エピローグ
風呂から上がり、スキンケアを終えてベッドサイドに腰を下ろすと、スマホの通知音が鳴った。Twitterを確認すると裕太からダイレクトメールが届いていた。
“先日は本当にありがとうございました。怜さんは命の恩人です!冗談抜きで。”
“こちらこそ、貴重な経験になりました。その後はどうですか?ちゃんと眠れて居ますか?”
“お陰さまでぐっすり眠れるようになりました!ありがとうございますm(_ _)m
あの後婆ちゃんに「何であんなところに壷を置いといたんだよ」って聞いたら、何でも婆ちゃんも親から譲り受けたものの、気味が悪くて持て余していたんだそうです。でもって、うち、ちょっと前まで婆ちゃんとは離れて暮らしていて、二世帯住宅を建てて引っ越したばかりだったんで、その時のどたばたで食器類に紛れ込んだみたいです。で、「まぁいっか」ってそのままにしていたらしいです。ってこれ僕と同じだな。血は争えない。😓”
“あはは。ホントですね😄
お元気そうでほっとしました。”
“そう言えば、実家で竹下博の書いた本を見つけたんで読んでみたんです。
多分、そのまんま彼女……節子さんの物語なんじゃないのかな、あれは。
妖術の残る村を出て、売春で身を立てて、苦労の多い人生だったみたいです。
ただ、物語の中では、彼女は最後は売れっ子作家になって成功する筋書きのサクセスストーリーでした。何だか切ないですね。”
“そうですね。呪詛をかけた者の末路を思うと……。そのへんの事はあまり考えないようにしているんですけど。何にせよ忘れられない体験になりました。”
“怜さんはよくご存じなだけに余計に辛いでしょうね。また機会があれば、仕事ではなくて遊びに来て下さいね。M市は見所が沢山ありますから。僕がご案内しますよ!😀”
“ぜひぜひ😆
また美味しいものを食べに行きたいです!
それではお休みなさい🥱”
怜はTwitterを閉じるとベッドに潜り込んだ。
ハッピーエンドとは言い難い結末ではあったけれど、彼女の望みは叶ったのかもしれないな……。
彼女の犯した罪は決して許されることではないけれど、世の中には白と黒では割り切れない事がそれこそ星の数ほど、ひょっとしたら人間の数だけあるんじゃないかしら。
そんな事を考えながら、怜は久々にぐっすり眠れる幸せを噛みしめていた。
【終】
過ちの代償 遠野子 @tonoco
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます