第118話 3人からの要求
「今回の件は本当にごめん。多大な迷惑を掛けてしまって」
放課後の帰り道。颯は遥希達3人と一緒に並んで歩きながら再度に謝罪の言葉を口にする。颯の胸中には申し訳ない気持ちが渦巻く。
「本当だぞ。次回からは気を付けろよ」
遥希が真っ先に反応し颯を嗜める。
「うちもそう思うよ。今回の件はしっかり反省して貰わないとね」
瑞貴も遥希の反応に同意する。
「もう少し愛海たちのことを考えて行動しないと駄目だし」
「本当にごめんよ~~」
愛海の追撃に大きなダメージを受け、颯の気分は格段に落ち込む。颯の身体には青い負のオーラが漂う。
「あ、ごめんよ~~。言い過ぎたよね~~」
颯の過度な落ち込みように敏感に反応する瑞貴。瑞貴は慰めるように颯の頭を優しく撫でる。
「そんな…甘やかす必要はないよ」
颯は弱々しい口調で瑞貴に伝える。落ち込んだ状態だが慰めを受けるつもりで取った行動では決して無かった。
「そんなこと言っても。落ち込む颯君を目にしたら心配になるよ」
瑞貴は苦笑いを浮かべながら颯の頭を撫で続ける。
「うぅ。何かありがとう瑞貴ちゃん」
颯は落ち込んだ状態で瑞貴に感謝を伝える。少しだけ颯の気持ちが明るい方向に向かう。
「いいよいいよ~。うちは何時でも颯君の味方だからね~~」
瑞貴は颯の感謝を受け止め嬉しそうに顔を綻ばせる。
「おい瑞貴。そうやって自分だけ颯の好感度を上げようとしてないか? 」
「本当だし。魂胆が見え見えだし」
遥希と愛海が不服そうに瑞貴にジト目を向ける。
「もしかしてバレちゃった? 遥希ちゃんも愛海ちゃんも勘が鋭いね」
瑞貴は颯の頭から手を放し大袈裟に肩を竦める。
「全く油断も隙も無い」
「油断する方が悪いんだよ」
瑞貴は遥希の言葉にいち早く反論する。
遥希は特に瑞貴に反論せずに4人間でしばらく無言が続く。
「3人の要望が有ると言ってだけど、その内容を教えてくれないかな? 3人の要望を叶えるつもりだけど」
颯が無言の静寂を破る。
「ああ。それなんだが。そろそろはっきりさせないか」
遥希が2人よりも素早く返答する。
「はっきりさせないとは。どういうことかな? 」
遥希の言葉の意図が分からず聞き返す颯。
「悪い悪い。言葉が抽象的すぎたな」
遥希は手をひらひらと振りながら軽く謝る。
「同棲までして可笑しな話かもしれないが。そろそろ私達の中で誰を選ぶか颯が決めてくれないか? 」
遥希の補足の説明を理解できないほど颯は鈍感ではない。遥希の颯に対する気持ちを瞬時に理解してしまう。
真実を確認するために瑞貴と愛海にも横目で視線を向ける颯。
瑞貴と愛海も遥希と同じ真剣な表情で首を縦に振る。
颯は2人の反応で彼女達の自身に対して抱く気持ちを大いに理解する。
「…」
遥希達3人の好意な気持ちを理解した上で最良の言葉を脳内で発見できない颯。開口せずに無言を貫く。
「すぐに答えを出さなくていい。颯なりの答えを出して欲しい」
遥希が自身以外の2人の気持ちを代弁するように颯に猶予を与える。瑞貴と愛海も特に異論を唱えない。
「…うん。…わかった」
颯は自身の即決力の欠落に不甲斐なさを抱きながらも遥希達からの返事の猶予を受け取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます