外伝1の3【深層領域3】
外伝1の3【深層領域3】
「それが、お前の深層領域(サイコフィールド)という訳だな」
シンは薄く笑いつつ、能力に開眼した武雄(たけお)を見つめた。
「まあ、お前の能力(ちから)は、領域内での保護防壁(ほごぼうへき)が作り出せる訳だな」
「……『保護防壁』?」
武雄が眉をしかめシンの言葉をおうむ返しすると、
「そう」
シンは一言頷き、
「領域内における如何なる攻撃に対しての障壁を作り出しーー」
シンがいったん言葉を切ると、それを合図のように武雄の産み出した障壁は音もなく静かに消え去り、
「対象を保護するという、いわゆる『バリア』というものだな」
そう言いつつ、シンも武雄と同じように自身の身体の周りにバリアを張った。
「ちょッ、障壁が消えた?!」
「いや! かき消された!」
真人(まさと)と進(すすむ)が口々に言い、今度は下側から鋭利な円錐形の土の塊が次々と飛び出してくる。
「も、もう一度!」
武雄が叫び、開眼した時と同じように四人の周りに障壁を作り出す。
「でも下から来るんじゃあ……!」
真人が自身の足元を見て喚き、
「そうか! もしかしたら!」
何かを閃いたかのように、徐に両腕を真上に掲げて、
「みんな! 浮け!」
そう言うと真人を中心に進と武雄、美琴の四人の身体は、まるでシャボン玉に包まれたかのようにフワリと宙に浮いた。
「これッ、空中浮遊(レビテーション)?」
「うん。僕一人なら普通に使ってたけど」
美琴(みこと)が困惑しながら呟くと、真人は少し照れた笑いを浮かべ、
「みんなを同時ってのは少しコツがいるみたい」
「超能力ってのは、術者の精神力と基礎の応用で能力戦闘(サイコバトル)が優位になる」
シンはそう言いながら、真人たちと同じ位置に身体をレビテーション(空中浮遊)させていた。
次は徐に人差し指を出し何かを指示するように指を動かすと――
――グオォォォォッ!
ビリビリビリィッ! バチバチバチッ!!
稲妻で構成されているだろう巨大な蛇――否、『龍』が二頭、浮かんでいる四人に向かって左右目掛けて襲ってくる。
「クソッ! 能力分析(サイコエナリシス)!!」
進が龍を押し止めるように両手を水平に構え、
「停止(ポーズ)!!」
短くそう叫ぶと、稲妻の龍はその場で動きをぴたりと止めた。
「ほう」
シンは興味深げに片眉を跳ね上げた。
「対象である能力を瞬時に分析し即座にいずれかの形で相殺させるという、能力の応用技術だな」
シンの言葉に今度は進が少し眉をひそめた。
(俺のこの能力は真人しか知らないはず。このシンという男は一体何者なんだ……?)
シンが放った稲妻の龍、サンダードラゴンと言うのだろうか――それを相殺する形で動きを止めた進は、目の前にいるシンに密かに疑念を抱いた。
ヴァニタス【始動編】 伊上申 @amagin
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