破壊神殿探索編

最強たち、ナタリス教皇国へ

「よし、試用実験も大成功!これでホムンクルスを探せる!」


 マテリアが自作のコンパス型魔道具の試用実験が成功したことに大喜びする。


「マテリア、そのコンパスってどんな機能があるの?」


「イドル、いい質問だね!これはね、『ゲノムコンパス』といって対象人物の遺伝情報を読み取ると、生きている本人の方角を指すようになるコンパスなんだ!すごいでしょ!」


 マテリアが自信満々元気いっぱいで説明してくれる。


「おお、すごい!やっぱりマテリアは天才だよ!」


「これで、破壊神セイタンの遺伝情報を読み取れば、ほぼ同じ遺伝情報を持つホムンクルスも探せるはず!」


 数日前、あらゆる国家から各地に散らばるすべての賢人に『ホムンクルス捜索』の極秘命令が出た。


 どうやら、グライフ国内のどこかで使用済みの『人間製造釜』が見つかったのが命令が出た理由らしい。


 そして、マテリアもその命令に従い、数日かけて新たな魔道具を作り上げたのであった。




「さてと、あとは『ナタリス教皇国』の『破壊神殿』で破壊神セイタンの遺伝情報を入手するのみだね」


 そう言いつつ、マテリアはナタリス教皇国とグライフ王国が一枚に収まった地図を広げて航路を考え始めた。


 ナタリス教皇国はこの世界においてメジャーな宗教である『ナタリス教』の総本山であり、グライフ王国の南側にある小国である。


 そして、ナタリス教は破壊神セイタンを策略によって自殺に追い込んで人類を救った救世主ナタリスを主な信仰対象とした歴史ある宗教でもある。


「でも、破壊神殿への入場許可って出るかな……」


 破壊神殿は教皇国内にあるナタリス本人が建てた破壊神セイタンの墓であり、最奥部にはセイタンの遺体があるとされている場所だ。


 入口に『魔力保有量が100万未満の生命体が入れないバリア』がある上に、入ることは原則禁止となっている。


 内部には護衛用の魔物がいるというウワサもある。


「それに関しては大丈夫!ナタリス教皇国から『ホムンクルスの捜索は人類の存亡に関わる』という理由ですでに許可を得ているよ!」


 そう言いつつ、マテリアは許可証を見せてくる。

 

「じゃあ、こういう重要な案件はさっさと済ませたいし今から教皇国に行こうかな」


「じゃあ、僕もついてきていいかな」


 この間のコクドーとの戦闘以降、僕は憂眼に段々慣れてきたことで自分の魔力保有量を確認できるようになった。


 そして、自分の魔力保有量が彼の言うとおり100万を超えていることを知った。


 つまり、自分も破壊神殿の中に入れるのだ。


 もちろん、このことは自分の種族が未知の何かであることも含めてマテリアに話している。


「いいよ!正直、ひとりで破壊神殿入るのちょっと怖かったけど、キミがいればすっごく心強いから!」


「ありがとうマテリア。こんな僕を信頼してくれて」


「キミは私がこの世界で一番信頼できる存在だよ」


 そんなやり取りをしつつ、僕たちは破壊神殿探索のための準備をしてくのであった。


 


「な、何あの火球!?」


 ナタリス教皇国に向かって二人で飛行する途中、僕たちよりも上空に東側から南側に向かう変な火球を見た。


 別に、火球自体は珍しくない。


 炎をまとった魔物が空を移動する時とかはこんな感じになるからである。


 しかし、問題はその火球が軌道上に花火を残しながら飛んでいたことである。


「あれは、私と同じくらい人間離れした人間の方だね」


「それって、もしかして……?!」


 賢人はマテリアの他にも四人おり、それぞれ得意な魔術が異なる。


 花火をはじめとした多種多様な炎系の魔術を極めたホムスビ。


 飲料生成をはじめとしたあらゆる液体関係の魔術を極めたディフモ。


 多くの新品種を魔術で作りあげるほど植物関連の魔術を極めたスギカフカ。


 そして、数日のうちに城を築きあげることができるほど土や石に関する魔術を極めた賢人最年長のオリジーナ。


 マテリアいわく、全員がかなりクセありの人物らしい。


「うん。今の火球は花火好きで東の大陸在住のホムスビだね。あの人も多分ホムンクルス捜索の手がかりのために教皇国に向かっているんだろうね」


 気がつけば、ホムスビさんと思われる火球はいつの間にか僕たちよりも早いスピードで飛び去っており、軌道上の花火も無くなりつつあった。


「もしかしたら、他の賢人も教皇国に集まっていたりして。……イドルはさ、他の賢人とか、怖くない?」


「大丈夫。激怒して僕を刺しては回復魔術で傷口を直すのを繰り返している時のロンリネスさんに比べたら全然怖くないよ」


「イドル……そんなことされていたんだ。大丈夫、私は絶対にキミを刺したりしないしキミを刺そうとする人からも守ってあげるからね」


「うん、ありがとう。僕もマテリアのこと、ちゃをと守るからね」


 そんな会話をしているうちに、僕たちはナタリス教皇国へとたどり着いた。 

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