第19話 ケモミミさんは恥ずか死する

「……アゼル…」


 最悪だ。

 へそだしメイド服で知り合いにあってしまった。しかも『新生の風』のメンバー全員いるし…

 おわったネ☆


「…アイン?どうしたの?」


 エリィが不安そうにオレを見上げる。

 そんなエリィの頭を優しく撫でた。

 おお、エリィや。アインばあさんになにようかね?あめちゃんがほしいのかね?


「アイン…その格好…やっぱち──」

「あ゛?」

「ナンデモアリマセン!」


 オレはアゼルを睨み付け、腰に着けたオーク汁入りの水筒をチラつかせる。アゼルはそれを見た途端、顔を青くして敬礼をした。


 痴女とは言わせん。言わせんぞ。あとなんで敬礼してんの…?


「あら、アインじゃない………何、その格好…」


 オレを見るなり、顔をひきつらせるマリーンちゃん。

 うう…そんな目で見ないでおくれ…。見た目少女に冷たい目で見られたら、なんだか興奮しちゃうじゃないか…。


「あっ!アイン──さん!?」


 セレナちゃんが顔を真っ赤にして両手で覆う。うん、指の隙間から見てるよね。隠してる意味ないよね?それ?


「アインー、この人たち、だれなのー?」

「…ん?ああ、この人たちは昨日知り合った冒険者さんだ」

「冒険者なの…!」


 目をキラキラさせて『新生の風』を見るエリィ。さながら憧れの野球選手にあった少年のようだ。少女だけど。


「アイン?その子は?」

「…ああ、コイツは──」


 マリーンちゃんにエリィのことを聞かれたので答えようとしたら、エリィに遮られた。

 な、なんだ?


 エリィはオレを道の端によらせて、『新生の風』に堂々と向き合った。


「エリィはアインのお嫁さんなのッ!!!」

「………」


 胸を反らし───反らしすぎて顔は上を向いているが──やりきったと爽やかな笑みを浮かべて、汗を拭っている。


 アカン……アカン……


 オレは顔を両手で隠してその場にしゃがみこんでしまう。多分、めっちゃ震えているだろう。


 もうヤダ…恥ずか死しちゃう……


「アインとえっちもしたの!」

「してねぇよ!?」

「あられもない姿でにゃんにゃん鳴いてたの!」

「鳴いて──いや、鳴いたな…」

「そこは否定しなさいよ!」


 マリーンちゃんに頭を叩かれた。痛いです…。

でも尻尾さわられてにゃーにゃー鳴いたのは事実だし…


「はわわ…アインさん…未成年に手を出すなんて…」

「セレナちゃん?出してないよ?」


 セレナちゃんが驚いて口に手を当てている。


 何を言っているんだい?手、出してないからね?信じてくれないと泣いちゃうよ?


「そんな…アイン姉さんの初めてがオレじゃないなんて…」


 トーマスが悔しそうにしながら膝をついた。


 トーマスくん?セクハラで訴えてボコボコにするよ?


「アイン…おまえ…やっぱち」

「飲め」

「ぎゃああああああ!!!???」


 アゼルの口に水筒を突っ込んでおいた。

 そこでむせているハゲはほっておこう。

 エリィの発言も無かったことにする。いいね?


「…で?マリーンちゃんたちはなんでここに…?」

「ポーションとかを買いに来たのよ…それで、そっちは?なんでメイド服なの…?」

「あー、まぁ…色々あってな。貴族の家で働くことになったんだ。コイツエリィの保護者としてな」

「ふーん…まだ王都に来て1日なのに色々あったのね…」

「あはは…」


 人拐いのタマを潰したり…服買ったり…メイドになったり…

 あれ?オレの1日濃すぎない??


 そう思うオレであった…






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