ロンリネス、会いたくない人と再会してしまう
「久しぶりだな!ロンリネス!」
バジーク砦の5階にて、マテリアが操る金属の巨人が大型魔物をボコボコにしている光景を見ているロンリネスにとある男が声をかける。
「げっ!お前はあのヘタレ暗殺者……名前は確か『ブーメランのジョー』だったか」
ロンリネスはその男のことを知っていたし嫌いでだった。
なぜなら、かつて彼にイドルの暗殺を依頼した結果、社会的信用と財産の一部を失ってしまったからである。
「ああそうだ……でも今はブーメランのジョーじゃねぇ!何度逮捕されてもド級の根性で立ち上がる暗殺者、ド級のジョー、略してドジョーだ!」
「……オマエ、違法なポーションでも飲んだか?」
根性論を全く信じないロンリネスにとって、ジョー改めドジョーの言動は滑稽極まりなかった。
「いや!イドルの暗殺に失敗して心を入れ替えてからは全く飲んでいないぜ!」
「つまり、イドル暗殺失敗前までは飲んでいたのか……」
シラフで根性論を崇拝していることに対して、ロンリネスはますます失望した。
「0.1パーセントの勝ち筋を、ド根性で絶対に掴んでやるぜ!」
「……もっと客観的に自分を見ろ」
ロンリネスはもっと自分にも言い聞かせるべきであろう批判をドジョーにしつつ、バリアキットの様子を確認するべく一階に降りた。
「よかったよかった……これでグラフィッカはこの要塞に入ってこれない」
バリアキットは正常に動き出し、要塞を覆うように『最大魔力保有量が100万以上の人間を防ぐバリア』を展開していた。
「だが、このバリアだけだとグラフィッカ以外は中に入れるんだよな……もう一個の高性能なやつは後でとっておきたいし……」
「オマエ、まだバリアキット1つ持っているんだろ?それも使えよ!もっと全力出していこうぜ!」
「げっ!憂者!」
いつの間にか自分の後ろにいた憂者がロンリネスにもう一個のバリアキットも使うようにせがむ。
ロンリネスはもう一個の高性能なバリアキットは絶対に使いたくなかった。
なぜなら、クーデターが失敗して逃走生活をする際に潜伏先を守るのに使いたかったからである。
「もしかしてお前、クーデター諦めてんのか?諦めてんのか?!」
「ああそうだよ!!こんな根性論ありきのクーデター、絶対成功するわけないだろ!!」
ロンリネスの小さすぎるの堪忍袋の緒が切れ、憂者に対してブチ切れる。
「……やっぱりロンリネスおじさんはダサいなあ。あの時のまんまだ」
ロンリネスの暴言じみた正論を聞いた憂者は右目の眼帯を外し、両の眼でロンリネスを見下す。
「オマエ……もしやあの忌々しい家庭教師の息子、コクドー・タイバーツか!」
「そう!その通り!」
ロンリネスにとって、自分と違って息子を騎士にすることができた家庭教師とその息子は憎悪の対象であった。
その憎悪の対象に媚びを売って無謀な計画を担がされていたという事実は、ロンリネスの心を深く苦しめた。
「この野郎!!不可能な計画に加担させやがって!!」
「おじさんが蔑むイドル君はさ、俺に勝てなくても誘ったら何度でも模擬戦してくれたし、入団試験だって受かろうと何度でも頑張っていたんだぜ」
「で、でも結果が伴わない努力などゴミだろ……」
「でもおじさんはさ、勝てないってわかったらすぐ逃げ腰になるじゃん」
「戦略的撤退だ……」
「はっきり言って、おじさんはイドル君よりもはるかにダサいんだぜ」
「アアア……ッアアアアアアア!!!!アアアアアアア!!」
自分の一番言われて嫌なことを言われたロンリネスは我を忘れ、絶叫した。
「でも大丈夫!今から全力出してクーデターに協力してくれればおじさんの方がイドルくんよりも格上になれるぜ!さあ、根性見せようぜ!」
コクドーは悪魔のような笑顔を浮かべ、ロンリネスの背中をさすりつつ語り掛ける。
「アアッ……わ、わかりました」
ロンリネスは従うしかなかった。
自分が一番見下している存在であるイドルよりも自分が格下に扱われることが許せなかったのだ。
こうして、ユミールタイタンが絶命した頃にロンリネスはもうひとつのバリアキットを起動した。
バジーク要塞の外側に『人間を通さないバリア』が展開された。
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