遠距離
片付けを終え、俺は梨奈さんのお父さんと世間話をしていた。すると、仕事を終えた父親と梨奈さんが来た。すると
「ちょっと飲みに行かない?」
と父親が梨奈さんのお父さんに言った。
「いいねー。俺も飲みたいと思ってたんだよね」
「和樹はどうする?」
「俺は、ここにいるよ」
「そうか。梨奈ちゃんは?」
「和樹がいるなら私もここにいる」
「わかった。じゃあ、行ってくる」
と言って二人は、行ってしまった。
俺は、梨奈さんと二人きりになってしまった。俺は、夜中のことを謝ろうとした。しかし、先に口を開いたのは、梨奈さんだった。
「和樹、私のこと避けてる?」
「避けてないよ。なんでそんなこと聞くの?」
「だって、今日全然仕事しなかったじゃん」
「それは、美容師さんと話してたりしたから・・・」
俺は、本当のことを全て話した。
「そうだったんだ。じゃあ、嫌いじゃないんだ」
「大好きだよ」
俺は、自分の気持ちを梨奈さんに伝えた。
すると梨奈さんの顔は、真っ赤になった。
「なんで、急にそんなこと言うの」
と恥ずかしそうに梨奈さんは言った。
「やっと自分に素直になれたんだ」
「これでやっと両思いだね」
俺は、生まれて初めて両思いの恋をした。俺は思い切って
「俺と付き合ってください」
と言った。
「はい、お願いします」
と梨奈さんは、俺に抱きついてきた。
その後、俺と梨奈さんは買ってきた花火を開けて二人で遊んだ。俺は、久しぶりの花火に少し興奮していた。カップルが夏に花火をやる気持ちが少しわかった気がした。俺がそんなことを思っていると
「線香花火やりたい」
と梨奈さんが言ったから線香花火をやることになった。
「私、彼氏と花火やるの夢だったんだよね」
「その夢、俺が叶えちゃったね」
「そうだね、私は幸せ者だなー」
そう言って、梨奈さんは俺に寄りかかってきた。その時の振動で俺の持っていた線香花火は消えてしまった。
「あー、消えちゃったじゃん」
「また買えばいいじゃん」
「でも、明日帰っちゃうんでしょ?」
「うん、埼玉に帰る」
俺は、この時初めて埼玉に梨奈さんが住んでいることを知った。まさかの遠距離恋愛になってしまった。俺は、明日が終わってしまえば梨奈さんにしばらく会えない。そう思うと、少し寂しい気持ちになる。
「そんな顔しないでよ」
「だって、せっかく付き合ったのにしばらく会えなくなっちゃうんだよ」
「じゃあ、毎日電話しよ」
梨奈さんは、そう言ってスマホを取り出した。
「連絡先教えて」
と言われたから俺もスマホを出して連絡先を交換した。これで二人の赤い糸がさらに太くなった気がした。
「これでいつでも話せるね」
「そうだね」
二人きりの甘い時間は、あっという間に過ぎていった。
「おーい、何やってるんだー」
と声が聞こえた。声がした方を見ると父親と梨奈さんのお父さんがいた。
「和樹くん、一緒に花火やろうって言ったじゃん」
と梨奈さんのお父さんに言われてしまった。
「私がやりたいって言ったの」
と梨奈さんが言うと
「じゃあ、しょうがないな」
と納得していた。
「じゃあ、先戻ってるから」
と言って父親は、海の家の方に帰って行った。
「私たちも帰ろうか」
「そうだね」
俺と梨奈さんは、花火の後始末をしてから海の家に戻った。
海の家に戻ると、父親と梨奈さんのお父さんはもう部屋に入った様子だった。俺も部屋に戻って着替えをした。着替え終わってベットの上に寝っ転がっているとドアが突然開いた。誰だろうと思いドアの方を見ると梨奈さんだった。
「来ちゃった」
と言って梨奈さんは、俺のベットに寝っ転がった。
「ここで寝るの?」
「もちろん」
と言って、梨奈さんは強く抱きしめてきた。
「梨奈さん、俺はぬいぐるみじゃないよ」
「わかってる」
梨奈さんは、そう言って俺のことを抱いたまま寝てしまった。俺は、未防備な姿を見てキスをした。すると梨奈さんは、起きた。
「今、何かした」
「キスした」
「なんで、寝てる時にしちゃうの」
と少し怒っている様子だった。
「そんなに怒らないでよ」
「だって、初めてだったんだよ」
「じゃあ、もう一回しよ」
と言うと、梨奈さんの方からキスしてきた。
「ドキドキするね」
「そうだね」
そう言って、俺と梨奈さんは同じベットで寝た。俺は、不思議なくらいぐっすりと眠れた。
翌朝、目を覚ますと梨奈さんは、もういなかった。一階に降りると置き手紙が置いてあった。俺は、置き手紙の中を見てみた。
「山本和樹へ
本当は、今日までいる予定だったんだけどお父さんの転勤の関係で家に帰らないといけなくなっちゃった。突然のことでごめん。なんかあったら、連絡してね。
飯塚梨奈」
俺は、突然のことに驚いている。今日の夕方まで一緒にいられると思ってたのに。デートにドタキャンされた人の気分が少しわかるかもしれない。大袈裟かもしれないが俺は、そのくらいショックだ。すると
「和樹、梨奈ちゃん帰っちゃったから手伝って」
と父親に言われた。急に現実に戻された感じがした。
あと三十日くらいあるバイトが憂鬱に感じるくらい昨日と一昨日は楽しかった。俺の夏休みは、もう終わったに等しい。そのくらい俺には、梨奈さんが大切みたいだ。
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