最強の生物の理論上最強の姿
「これより、私たちはナイトネス討伐作戦を実行する。覚悟とネオリスクサーチャの準備はいいか!」
「「「オー!」」」
トトキさんの号令に合わせ、全員に配布されたマテリア製新作魔道具『ネオリスクサーチャ』を討伐隊のみんなが手に持って掲げた。
ここは楽土島の屋上部分。
上には空が、下の遠方にはナイトネスが見えた。
「報告するぜ!ナイトネス内部にロンリネスと思われる『魔道具融合人間』と『ミートロンリネス』という種族名の魔物がいるぜ!」
号令の直後、先ほどまで憂眼でナイトネスを観察していたコクドーが観察結果をトトキに報告した。
「報告する!ナイトネス内部は高層建造物がそのまま入っており、その中間の階層にロンリネスと思われる人間と謎の魔物がいる!」
続いて医療用として透視魔術を習得していたハンズさんがナイトネスの観察結果を報告した。
「よし!ならば作戦はこうだ!ナイトネス頭部破壊プロセス実行後、内部に侵入してロンリネスを無力化もしくは排除する!」
トトキさんが作戦の詳細をとっさに作り上げ、指示する。
なお、ナイトネスの頭部を破壊することは、楽土島に乗り込む前にすでに規定事項として決めていた。
そうこうしているうちに、どんどん楽土島とナイトネスとの距離が近くなってくる。
「では、頭部破壊プロセス、開始せよ!」
「はいっ!」
トトキさんの号令に従い、頭部破壊プロセス最初の工程を行うべく、ジョヤさんが立ち上がった。
彼女は今、マテリアが作った複数の魔力底上げ用魔道具と、鐘音魔術の威力を底上げするハンドベル型魔道具を装備している。
「魔性、神聖、魅惑、魅力、妖艶潔白の鐘、
『ガゴオオオオオオオン……!』
ジョヤが詠唱を唱えつつ、鐘音魔術の大技「聖魔鐘」を発動する。
聖魔鐘は、魔物を遠ざける聖鐘と魔物を近づける魔鐘を同時に放つことにより、魔物を一定時間動けない状態にできる技らしい。
実際、聖魔鐘の音を聞いたナイトネスは、南への移動をやめていた。
「次は俺の出番だぜっ!!クソデカブーメランバリアッー!」
続いてドジョーさんがナイトネスの動きを封じ込めると同時に頭部のバリアをはがすべく、軌道内をバリアにできるクソデカブーメランを投げる。
「ん?!なんかナイトネスの中から出てきたぞ!」
クソデカブーメランは動けないナイトネスの周りを反時計回りで大きく回り、ドジョーの手元に戻ってきた。
結果、その軌道を元にしてナイトネスと楽土島を含んだ半径500メトールのバリアが形成された。
「ア、アアッ!オレヲ、オレヲキメツケルナッーーー!!」
直後、聖魔鐘の効果が切れたナイトネスがバリアに閉じ込められていることに気付き、ロンリネスさんに似た叫び声を上げる。
「聖魔鐘の効果がこんなにも早く切れるとは、やはり、魔物としての格が違う……イドル!マテリア!さっさと決めてやれ!」
「はい!」
「オッケー!」
トトキさんの指示に従い、僕とマテリアは上空600メトールを飛んでいる楽土島から飛び降りることになった。
(やっぱり、ロンリネスさんに顔が似ている……)
飛び降りる直前、ロンリネスさんに酷似したナイトネスの顔を見て、僕の身体がこわばる。
賢人たちや王都の魔物学者の見解いわく、ナイトネスはロンリネスさんが変化したり操作している魔物という説が有力らしい。
僕の脳裏に、いままでロンリネスさんから受けてきた心身への虐待の記憶が大量によぎり、身体が震える。
「……大丈夫。私がいるよ」
その時、マテリアが僕を落ち着かせるために僕の手を握った。
そうだ。
僕はもう、ひとりじゃないんだ。
僕の背中に、仲間たちの命と日常がかかっている。
「……行こう!」
僕は翼を生やし、フルアーマー状態のマテリアと共に楽土島から飛び降りた。
下降する中、僕は『理論上最強の僕』になるべく、詠唱を始めた。
「改造身体!壮大!四翼!」
続いて、マテリアも兜越しに詠唱を始める
「装甲、鉄腕、実在巨人!」
そして、二人で魔術を発動させるべく、共に詠唱を行う。
「「実在巨人態、ヘカトンイドル!」」
瞬間、僕たちの身体は空中で硬いカメの甲羅のようなものに包まれ、そこを中心に稲光と共に巨大な僕が形成され始める。
実在巨人態ヘカトンイドル。
それは、身長30メトールで四枚の翼を生やし、二本の生身の腕と二本の鋼鉄の腕を生やし水着のような鎧を着た今の僕の『理論上最強の形態』である。
そして、僕とマテリアが力と魔力を合わせることで実現する形態であり、その姿は僕とマテリアが混ざったような外見の女性である。
なお、デザインに関してもマテリアが事前に自分の身体をモデルにミニチュア銅像として作ってくれた案をベースにしている。
「ンガアアアアア!!イドルウウウウ!!」
半分かそれ以上にマテリアの面影がある姿になったのにもかかわらず、ナイトネスは空中で滞空している僕……いや、僕たちのことをイドルと認識した。
「ロンリネス父さん……」
「お義父さん……」
「「覚悟してね」」
僕たちはそれぞれの瞳の色が反映された青と赤のオッドアイでナイトネスを見つめつつ、彼に宣戦布告をした。
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