最強の生物VSド級のブーメラン

「イドルゥ!今度こそ俺のブーメランで息の根を止めてやる!」

 

 ユミールタイタンが駆除されて騎士団の方々とキュクロス発動前から外で待機していた再建軍の方々がぶつかる中、僕は知らない人に殺害予告をされた。


 


 突撃命令が出た後、僕は瞬時に翼を生やして地上から5メトールほど離れてから突撃を開始した。


「オイッ!なんか羽生えているヤツいるぞ!すげー!」


「でも、俺たちにだって同志ダチという名の翼がたくさん生えているんだ!負けないぜ!」


 やけにテンションが高くて前向きな再建軍の方々が魔術を使って15センチメトールどの炎球を次々と放つ。


 しかし、マテリアとの度重なる空中浮遊デートで飛行に慣れていたおかげか、比較的簡単に全弾よけることができた。


「すっげー!翼を使いこなしてやがる!」


「こりゃあ強敵つわものだぜえ!」


 賞賛の言葉が僕の耳に入る前に、僕は左腕から大量に粘着質のツタを生やし、再建軍の方々に向けて放つことで彼らを拘束した。


「うおっ!このツタ、まるで俺と同志ダチみたいにくっついてなかなか離れないぜ!!」


『クルポッポー!』

「逮捕する!」 


 突如、再建軍の前にピンクのハトが飛んでやってきて、直後にトトキさんがその位置にワープした。


 そして、相手を一時的に封印できる携帯型の逮捕連行用魔道具『簡易封印箱』を起動し、僕がツタで拘束した人たちを簡易的に封印した。


「イドル、サポートありがとう」


 トトキさんが感謝の言葉を述べて次に逮捕する人を探そうとしたその時、僕を囲うような軌道でブーメランが飛んできた。


 そして、冒頭のセリフを耳に入れた直後、僕はトトキさんと共に円柱型の小規模なバリアの中に閉じ込めれたのであった。


 


「俺はかつてオマエを殺し損ねた暗殺者、ブーメランのジョーだ!いや、今はド級のジョー、略してドジョーだ!」 


 知らない人改めドジョーが自己紹介を行う。


「なるほど、ブーメランの軌道を境界線にしてバリアを張ったのか。しかも自分ごと」


「俺の技の詳細を一発で見抜くなんて!!……洞察力が強ぇ騎士なのか!?」


 トトキさんがドジョーの技の詳細を瞬時に見抜く。

 

 おそらく、これまでの戦闘経験を活かしたのだろう。

 

「残念ながら、戦いにも強いぞ!」

 ズバンッ!


 トトキさんが息つく間もなく距離をつめてドジョーに斬りかかる。


「グアアアアッ!」


 ドジョーが思いっきり飛ばされ倒れる。


「でも!俺も!根性が強ぇんだよ!」


「イドル、来るぞ!」


 根性で立ち上がったドジョーが魔術で手もとに2メトールくらいあるデカいブーメランを作り出す。


「こんなデカいブーメラン、初めて見た……」


「どーだ!すごいだろ!留置所の中で精神統一を繰り返した結果行きついた俺の強さの終着点、クソデカブーメランだ!ほらよっ!」


 クソデカブーメランが一定の高さを保って僕の元へと向かっていく。


「ならば、こう!」


 僕は両腕を樹の幹のような形状にして固くし、腕を交差してクソデカブーメランを受けて勢いをなんとか食い止めようとする。


「デカいブーメランは任せたぞ!私は大量のハトで本人を攻める!」


 ブーメランが止まらない中、トトキさんがハト攻め宣言を行う。


 トトキさんは僕の実力を買ってブーメランの処理を任せたのだろう。


 だから、ちゃんとその期待に応えたい。


「えいっ!」


 僕は腕を1対増やし、腰に携帯していたブレシンガを引き抜く。


『抜刀と戦闘を確認しました。さあ、行きましょう』


 ブレシンガの音声ガイドを聞きつつ、僕はブレシンガでクソデカブーメランを何度も刺した。


 クソデカブーメランは一瞬で生成されたことからして、魔術によって簡易的に構成された物体だと僕は考えた。


 ならば、数回ダメージを与えたら壊れるのではないかと予想したのだ。


 バリィーン!


 予想通り、3回目の突き刺しでクソデカブーメランが壊れた。


 一方、トトキさんも10匹ほどのファンシーピジョンで相手を包囲していた。


 そして、度々自分とハトの位置を変えながらブーメランを投げる敵を翻弄しつつヒット&アウェイで攻撃していた。


「もういい加減、根性で立ち上がり続けるのはやめてくれ。私は副団長、キミは暗殺未遂以上の罪は犯していない半端な暗殺者だ。実力差は明確だ」

 

 トトキさんがドジョーに諦めるように勧める。


「絶対に諦めねぇ!もう、暗殺者なのに人を殺すことができない心が弱ぇ自分とはおさらばしたんだ!四肢がおさらばしてもド級の根性で立ち向かってやる!」


 ドジョーは多数の切り傷から血を流し、意識がもうろうとする中で力強く不屈の意思を述べた。


 その言動を見て、僕の口から言葉が飛び出した。


「……ドジョーさん、諦めることも心が強い証拠だと僕は思います」


 僕は知っていた。


 ロンリネスさんが騎士になる夢を諦めきれなかったせいで常にイライラして悲しそうにしていたことを。

 

 だから、諦めないことが一概にいいとは思えなかったのだ。


「そんなことあるかああああ!」


 ドジョーがブーメランをナイフのように振り回しながら僕に襲い掛かる。


 ズシュッ!


 手持ち無沙汰な左腕から粘着質のツタを放ってドジョーの動きを止める。


「まぁだ!まだぁあああああ!」

 バシィ!


 ドジョーは先ほどの再建軍の方々と違い、自らのパワーで粘着質のツタを引きちぎって引き続き僕に襲い掛かろうとしてくる。


 だから、僕も純粋な力で対抗することにした。 

 

 彼の手に握られたブーメランが僕に到達するよりも早く、幹のようになっていた右腕でドジョーの腹を殴った。


「グッ、ハッ……やっぱり俺は、心の弱ぇ人間なのかなぁ……?」


 意識がなくなる直前のドジョーは自らを自虐する。


「ドジョーさんは十分心の強い人間だったよ。だから、ちゃんと刑務所で罪を償ってください」


「わかった、ぜ……」


 僕の言葉を聞いたドジョーはそのまま意識を失った。


 そして、トトキさんの簡易封印箱で簡易的に封印された。


 結界もドジョーの失神と共に消えた。

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