貴族令嬢ですが、王子にプロレス技しかけたら追われることになった件

猫カイト

第1話 拝啓母上。

 拝啓 母上。

桜が満開になる季節になりましたね。

どうお過ごしでしょうか?

私は今会うのがずっと夢だった王子様にジャーマンスープレックスをかけています。


 今日は念願の王子様が結婚する日という事で城下町やお城は大賑わい。

 不細工な王女様だとか、性格が悪い王女様だとか色んな噂が飛び交っていますが、私の仕事は変わりません。

 私は水を絞りモップをかける。

他のメイド達は窓を拭いたり、箒をかけたり、色々な仕事を急いで行っている。

 ある王国の話だが、掃除をしている姿をみただけで激怒する王族もいると聞く。

そんな短期な王族に国の運営が勤まるのかとは思うが、

妻なら話は別だ。

 その短期な家系の姫様なのかという噂もたっているので、皆は冗談半分ながらも制裁が怖く仕事を急いで終わらせようと急いでいる。

 私はそんな他のメイド達とは違い、ゆっくりと丁寧にやる。

急いでやって埃でも見つかって怒られる方がよっぽど現実的で怖いと感じたからだ。


「来たわよ!新しい奥様!」


 皆が外の馬車に注目している。

それはいつも見る馬車より綺麗でいかにも新婦が乗っているような物だった。

 一度だけのための馬車を作っているお金が有るのなら

私達メイドに給料を弾んでくれてもと思うが、これは外交とも言えるからしょうがないかと納得する。


「見に行きましょう!」


 皆は仕事をそのままに新しい奥様を拝みに行く。

新しい奥様が気になる気持ちは私にもあるが、

仕事をほっぽりだして行くのはメイドとしてどうかと思い、私は一人で仕事を続ける。


 私は今回の結婚あまり納得していなかった。

顔も、好きな食べ物も、好きなスポーツも知らない。

そんな人と突然結婚しろと言われ、納得する女の子が居るだろうか?嫌居ない。

だが、私の家は下級の貴族の家だ。

当然断れるわけもなく。

そんなこんなで私は王国が寄越した馬車に乗り、長い旅を続けた。

長旅と突然の縁談その二つがあり、

私の怒りのボルテージが上昇するのは無理も無かったと思いますお母様。


 私はようやく着いた馬車から降り、各国の重鎮達や、騎士達に歓迎を受ける。

 下級貴族という身分でありながら王子と結婚するのが珍しいのか、周りの人達は好奇の目で私をみてくる。

ただ、男と女が結婚するだけなのに、私は珍しい動物を見るような目を向けられる。

 その嫌な気分はここに居る奴らには分からないのだろう。

私はとっとと結婚を終わらせ、この好奇の目から逃れたかった。

 私は急ぎ、城に入る。


「ホッホッホッ、恥ずかしがって入っていくとは中々初々しい娘ではないですか!」

「そう褒めていただけると新婦の父として嬉しい所存です。」


 父上はそうは言ってはいるが、娘の性格をよく知っているからか、恥ずかしがって居ないことは理解していた。

何か問題が起きませんようにと神に祈る父。

その願いを叶えさせて上げられなくて、本当に申し訳ありません。


 私は城へと入りはしたが迷ってしまい、

途方にくれていた時、私は一人で働くメイドを発見する。

 そのメイドはまだ春先だと言うのに手を冷たくし、窓ガラスを拭いている、しかも一人で。

 私はその光景を許せずにいつの間にか行動していた。



 私が一人で掃除をしているとどこからともなくお客様がやってくる。


「一人で大変でしょう? 私も手伝うわ。」

「そんなお客様にお掃除をさせたとなったら私が上司に怒られます!」

 

 私は必死でお客様を止める。

服装から見て、どこかの国の令嬢だろう。

そんな人に掃除を手伝わせたとなったら、私の首が比喩抜きで飛ぶ。

 そんな事はお構いなしで、彼女は手伝いを始める。

 彼女は手慣れているのか、テキパキと仕事をこなす。

意外だった令嬢がこんなに仕事が出来るなんて。


「意外でしょ、私の好きな本の教えで掃除はすべてに通ずというものがあってね。だから家では全て自分でやってるの。」


そんな教え聞いたことがないが、それはおそらくお嬢様宛に書かれた本ではないと思うが...

 そんな風に考えていると令嬢は突然ドレスの下を破き始める。


「な、なにしてるんですかぁ!?」

「何ってこんな格好じゃ飛べないでしょ?」


 飛ぶ?

私が訳が分からず困惑していると、突然令嬢は体を慣らすように動き始める。

その運動を数十秒したのちに、窓に向かって跳躍する。

 その跳躍力は高く、結構な高さがある窓枠に届くほど。

彼女は目の前にある窓枠に掴まり、窓を拭く。


「これが...れい...じょう?」


 お転婆といわれる私の妹がかわいく見えるレベルで奇想天外だ。


「やっぱり狙った高さに飛ぶのしたことないからあんまり高く飛べなかったなー もう一段上の窓からやろうと思ってたのに。」


これで慣れていなかった事に度肝を抜いてしまい、私はバケツを倒してしまう。

それが大きな事件を呼んでしまうとは思っていませんでした。



父上、母上、

今日は最善の一日になるはずでした。

なのにどうしてこうなってしまったのでしょうか?

俺は今日を振り返る。


 私の新しい妻が城に恥ずかしがって入っていったと聞き、私は妻を探す。

なんと優しい夫なのだろう。

惚れられてしまうな。

 そんな事を考えながら、歩いていると私好みなメイドのノラが床を拭いている。

彼女は健気で可憐だ。

いずれは床に誘いたいと思っているが、今は妻だ。

すまないノラ、と心の中で思いながら彼女の横を通ろうとした時、俺は床に零れている水に気づかず、すっ転ぶ。


「だ、大丈夫ですか?」

 

 ノラが俺に手を伸ばす。

あぁ、なんと優しいまるで女神の様だ。

俺が彼女の手を取り立ち上がった時、頭に違和感を感じた妙に涼しく冷たいような・・・

 俺が倒れた隣には、まるでわかめのような私のカツラが転がっていた。


「ち、違うんだノラこれは...」


俺は弁明のためにノラに近づく。


「わ、私何も見てません!!」


 ノラはそういい俺から距離をとる。

これがメイドや今日きている客人バレたら一大事だ。

王子が若ハゲだと噂されたらいい笑いものだ。

なんとしても隠さなくては...

彼女の口止めをしようと寄って行ったとき。


「30ページ 13節!! 悪・即・プレス!!」


その声を聞き声の方向を見たとき、可憐な少女が見えた。

それが俺の意識を失う前の最後の光景だった。



 私は掃除を終わらせ、降りようとしている時、さっきまで一緒に仕事をしていたメイドの彼女が絡まれていた。

その光景を私の体がいや、プロレスが許せなかった。

 そして私は気づいたら、ボディプレスをしていた。


「大丈夫だった?」


 変なことをされていないか気になり、聞こうとした時、


「王子ィィィ!!」


王...子...? こいつが!?


「嘘でしょ!? だって王子は黒髪のサラサラの髪の毛って...」


 私が困惑していると、足元に変な感触があることに気づく。

それは黒い髪の毛だった。

私はすべてを理解する。

 このままでは私は王子に攻撃を加えた重罪人。

私は死刑で家は取り潰し...

 そんな絶望的な状況の中で私は妙案を思いつく。


「逃げるか!!」


そして私の逃亡生活が始まりました。

母上お身体を壊しませぬように気を付けてください。

 PS しばらく帰れそうにないのでセバスチャンのごはんをあげておいてください。


「最後に言うことが犬の心配かセレス!!」


ある領主の家から今まで聞いたことがないほどの大きな声が聞こえ話題になったのは別の話。

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貴族令嬢ですが、王子にプロレス技しかけたら追われることになった件 猫カイト @Neko822

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