第2話 昼休み。
アメン君はいつも通り、3女傑が屯するD組一番の関所を通れずに廊下に棒立ちのまま何かの本を読むのに没頭してた。アメン君に気付いた3女傑の1人のマーちゃんは、「あ、ごめーん」と目線も合わないアメン君を教室へと通した。彼はノールックで俺の席に座った。
「アメン君、よっす」
「あぁ、よっす」
「今日も重役出勤って大丈夫か? 単位」
「単位…?」
アメン君は初めて聞いたみたいな不思議そうな顔で驚いてた。
「高校は義務教育じゃねーから普通に留年するぜ? 俺の兄貴もOBだけど、留年してるんよ」
「そうか、ありがとう」
「どいたしまして?」
相変わらずアメン君との会話はぎこちないキャッチボールだった。
「てか昼食ったん?」
「まだ昼には早いと思うが」
「もう昼休みだぜ。ちょーど昼だよ」
彼はCASIOの安い腕時計を確認して「しまった」って顔を学帽で隠した。学ランも相まってアメン君は昭和とか大正からタイムスリップして来たみたいなんだよな。
「朝餉を買うのを忘れていた!! 何たる
「
「全て奴の…M崎の陰謀か…!」
「多分M崎さんは無関係だと思うんよ」
「金髪…!? まさかお前は既に奴に買収されているのか。Schiße!!!」
アメン君は立ち上がって何らかのドイツ語を叫ぶと、B組の方へと走っていった。
———
「M崎っ!! 俺に味噌汁を寄越せぇ!!」
昼休みも後半戦、アメン君は叫んだ— 的な? 「プロポーズじゃない!?やだぁ!!」「いや、夫婦漫才だろ」「でも、アメン君ってギャル先輩が本命だろ?」「M崎は妾…ッテコト!?」などと有象無象のクラスメイト達が騒ぎ立てる。私は予備のインスタント味噌汁と魔法瓶を取り出して、彼にアチチな味噌スープを与えた。私ってとことん女神だよね☆
「…アッツツ!!」
「味噌汁だかんね。あ、あとお弁当」
「やはりお前が…!」
アメン君はシャイニングの嫁がシャワールームに篭ってる時くらい目ん玉をひん剥いて弁当箱を受け取った。
「いや、アメン君自身が読書に夢中で忘れてただけでしょー? ほら、お礼言いなさい」
「! そうか、感謝する」
彼は事実を突きつけられる→納得すると簡単に折れる。アメン君は足早に元来た道を戻っていった。レトリバーみたいでカワイイよね☆
「M崎ー、アメン君に渡した弁当箱って返ってくんの?」
「なわけないじゃーん♪」
「えぇ…」
「ちゃんと使い捨ての奴に詰めてきたからヘーキなんだな〜これが」
「流石変人夫婦…息ピッタリだな」
「そんな〜、ジキルとハイドみたいなんて…照れる☆」
「それ同一人物だろ」
有象無象Aをあしらい、私は更に予備の弁当箱を取り出してタコさんウインナーと卵焼きをいっぺんに頬張った。我ながら良い味である。
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