想程当たると言うが、私は認めたくなかった。
絵本で見た、樹人の姿…。 私が見た樹人達には、一つの共通点があった。
それは…
「…目から上の、頭の部分を切り落とされるらしいの。 毎日ね、聞こえてくるの。
女の子の叫び声が。 男の子の断末魔が…。 処置後、どうなるかは分からない。
けど、処置を受けた皆は生きているの。 …処置後、自殺する子もいるけど…。」
私は違和感を覚えた。
「自殺って、ここには何も無いのにどうやって…。 しかも、頭を切り落とされても生きていられる程の生命力を持っているにも関わらず、死ぬことが出来るの…?」
「そう、問題はそこなの。 どうやってあの子達は自殺を成功させたのか…。 一つ、
思いついた考えがあるの。 それは…。」
突然、ガンッと壁を叩くような音が聞こえた。
「おい! 雑居房9のガキ共!! さっきから何話してやがんだ!! コソコソうるせんだよ!!!」
どうやら近くに居た職員が私達を怒鳴りに来た。
「…ったく、気味の悪いガキ共だ。 もう一度こうなって見ろ! お前らの頭に蹴りを入れてやっからな!!!」
そう職員は吐き捨て、私達の前から去って行った。
「…話は明日にしようか。 もう夜だし、疲れたでしょう? ここまで来るのに。」
「分かった…。」
そして私達は朝を待った。
樹人 ロ口 @mongoriantyoppu
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