ドジョーさんとの再会
「これより、我々は3つの班に別れてロッシュを返り討ちにする!」
月食の日の13時、僕たちロッシュ迎撃臨時部隊は部隊長であるトトキさんの指示に従ってエルフ特別区にて全員集合していた。
「今回、私たちが対峙するロッシュはかなりの強敵だ。そのため、騎士団の力だけではなく、皆の力を1つにして迎撃することにした。皆、頑張ろう!」
現在、騎士団は十日ほど前に行方不明になったソーセキンとロンリネスの捜索に人員を数十名ほど投入しており、少し弱体化している。
騎士団単独での対処は困難と考えたトトキさんは、騎士団以外のイグレオにいる実力者たちや戦闘力のある模範囚を集めて臨時部隊を作ったのだ。
臨時部隊はいくつかの班に分けられていた。
ロッシュが直接来る可能性が一番高いエルフ特別区を守る1班。
禁書保管庫を守る2班。
そして、エルフ特別区に住んでいたエルフたちが避難する騎士団本部を守り、二次犯罪に対処する3班。
これらすべての班のメンバーが今、住人たちが避難の準備をしているエルフ特別区に集合しているのだ。
「では、今から全員に自動バリア展開魔道具『リクスサーチャ』と事前に依頼していた人に新しい武器や防具を支給する。なお、双方共にマテリアが制作したものだ」
そう言ってトトキさんがリクスサーチャを僕や作った本人であるマテリアに配り始める。
リスクサーチャは腕輪の形状をしており、使用者がダメージを負うリスクを察知すると自動的に防御用バリアが展開されるマテリアが開発した魔道具である。
旧来のバリア自動展開系魔道具がだいたい1回きりの使い捨てだったのに対し、リスクサーチャは5回バリアを張ることができる。
しかも、5回張った後でも約25分経つとまた5回バリアが張れるようになり、使いまわしが効くのだ。
数年前に騎士団でこの魔道具が標準装備になった後、団員の年間負傷率と死亡率が半分以下になったらしい。
トトキさんはリスクサーチャを全て配り終えた後、臨時部隊の一部メンバーがあらかじめリクエストしたマテリアのオーダーメイド武器を貰った。
なお、リクエストを集めたのは昨日の臨時部隊初集合時である。
マテリアは圧倒的な集中力と情熱によってわずか一日で十数件ほどあったすべてのリクエストを消化したのだ。
なお、出来の方も申し分ないらしく、受け取った方々はみんな満足そうな感想を述べていた。
そして、武器を受け取った方々の中には……
「なんだこのブーメランは!まさにド級のブーメランじゃないか!マテリアさんありがとう!!」
元暗殺者で現模範囚のドジョーさんがいた。
「イドル先生、久しぶりだな!今は模範囚の男、ドジョーだ!」
「ドジョーさん、お久しぶりです。あと、先生なんてかしこまった言い方しなくてもいいですよ」
ドジョーさんはクーデターにて逮捕された後、半年の懲役刑が科されたらしい。
しかし、ド級の心の強さで刑務作業に熱心に従事した結果、すぐに模範囚に昇格。
強い反省意欲も評価されて刑期も減刑され、他のクーデター犯に先駆けて来月には出所できるらしい。
「いや、オマエは俺に大事なことを教えてくれた先生だ!心の強さが一面的ではないことを説いてくれたこと、今でも感謝しているぜ!」
どうやら、ドジョーさんは僕のことを想定以上に感謝していたらしい。
「俺とイドル先生は班が違うけど、一緒に頑張ろうな!」
ドジョーさんの言う通り、僕とドジョーさんは配属された班が違う。
僕が1班と2班なのに対して、ドジョーさんは3班である。
なお、マテリアとロバートさんは1班、アリーチェさんは2班、トトキさんは3班に分けられている。
「では、皆装備を受け取ったみたいなので2班は禁書保管庫に移動し、3班は住民の移動に注力せよ!」
トトキさんの指示が響き渡る。
そう、ついに班別に行動する時が来たのだ。
僕はこれから禁書保管庫に行かなければならない。
「じゃあ、分身の方の僕をよろしくね」
そう言って僕は身体から金色の毛並みを持つネコを自分の分身として生成し、マテリアに預けた。
僕が2つの班に所属している理由、それは分身の僕が1班で、本体の僕が2班で行動するからである。
「わかった。本体の方のキミも頑張ってね」
マテリアはあらかじめ着てきた自作鎧を着た状態で分身の僕をなでつつ、僕を応援してくれた。
「じゃ、行ってくるね」
僕はエルフ特別区を後にし、王都の外にある国庫保管庫へと向かった。
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