第119話 再会

「はぁぁ~~。大変なことになってしまった」


 学校から帰宅し2時間ほど遥希達と過ごした後、颯は外出を決意した。瑞貴が同伴を希望したが胸中の気分に従い颯はやんわりと拒否した。


 帰宅時刻の16時から2時間が経過しているため夕日のオレンジが空全体を覆うように染色する。


 颯は住宅地に面する道を進む。


 颯は非常に鈍感だ。そのため遥希達3人から受ける好意を完全に認知していなかった。そのため、学校終了後の遥希の告白は颯の心を少なからず動揺させた。


 現時点でどのような決断をすれば良いか想像も出来ない。そのため不安や焦燥が颯を襲来していた。


 1つも解決案が脳内で浮上せずに無言で歩き続ける。


「今回はどうするの? 出来るだけ回答を先延ばしにするつもり? 」


 1度だけ聞き覚えある声色が颯の耳に届く。


 颯は音源の存在する後方に瞬時に振り返る。不思議と懐かしい感覚を味わう。


 颯の視線の先には颯と同じ背丈と髪色をした男子が佇む。服装は以前と同様にパーカーに水色のジーパンを着用する。


「君は…」


「久しぶりだね。君が苦悩していた頃にアドバイスした以来だね」


 目の前の男子は久しい再開に軽く微笑を浮かべる。


 颯の脳内には男子に関する記憶が残存する。藤田の登場に苦悩した際に行動のきっかけを颯に提供した正体不明の男子である。


「今回も苦悩しているようだね。高校2年生で重要な選択を迫られて大変だね。中々希少な経験をしていると思うよ」


「どうして…。俺の近況を…」


 正体不明の男子が自身の苦悩の現況を認識することに驚きを隠せない。なぜ彼が颯の置かれた状況を理解しているのか不明であった。


「その件については正直には答えられないかな。ただ、いま君に迫る選択は今後を左右するような大事な物だと思うよ。それだけは言えるかな」


 正体不明の男子は以前と同様に颯の行動のきっかけとなるようなアドバイスを送る。


「そうだよね」


 颯は自信なさそうに俯く。


「難しいことは考えない方が良いよ。ただ慎重には考えた方が良いと思うよ。もしかしたらその人達の人生を決めちゃうかもしれないからね」


 正体不明の男子は真剣な表情で事の重要性を颯に伝える。


「…」


 正体不明の男子の言葉で改めて自身の置かれた現況を痛いほど認知する。今回の選択は自身の人生だけでなく遥希達3人の物にも大きな影響を与えかねないのだ。


 その点を考慮すると選択から逃避するために解答の延長を望む感情が颯の胸中を嵐のように支配する。


「まぁ回答はあまり引き延ばさない方が良いと思うよ。あと自分が正しいと思う決断をした方が今後のためになると思うよ」


 用は済んだとばかりに、正体不明の男子は踵を返してヒラヒラと手を振る。そして、前進してその場を立ち去る。


 一方、颯は正体不明の男子の後ろ姿を無言で見つめていた。僅かな感謝と共に大きな緊張感を抱きながら。

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学年で1番のイケメンに彼女を寝取られた。そしたら、イケメンの美少女友達が縁を切った 白金豪 @shirogane4869

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