二人の運命 (最終話)

九月一日、二学期が始まった。俺は、浮かない気分で学校に行った。なぜなら、夏休み期間に梨奈さんとあまり関わることができなかったからだ。まあ、少し電話をしたりしたが、梨奈さんは引っ越しの準備で忙しようにしていた。だから、あまり電話をかけることはできなかった。


俺は、沈んだ気分で教室に入り自分の席に座った。すると、


「山本くん、髪切ったの?似合ってるね」

と隣の席の女子が声をかけてきた。


「ありがとう」

と俺は、そっけなく返した。


「彼女でもできたの」

と下世話なことを聞いてきた。


「まあ、一応いるけど」


「いるの!?」

と教室にいる人全員に聞こえるくらいの声量で言った。


「そんな大きな声で言わなくても」

と言うと俺から離れていった。多分、俺に彼女がいるとは思わなかったのだろう。


でも、遠距離恋愛は、少し辛いところではある。友達に彼女に合わせてと言われてもなかなか合わせることができない。まあ、友達はいないけど。そんなことを思っていると、始業式の放送が始まった。校長は、去年と全く同じことを言っていて早く終わらないかなと思っていた。


始業式が終わると、俺は一番に教室を出た。すると、


「ねえ、一緒に帰らない?」

と隣の席の女子が話しかけてきた。


「別にいいけど」

俺は、一緒に昇降口まで行って校門を出ようとした。すると


「和樹!きちゃった」

と言うと声がした。声の方を向くと同じ制服を着た梨奈さんがいた。


「梨奈さん?」


「そうだよー。って隣の子は?」

と梨奈さんが聞くと


「なんでもないです」

と言って急足で帰っていった。


「なんでいるの?」

と梨奈さんに聞いた。


「実は、お父さんの転勤先がこの近くなの」


「そうだったんだ」

俺は、嬉しい反面なんで早く教えてくれなかったのか不思議に思った。


「びっくりした」


「うん。なんでずっと黙ってたの?」


「和樹の驚く顔が見たかったから」


「俺、電話してもあまり出てくれないからちょっとショックだったんだよ」

というと梨奈さんは、少し戸惑った顔をした。


「それはごめん。じゃあ、この後デートしよ」


「いいの?」


「もちろん。初デートだね」

俺は、梨奈さんとデートすることになった。俺は、とてもワクワクしている。会えなかった分このデートで隙間を埋めたい。


俺と梨奈さんは、学校の近くにあるゲームセンターに入った。入ると真っ先に梨奈さんは、プリクラ機に行った。


「プリ撮ろ」

と言われ俺は初めてプリクラの中に入った。お金を入れた後、色々な項目が出てきたが全て梨奈さんがやってくれた。すると、モニターに色々なポーズの例が出てきた。


「このポーズにしよ」

と言われ俺は、人生で初めて指ハートをやった。とてもぎこちない指ハートだったから


「和樹の指ハートかわいい」

と梨奈さんが笑いながら揶揄ってきた。


「そんなに笑わないでよ」


「ごめんごめん。今度は、和樹がポーズ決めていいよ」

と言われたから俺は、梨奈さんをバックハグした。


「本当にそれでいいの?」

と梨奈さんが驚いた表情をした時にパシャっとシャッター音がなった。


「もう、絶対変な顔になったじゃん」

と梨奈さんは、少し怒っていた。その姿も愛おしかった。


写真を撮り終わり写真に落書きをし始めた。俺は、何を書けばいいのかわからなかったから全て梨奈さんに描いてもらった。そして撮った写真がプリントされて出てきた。俺は、なんとも言えない顔をしていたが梨奈さんは、とても綺麗に映っていた。


「初々しいカップルだね」


「そうだね」

と俺が言うと梨奈さんは少し嬉しそうだった。


十二時を回ったから、俺と梨奈さんはゲームセンターを出た。


「この後どうする?」

と俺が聞くと


「私の家きて」

と言われた。俺は、突然のことに驚いている。


「それは、よくないよ」

と意味不明なことを俺は言ってしまった。


「とにかく、いくよ」

と梨奈さんは、強引に俺の手を引っ張って梨奈さんの家の方に向かった。向かってる方を冷静に考えると俺の家の方向でもあることがわかった。まさか、俺の家に行こうとしているのかな。そんなことを思っていると、


「ついた」

と梨奈さんが言った。


「ここって」

ついた場所は、俺の家の隣の家だった。


「私の家」


「俺の家の隣じゃん」


「これからは、毎日会えるね」


「夏休み会えなかった分をこれから二人で埋めていこ」


「そうだね」


遠距離恋愛になって俺は、少し落ち込んでいたがまさかお隣さんの関係になるとは思わなかった。世間的には、夏休みは終わったが俺の中の夏休みは今日から始まった。

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海の家でバイトをしたらギャルに好かれた 坂本宙 @Sakamoto_Sora

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