別れ
第10話(最終話)
あと1年後に、歩たちのチームはチキュウへいけることになった。
しかし、この星の住民は、一度この星を出るとただの将棋のコマとなってしまい、元には戻れない。
そして、歩たちのチームの、それぞれの家族との別れもせまってきていた。
そして1年後―
「いやあ、チームが決定して3日後ぐらいにはチキュウに行けると思ったのに、チキュウに行くための機械をつくっていなかったとはなあ。」
王将が呆れたように言う。
「でも、チキュウに行ったらもうこの姿には戻れない。もうお父さんとお母さんには会えないんだ。」
歩が悲しそうに言う。
「それはそうだな。でも私達は、チキュウに将棋というゲームを送るための代表になれたんだ。これからチキュウで活躍できるから、いいじゃないか!」
王将が励ます。
雲ひとつない真っ青な空が見下ろす草原で、いよいよチキュウへと旅立とうとしている。
近くに、飛車くんを見かけた。飛車くんは、父と母に抱かれて泣いていた。
角行も、金将も、銀将も、桂馬も、香車も、それぞれ家族のもとで最期の時間を過ごしている。
歩は、まだ家族と会えていなかった。なぜか家族に見つからないようにしたいとも思った。歩は、他のコマ達に紛れていた。それがわざとなのかも、自分では分からなかった。
「こっちは準備できたよーー!!」
王将が力いっぱい叫んだ。
みんな家族と最後の握手をし、抱き合い、機械に乗り込んでいった。
飛車くんもちょっとだけ遅れて、機械に乗った。
歩は、何も考えずに機械の方に向かって歩き出した。すると、後ろから声がした。
「歩兵くん!!」
父と母の声がした。
しかし、僕はなぜか機械に向かって走り出していた。
そして、機械まで数歩まで来たところで振り返り、力いっぱい叫んだ。
「お父さーん、お母さーん、今までありがとう
!!ぼく、これから頑張るから!!」
「お歩くん……」
飛車くんが心配して駆け寄ってきた。
しかし、それを無視して、歩は父と母のもとへ走り出し、思いっきり抱きついた。
みんな、静かに見守っていた―
「王手!!」
パチン!
将棋のコマを置く快い音が、青い空の下、将棋の道場に響き渡った。
【ザ・将棋サバイバル 完】
ザ・将棋サバイバル カタミミズク @kingyo3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます