第2話 結果
板はひんやりと冷たく、薄い材質にも関わらず私を難なく支えていた。
私の用意が出来たタイミングで、医者は言った。
「今から君の頭の中の様子を撮るから、少し目を閉じていてね。 でも、痛くないから、安心してね。」
頭の中を見るという言葉に若干恐怖を覚えたが、医者の”痛くない”と言う言葉を信じてギュッと目を瞑り、その時を待った。
「はい、じゃあ撮るよ。」
その言葉と共に、瞼の上で強い光を受けた。
「はい、終わったよ。 起き上がって、そこに用意した椅子に座って少し待っていてね。」
あっさりと樹人判定診断なるものが終わり、ホッとしながら起き上がった。
待合室で診断が終わったことを放送されたのか、母が診断室に入ってきた。
しばらくすると医者が何枚かの紙を手に持ち、こちらに戻ってきた。 そして医者はこちらに目を合わせることなく、冷たく言い放った。
「診断の結果、貴方の娘さんは樹人です。」
一瞬、頭の中が真っ白になった。 私が、樹人? これは何かの冗談だろうか、とそう思うしかなかった。 私の頭は欠けていないし、血液だって赤色だ。 見た目だって
そこら辺を探せばいくらでもいる、13才の少女だ。 なのに、何故? この医者は他の患者の診断結果を持っていて、私の診断結果と間違えているのでは?
そんなことを永遠と考えていると、医者は机の上に設置されている画面の大きなパソコンをマウスで操作し、表示された画像について淡々と説明した。
「これは先程撮った、娘さんの脳内のレントゲンです。 ここに、植物の茎が見えるでしょう。」
と、白衣の胸ポケットに挿していた赤ペンで紙に印を付けてた。
そこで見たのだ、その紙の左端にはしっかりと私の名前が印刷されていた。
そして医者は説明を続ける。
「この茎の長さだと、変化の初期段階であり、血液はまだ赤色のままなんですよ。
あと3日もすれば、黒色へと変化していきますがね。 まだ植物が成長しつつあるので、その内側頭部を植物の芽が裂き、植物の一部がはみ出てくるでしょう。」
一通り説明を終えた医者が口を閉じると、母が大声を出し始めた。
「冗談じゃないわ! ”コレ”が樹人であることが分かっていたら、街の外にでも捨てていたわよ!! あぁ、産まなきゃよかった! こんなに苦労をかけたのに、損をしたわ!」
ゼェゼェと息を切らしながら私を睨んできた。
「落ち着いてください。 娘さんにかけた金銭は国から返還して貰えますので、大丈夫ですよ。 そして樹人と気づかず育ててしまった精神的苦痛の慰謝料、13年間分を受け取れますので金銭的な損はありませんよ。」
「それでも足りないくらいだわ!」
と喚き散らす母を部屋の奥から出てきた看護師が宥めている。
「あと、樹人留置場に連絡をした所、今日引き取って貰えるらしいです。 樹人判定診断の結果報告書を渡しておくので、帰りに市役所に向かってください。 娘さんの出生届の取り消しをしてもらってくださいね。 では。」
医者はスッと立ち上がり、去っていった。 母は、看護師に支えられながらこちらを睨みつけながら、
「この化け物…。 樹人なんて、絶滅してしまえばいいのよ…!」
と吐き捨て、診察室を出ていった。
「なんで…? 私が…、悪いの?」
口から勝手に言葉が出てきた。 母に罵倒された悲しみで泣きそうになると、ドアが急に開く。 そこには、背の高い男性がこちらを睨みつけていた。
「おい、貴様か。 さっさと立て。 お前を留置場へ連行する。」
呆然としていると、男性の後ろにいた数人が私を取り押さえ、手錠を掛けられた。
そして強制的に病院から引きずり出され、外に停められている大きな黒い車に乗せられた。 車内では、目隠しをされ、猿轡を無理やり装着させられた。
そして、車は発進した。 私は色んなショックから、気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます