外伝1の2【深層領域2】

外伝1の2【深層領域2】


「……」


 そんな彼等の態度に痺れを切らしたシンの顔は怒りを含んだ色を見せ――




 ――バチバチバチィィ……ッ!!




「いったぁ!」

「痛いッ」

「クッ、痛ッ!」

「キャアッ! いったぁいぃ!!」



 真人と武雄、進と美琴は突如同時に叫んだ。どうやら全身に【軽い】、微弱の静電気が流れたようだ。




「もーっ! なになになにッ?! 何なの一体ッ!」


 恨みがましくシンを睨む美琴。



「……少しお仕置きをした」


 顔色を変えずシンは事もなげに言う。



「お仕置きって……?!」

「前もって言ってよ!」


 武雄と真人が痛さと痺れに顔を歪め口々に言う。



「前もって言ったらお仕置きにならんだろ」

 

 真人の悲鳴にも似たツッコミに真面目に返すシン。


「それでもお前達は本当に能力者なのか?」


 少し呆れ混じりの表情を見せるシン。



「今のって、念動力(サイコキネシス)……?」

「まあそうだな」


 苦痛に耐えつつ進がそう聞けばシンは短く答えた。



「サイコキネシスには幾つかの種類があるって聞いたけど……」

 痺れから少し解放された武雄が小さく呟いて、

「サンダーキネシスですか? 今のは」


「そこまで知っていて、深層領域(サイコフィールド)を何故知らんのか不思議だ……ああ、そうか」


 武雄の言葉に心底呆れたシンは何かに思い立ったようで一人でに解決してしまう。



「ちょっと! 自己解決しないでちゃんと分かるように言ってくんない?!」


 美琴が両手を腰にあてがいシンに向かい合い怒鳴る。



「相変わらずお前は煩いな」

 と、溜息混じりにシンは言う。顎に手を当て少し考えるように美琴をはじめ真人等を見やると、

「……お前達は能力戦闘(サイコバトル)すらした事無かったな」



「……能力戦闘(サイコバトル)?」

「まあ実践するのが早いな」


 訝しげにシンの言葉をおうむ返しする真人に答えるようにシンが指を打ち鳴らすと、何度目かの空間転移される。




「こ、ここは?」


 転移に身体が慣れたのであろう、四人は大して驚く事も無く順応しているようだった。辺りを見回し進が呟けば――




 ――バチッ! バチバチッビリッ!



 青白い稲妻が、何も無い天井とおぼしき所から下に落ちる様に降り注いでいる。それはまるで小さな落雷そのものだった。



「ちょっとッ! どう言う事?!」


 落雷から怯える様な悲鳴をあげる美琴。



「ーーさて。自らの能力で防がなければ先程とは比べ物にならない【電磁波】がお前達を襲うぞ?」


 シンはスラックスの両サイドポケットに手を入れつつ四人を愉しげに傍観する。



「ふ、『防ぐ』ったってどうやってッ?! ……ぅワオッ!」


 慌てる真人は既での所で落雷を避ける。




「自身の、能力……」

 辺りに降り注ぐ落雷を避ける事もせず武雄が、真人や進、美琴を庇う様にふらりと前へ足を進める。



「タケちゃん?!」

「武雄ッ! 何してるんだッ?!」


 それに気付いた真人と進が武雄を呼び止めるが彼は何かに取り憑かれた様に目を虚ろにして口をモゴモゴと動かしている。



「無意識の領域。自身の空間……」


 武雄は両腕を前に突き出し手の平をシンの方へ向けた。


 すると、武雄の身体中がほのかに淡い黄色の光に包まれる。



「ほう? 開眼したか」


 シンが少し嬉しそうな表情を見せる。



「……タ、タケちゃん? ど、どうしたの?!」


「俺は大丈夫です、真人さん」


 武雄の様子に驚いた真人は彼に駆け寄るが、振り返り笑顔を見せる武雄。



「だ、大丈夫ったって……えッ?」


 真人が困惑するなか、真人は更にびっくりしたように目を見開いた。



 武雄自身を包んでいた淡い光が、武雄を中心に円形に広がっていきそれは真人や進、美琴を取り囲むようにして高さ五メートルくらいのドーム状の膜を張った。


 武雄が産み出したドーム状の幕は落雷を弾いてその中にいる真人等を守っているようだった。



「タ…、タケちゃんそれって……?!」


「なんとかなったみたいですね」


 驚き慌てふためく真人に微笑みつつ武雄は構えを解いた。

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