イドルと始まりの朝
「僕、もう一度小説を書こうと思う」
家でマテリアと共に朝食を食べている最中、僕はそう言った。
「……いいね。私、キミが書いた小説大好きだったから、楽しみにしているよ、グーゾウ先生。」
マテリアがパンを少しほおばりつつ、僕の背中を押してくれる。
ちなみにグーゾウは僕が小説を書くときに使うペンネームである。
18歳の誕生日を迎える1週間前にロンリネスさんの口から新人賞落選を告げられてから、僕は小説が書けなくなっていた。
でも、いろんな経験をして視野を広げた今なら、もう一度書けそうな気がしたのだ。
ロッシュをみんなで撃退してから、一夜明けて新しい朝が来た。
僕たちはいつもと変わらず、共に起きて共に朝食を食べている。
他の王都の人々も、いつもと変わらない日々を過ごしているだろう。
「今朝の新聞はロッシュ討伐の件できっと持ち切りだろうね。……朝食食べ終わったらさ、買ってみない?」
僕はパンがまだ口に残っていたので、マテリアの提案に対して相づちのみで同意を示した。
朝食を全て身体の中に入れた後、僕たちは外に出て新聞を売る店にまで足を運んだ。
「すみません、新聞ください」
「おおっと!あなた達は昨晩の英雄さんじゃないですか!これは私たちの日常を守ってくれたお礼です!ありがとうございます!」
店主さんがそう言って僕に新聞を渡す。
「あ、いえいえこちらこそありがとうございます!」
僕はお礼の言葉を言った後、新聞を読むべくマテリアと共に家に帰った。
新聞の一面にはグリフォンになってロングネックドラゴンに突っ込む僕を描いた絵が印刷されていた。
「おお……イドルが1面になっている」
「なんか、自分が表紙なの恥ずかしいや……」
「わかるよその気持ち。私もドラゴン退治でキュクロス使って協力したときに表紙になってちょっと恥ずかしかったもん」
「あ、二面にはマテリアのキュクロスがいる!」
「3面にはトトキとドジョーもいるね」
そうやって僕はマテリアと共にページをめくって新聞を見たのであった。
「ねえ、結婚式をやるとしたら、希望の日とかってあるかな?」
新聞を読み終えてしばらくした後、マテリアが結婚式について提案してきた。
僕たちは入籍はすでに終えていたが、結婚はまだやっていなかったのだ。
「そうだね……僕とキミが出会った来月の18日とかはどうかな」
「お!いいね。じゃあ式はナタリス教の形式にして、司会の牧師さんはハンズ先生でいいかな?」
「うん。あと、そのころには釈放されているドジョーさんも式に呼んでいいかな?」
「いいねいいね!トトキさんもアリーチェさんも、あとロバートさんも呼ぼうか!」
「うん!」
こうして、僕たちはその日の朝から結婚式の計画を始めたのであった。
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