バーカウンター3(チャイナブルー)

Danzig

第1話

バーカウンタシリーズ3(チャイナブルー)


シーン1

※このシーン1部分は、バーテンダー役がいない場合は演じなくても問題ありません。


店に由美が入っている


バーテンダー:いらっしゃいませ


由美:あの・・・私・・・


バーテンダー:以前、玲子さんといらした方ですね?

バーテンダー:玲子さんならおいでですよ

バーテンダー:お隣のお席にご案内いたしましょうか?


由美:はい、お願いします


玲子の隣の席に案内するバーテンダー


バーテンダー:こちらのお席へどうぞ


シーン1終わり(以降本編)



バーテンダーに案内されて玲子の隣に立つ由美


由美:あの・・・玲子さん


玲子:あら?

玲子:由美ちゃんだったわね


由美:はい


玲子:今日はどうしたの?


由美:少し、玲子さんとお話がしたくて・・・


玲子:たかしの話?


由美:いえ、そうじゃなくて・・・


玲子:ふーん

玲子:まぁ、どうぞ


由美:はい

由美:ありがとうございます。


席に着く由美

バーテンダーがセッティングをする


玲子:何か飲む?


由美:じゃぁ、チャイナブルーを・・・


バーテンダー:かしこまりました


カクテルを作るバーテンダー

その手さばきを見ている玲子


玲子:チャイナブルーを飲むのね


由美:以前、ここで頂いたのが美味しくて・・・・

由美:それに、私、これしか知らなくて・・・


玲子:それでいいと思うわよ


由美:そうですか・・・


バーテンダー:お待たせしました、チャイナブルーです


由美:あ、ありがとうございます

由美:やっぱり、きれいな色・・・


カクテルを飲む由美

由美:美味しい


由美を見て、少し微笑む玲子

玲子:それで、話したい事ってなに?


由美:実は・・・私、

由美:自分に自信が持てなくて・・・


玲子:ふーん、そうなの・・・それで?


由美:はい・・・

由美:どうしたら、玲子さんみたいになれるのかなぁって・・・


玲子:え?、私?


由美:ええ、玲子さん格好いいなぁって・・


玲子:私は、そんなに恰好良くないわよ

玲子:別に美人でもないし・・・


由美:いえ、玲子さん恰好いいです。

由美:でも、私は、スタイルもよくないし、顔だって自信ないし、お金持ちでもないし・・・


由美の話を聞いて、昔を思い出す玲子

玲子:私もそうだったなぁ


由美:玲子さんが・・・ですか?


玲子:そうよ

玲子:私も何にも持ってなくて、人が羨(うらや)ましくて、自信なんて何にも持てなかったわ


由美:そんな事・・・


玲子:でも、そんな時にね、言われた言葉があるの


由美:・・・どんな言葉ですか?


玲子:『配られたカードで遊ぶしかないじゃない』ってね


由美:・・・・・

由美:配られたカード・・・ですか?


玲子:人生がもしカードゲームなら、配られるカードは、人それぞれみんな違うでしょ?

玲子:だったら、自分は自分の手札で楽しまなきゃねって事


由美:素敵な言葉ですね


玲子:フフ


由美:誰に言われたんですか?


少しからかう感じの笑みを見せる玲子


玲子:誰だと思う?


由美:たかしさん・・・ですか?


玲子:違うわよw


由美:じゃぁ、誰・・・ですか?


玲子:スヌーピーよ


由美:スヌーピー・・・って、あの漫画のですか?


玲子:そう、犬のね


由美:そんな・・・


玲子:でも、その言葉を聞いた時、私、すごく楽になったわ・・


由美:・・・・・


玲子:可笑しいでしょ、私、犬に人生教えられてるのよw


由美:玲子さん・・・


玲子:自分のいい所も、そうでない所も、全部ひっくるめて私なのよ、きっと


由美:玲子さん・・・


玲子:いい女ってさ、自分に自信のない所があっても

玲子:そういう所を『そうね』って笑える女なんじゃないかな?


玲子:そう思えるようになってから、肩の力が抜けたかな


由美:そうだったんですか・・・


玲子:そうよ

玲子:あなたも、まずは、肩の力を抜いてみたらどう?


由美:もし、そうできたら、私もいい女になれるでしょうか?


玲子:それは分からないわねw


由美:・・・・


玲子:だってw


由美:だって?


玲子:いい女かどうかなんて自分で決めるもんじゃないでしょ


由美:それはそうですけど・・・


玲子:だから、考えたって仕方ないのよ


由美:そうですよね

由美:何だか、少し楽になった気がします


玲子:そう? よかったわ


カクテルを飲む由美

由美:美味しい・・・

由美:


由美を見つめる玲子

そして、自分のグラスを見つめながら


玲子:由美ちゃん


由美:はい


玲子:あの時、マスターがあなたに出してくれた、そのチャイナブルー。

玲子:ちゃんと意味があったのよ


由美:そうなんですか?


玲子:多分そうよ、

玲子:お酒にも花言葉みたいなものがあってね

玲子:お酒に意味を持たせたりするの

玲子:まぁ、遊びみたいなもんなんだけどね


由美:そうなんですか


玲子:そして、チャイナブルーに秘められた言葉は『自分自身を宝物だと思える自信家』

玲子:あの時のあなたを見て、マスターが選んでくれたんじゃないかな


玲子:チャイナブルーはね、路(みち)に迷った友人や恋人に、こっそり、薦(すす)めたりするのよ


由美:こっそり・・・ですか?


玲子:そう、

玲子:だって、酒言葉なんて、殆ど知られてなんていないし

玲子:それに・・・

玲子:あからさまなんて、野暮ったいじゃない


由美:そういうもんなんですか・・・

由美:でも、伝わらなかったら、折角・・・


玲子:そういうとこが格好いいのよ。

玲子:ね? マスター


無言でバックヤードに酒を取りに行くバーテンダー


玲子:あら、行っちゃった

玲子:マスターって、こういう時には、何も喋ってくれないのよね


由美:格好いい・・・・ですね


玲子:フフフ、でしょ。

玲子:あなたも早く、こんな『いいバー』を見つけなさい

玲子:いい女ってね、多分、そういう行きつけのバーっていうのを持ってるものよ


由美:え? ここに来ちゃダメなんですか?


玲子:それは・・・だって、ほら

玲子:ここは、私の行きつけの店だから・・・

玲子:できれば・・・由美ちゃんは由美ちゃんで・・・


由美:ダメ・・なんですか?


玲子:わ、私だってさ、やさぐれたい時くらいあるのよ

玲子:そんな姿、知り合いに見られたくないじゃない


由美:フフフ、玲子さんって、意外とかわいいですね


いつの間にか戻ってきて、微笑んでいるバーテンダー


玲子:もう・・・何笑ってるのよ、マスター


玲子:マスター、お代わり


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