ロンリネス、イドルと再会して心が壊れて……
「……あ、ああ、ああ……来るな……来るなあああああ!!」
ロンリネスの心は、爆発してしまった。
一目見てわかってしまったのだ。
かつて、禁忌を犯してまで作った挙句に期待外れだと断定して捨てた元養子が、自分よりも立派な人になってしまったことに。
真摯な意思を感じる視線、歪みなき姿勢、そして、左手の薬指に付けられた指輪。
そのすべてが、彼のコンプレックスを刺激し続けたのだ。
「ろ、ロンリネスさん?!大丈夫?!」
イドルが鉄格子の向こう側にいる乱心を起こした元養父を心配する。
(なんでだ!なんでオマエは自分を殺そうとした人間を心配できるんだ!いっそのこと思いっきり罵倒してくれ!その方がまだいい!)
ロンリネスはイドルが自分を心配してきたことで、ますます格の違いを感じてしまい、乱心を深めてしまう。
「ぎゃあああああああああ!!ぐああああああああ!!うああああああ!!」
「ロンリネス、落ち着け。落ち着け!すまない、面会はここまでだ!」
ロンリネスと手錠をつないだままのソーセキンはなんとかしてロンリネスを落ち着かせようとしつつ、イドルに面会終了を伝えた。
「ロンリネスさん……」
イドルは心配と寂しさの表情を残したまま、変わり果ててしまった養父が騎士団長によって面会室から連れ出される様子を見届けことしかなかった。
「僕をこの世界に生み出してくれたお礼、したかったのに……」
そう呟きながら、イドルは誰もいなくなった面会室を去った。
「ロンリネスよ、だいぶ大丈夫になってきたか?」
「あっ……ああっ……!あっ、あうっ……」
元いた尋問室に戻されて数十分経ったロンリネスは心の平静さを取り戻しつつあった。
ロンリネスの声は叫びすぎてすでに枯れかけており、身体の疲労も限界に達していた。
(情けないな~。何も成しえなかったデカいガキンチョ赤ちゃんめ)
しかし、ロンリネスの身体の中から聞こえてくる罵倒が、彼を再び乱心へと導き始めた。
「アガッ……!アア、アッ、アアッ!」
「おい、ロンリネス!どうした、大丈夫か?!どこか痛いのか?!」
(オマエはいつまで経っても自分の弱さを受け入れられない夜泣きベイビーなんだねぇ。そんなに叫ぶならおしゃぶりでもしたらどうでちゅか?)
身体の中の声は的確にロンリネスの精神を追い詰めていく。
「俺は赤ちゃんじゃない!!俺は赤ちゃんじゃないいい!!俺は赤ちゃんじゃないんだっ!!ないんだっ!!」
(そうだな、言葉を発して泣き叫んで暴れているから、幼稚キッズってとこかな)
「ぎゅぐああああああっ!アッ!アア!ぎゅがあああああああああ!!!!」
ロンリネスの絶叫が、心が砕ける音が、最高潮に達したとき。
ロンリネスの身体の中に埋めまれていた魔道具『コドックの腎臓』が全力で稼働し始め、その余波で四本の触手が背中から生えてきた。
「まさか、まだ入れていたのか!それを!」
ソーセキンが困惑する中、ロンリネスの身体の主導権は体内の魔道具に移っていく。
(ああっ、身体が動かせない……視覚も聴覚もあるのに言葉を発することもできないっ……)
身体の主導権を奪われたロンリネスがそのことに気付き、困惑と同時に乱心が収まっていく。
「おい、ロンリネスよ、大丈夫か……?」
タコのような触手が生えてからうずくまって何も言わなくなったロンリネスに声をかけるソーセキン。
ロンリネスの身体は立ち上がり、触手をしまってソーセキンの方を向いた。
「オレの名は……コドック。幼稚キッズおじさんの、腎臓だった男だ」
ロンリネスの身体は安楽会第四部隊隊長の名前を名乗り、今までとは少し違う喋り方で言葉を発し始めた。
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