27 遠き山に陽は落ちてー2

「失礼します!」


 再び植え込みの向こうから声が響いて、誰かが庭の端に片膝をついた。


 七尾ななお清十郎せいじゅうろうと同じく二十代で、同じような長身の八手やつで一族だった。

 こちらの方がずっと細身だが、髪は角髪みずらにして、檜皮ひわだ色の戎衣じゅういを纏っており、真面目さと人の良さが同居しているような、柔和な顔立ちをしている。


竜之介りゅうのすけ


 清十郎が振り返る。


「どうした」

木梨きなし殿から、伝令が参りました」


 その報告に、二緒子はハッと振り返った。


 木梨鹿之助しかのすけは、五番組の半数の戎士を率いて、九条の姫の後を追っていた。

 その彼からの伝令ということは。


「行き先を突き止めたのか?」

「はい。件の『使』は真っすぐ高窓たかまど平野を南下し、鶴羽つるうに降りたそうでございます」


「鶴羽だと?」


 鬼堂きどう興国おきくにの顔が一気に狷介さを増した。


「つまり、国府に逃げ込んだと? では、国司が、その小娘と組んでおるのか?」

「あの不二原ふじわら祐孝すけたか殿が、ですか?」


 大声を上げた鬼堂興国に、嶽川たけかわ朧月ろうげつが首を傾げた。


「四年前の赴任当初から、政務の一々にお館様のご意向を問うてくるような小心者ですぞ。かと思えば、時候の挨拶に出向いてきたついでに、術者や真那世まなせなる者どもが操る不思議の術を見せてくりゃれ、などと言ってきおる。そのような能天気莫迦に、九条家とつるみ、お館様に害を為すような大それた真似ができるとも思えませぬが」


「確かに、国司殿からは、とにかく我らと波風を立てることなく、任期を恙なく全うしようという気配しか感じられませんが」


 数馬かずまが口を開いた。


「逆に言えば、だからこそ、九条家から何らかの要請があった場合も、それを断ることはできないのではありませんか?」


 神狩かがり宗家を引き継ぎ、常盤台ときわだい神祇頭じんぎのかみの地位をも占めた九条青明せいめいは、もはや六十代も後半の筈だが、未だに摂関家とも深い関りを持ち、央城の朝廷に歴然たる勢力を誇っている。


「そもそも、国司殿の大伯父に当たる、関白不二原通方みちかた様は、神祇頭と昵懇と聞いている。件の姫が本当に九条殿の孫姫であるなら、我らと敵対するまではいかずとも、宿所を提供するぐらいのことはするかもしれません」


 だとすれば、もし、鬼堂家が『九条の姫を引き渡せ』とねじ込んだとしても、『そのような者は来ていない』と知らぬ存ぜぬを通す可能性がある。


「そうして、彼女が三朗を連れて央城おうきへ退去するのを見逃す。鬼堂家と表立って敵対せず、九条家にも恩を売る好機となるでしょうから」


「そうはさせるか」


 鬼堂興国が猛々しい唸り声を上げた。


「数馬、今すぐ国府へ向かえ。お前が直接乗り込んで、九条の小娘とやらを引きずり出し、小童を取り戻すか殺すかして来い!」


 びくり、と二緒子の肩が跳ねた。


「――かしこまりました」


 そんな二緒子をちらりと見やって、数馬が叩頭する。


「手勢として、黒衆から葉武はたけ志摩しま伊東いとうをお借りしても?」

「構わん。最優先事項だ。七尾と一番組も連れて行け」


「私も……、私も、行きます!」


 ともすればどこかへ力が吸い出されていくような感覚に抗いながら、二緒子は懸命に両肘に力を込め、顔を上げた。

 だが。


「ならん」


 数馬が反応するより早く、鬼堂興国が鉈で断ち割るような声を放った。


「お前と一也いちやには、真垣の護りとして、桧山ひやまと共に残留を命じる」

「わ、私が居ない方が、三朗を、こ、殺し易いからですか?」


 冷ややかな声音に、頭からすっと血が下がったような気がした。

 いざという時、邪魔をさせない為に。


「当然だ」

「そうではない」


 絞り出した震え声に、二か所から肯定と否定が返った。

 肯定は鬼堂興国、否定はその息子からのものだった。


「数馬」

「一々無駄に脅すことは止めてくださいと申し上げました、父上」


 顔を顰めた父親を、息子は無表情に窘める。

 それから、真っすぐ二緒子を見据えてきた。


「二緒子、お前は、殺せと言われて、人を殺せるか?」


 直球で投げかけられた問いに、思わず息が止まった。


「え?」

「鶴羽へ赴けば、九条の姫の出方次第で、糸百合と同じようなことになる可能性が高い。つまり、この先はもはや『役』ではない。術者同士の『戦』だ。だが、今のお前に、戦場に立つ覚悟があるか? その神剣で妖種を狩ることはできても、人を殺すことができるか?」


 畳みかけられて、二緒子は声もなく目を見開いていた。


『戦』――その言葉に、斗和田を席巻した血と炎の記憶が蘇る。

 目の前で射られ、斬り裂かれ、呼吸を、心臓の鼓動を止められていった神和かんなぎ一族の人々の姿が蘇る。


 あれを、この手で行う?


(――できない)


 反射的に思った。

 そんなことは、二緒子にとって、想像してみることすら困難な恐怖でしかなかった。


「殺す覚悟の無い者を、戦場には連れていけない。足手まといになるだけだ。大人しく、真垣に残れ」


 凍り付いたに違いない表情の意味を正しく読み取ったのだろう。数馬は淡々とそう言った。

 ただ、そこには、鬼堂興国や朧月のように、上から押さえつけるのではなく、理解と納得を求める響きがあった。


「――い、嫌です」


 だが、二緒子の方に、それを受け止められる余裕はなかった。


「だって、あなたたちは、三朗を助けに行く訳じゃないのだから」


 黒衆も八手一族も、三朗自身を尊重などしてくれない。神力ちからは惜しむかもしれないが、命を惜しんではくれない。

 だから、利用できないと判断したら、簡単に切り捨てる。

 そうに決まっている。

 ならば、自分が行かなければ。

 一也が動けない以上、三朗を本当の意味で『助けに』行けるのは、自分しかいないのだ。


「これだから、小娘は」


 朧月が舌打ちを響かせた。


「どこまで若の御手を煩わせるつもりだ。大体、役立たずの小童一人、わざわざ手間暇かけて取り戻して、何の得がある」

「弟を助けたいというのは、損得などではありません!」

「化け物の情など知らん。我らにとっては、お前たちが役に立つか立たないか、それだけじゃ」


「――それを言うなら」


 ちらりと朧月を見やった数馬が、無機質な声を挟んだ。


「三朗を役立たずと決め付けることもない。無傷で取り戻せば、こちらが『傀儡』の術を用いることも可能だ。それで、元通りとはいかなくても、似たような状況を作ることはできる」

「ほお?」


 青年を見やった老人が、面白そうな表情を浮かべた。


「なるほど。それなれば、むしろ逆に便利になりますかのう」

「確かにな」


 不機嫌そうな顔つきのまま、鬼堂興国も頷いた。


「小童の分際で反骨の目つきだけは一人前だったあれが、もはや逆らうこともなく、わしの命令通りに動く刃となるなら」

「そうなれば、あの一也がまたお館様に公然と逆らうような真似をしても、弟を使って抑え込むことができますのう」


 思い切り顔を顰めた七尾清十郎の横で、桧山辰蔵が、『その方が俺たちも安心だ』と呟くのが聞こえた。


 ***


「待って――待って下さい……」


 足元の地面が、がらがらと音を立てて崩れていくような気がした。

 

「三朗は、物でも人形でもありません。そんな使われ方は、あんまりです」

「どこまでも勝手を言うのう」


 嶽川朧月がせせら笑った。


「殺すのも嫌で傀儡も嫌? 贅沢を言うでないわ、化け物が」


 ――贅沢?


 二緒子の胸奥で、ざわりと何かが蠢いた。

 さんざん打ちのめされ、踏みにじられてきた心の奥底で、どうしようもないほどどろりと澱んだものが、その鎌首を持ち上げるのを感じた。


「な、何もかも、あなた方の所為なのに……」


 どこかで誰かが詰り出す。

 それが自分の声だと気付くのに、少し時間がかかった。


「あなた方さえ斗和田に来なければ、あんなことにはならなかったのに……」


「――二緒子殿、止せ」


 七尾清十郎が、押し殺した制止の声をかけてくる。

 二緒子の理性も、頭の隅で駄目だと叫んでいた。それは、思っていても、言っては駄目だ、と。

 なのに、震える唇が止まらない。

 吐き出される怨嗟が止まらない。


「三朗から、お母様も故郷も自由も、心さえ奪っておいて、今度は『傀儡』にして兄様を抑える為に使おうなんて……」


 頭の中は真っ白で、耳の後ろではどくどくと血管が脈を打っている。

 その音が余りにも強すぎて、鼓膜が痛かった。


「それがどうした。化け物の分際で、生かしてやっているだけでも有り難いと思え」


 鬼堂興国が、鬱陶しそうに顔を顰めた。


「――化け物は、あなたです」


 胸奥で、怒りと憎悪が火の粉を噴いた。


「霊珠があっても人の心なんて持っていない、あなたの方です!」


「二緒子殿!」


 清十郎が弾かれたような声を上げ、桧山辰蔵も軽く目を瞠った。


「小娘が、お館様を愚弄するか!」


 小さく双眸を歪めた数馬の反対側で、嶽川朧月が怒声と共に片腕を翻した。

 その手に閃いた『鞭』が、鋭い風切り音と共に振りかぶられる。


 瞬間、二緒子の全身は硬直した。

 感情がただ爆発しただけでは、後が続かない。特に二緒子の場合は、それ以上の、より大きな威圧の感情に打たれると、反射的に竦んでしまう。


(兄様なら……)


 神剣を抜いてでも、許容できない理不尽には抗ったことだろう。

 だが、二緒子に一也と同じことはできない。何より、ここで神剣を抜いたりしたら、まず間違いなく、その兄が一番酷い目に遭わされる。


(何も、できない)


 恐怖と、それを上回る絶望が、まだまだ小さな心臓を掴む。その冷たさに目を瞑り、ぎゅっと全身を縮こまらせた時だった。


 二緒子の頭上で、金色の光が閃いた。

 それが楕円形の『盾』となって、少女の額を強打するところだった『鞭』を跳ね返した。


「数馬!」

「若!」


 全身の毛を逆立てるようにして、鬼堂興国と嶽川朧月が振り返った。


「戎士どもに甘いのも大概にせよ‼」

「そのようなことでは、秩序も何もあったものではありませんぞ‼」


「本当のことを言われたからといって、怒るものではありますまい」


 一方の数馬は、呆然と顔を上げた二緒子に片方の手を向けたまま、あくまでも無表情だった。


「我らに敵対してきた訳でもない他の術者一族を一方的に制圧し、彼らの神を害し、女子供を問わず殺傷した挙げ句、身内を『質』に取って十歳にもならぬ子らに隷属を強いた――人の心など持たない鬼畜の仕業だと言われれば、その通りではありませんか」

「何だと⁉」

「それでも、父上には叶えたい望みがあったのでしょう。そして、私は、その為に身命を捧げると誓約しました。なれば、その為に踏みつけられた者の怨嗟も、引き受けるべき責任の一つ。小娘の怨み言一つ受け流せないようでは、鬼堂家そのものが鼎の軽重を問われましょう」

「わしの器が軽いとでも言いたいのか!」

「違うと仰るなら、大度をお示し下さい」


 今にも泡を噴きそうになっている父親にさらっと言い放ってから、二緒子に視線を向ける。


「言いたいことを言って、少しは落ち着いたか?」

「……」

「ならば、退出せよ。三朗のこと以外見えなくなっているお前であれば、尚更、鶴羽へ連れて行くことはできない。ここで、一也と共に待っているがいい」


 その面は、まるで巌だった。

 二緒子が放った怒りは、哀しみは、その巌にただ跳ね返されただけだった。少なくとも、二緒子はそう思った。


 だからこそ、空しく反響しただけの響きが、より深く、鋭く、心を斬り上げた。


「待たんか、数馬」


 そこへ、鬼堂興国が大度とは無縁の金属質な声を放った。


「小娘を赦せと言うなら、まずは非礼、暴言をきちんと詫びさせよ」

「父上……」

「黙れ。朧月の言う通り、これは秩序の問題だ! 身の程を弁えさせよ!」


 男の怒りと苛立ちの気配が募り、語尾が爆ぜる。


 ――無駄だ。


 抉られた心の裂け目に、そんな言葉だけがぽつんと落ちて来た。

 何を言っても彼らには通じない。真那世の怒りも、哀しみも、痛みも、黒衆には何の関係もないことだからだ。

 そんなことは、もう、わかっていた筈なのに。今更何を期待したのだろう。


(三朗)


 視界が歪んだ。

 耐えに耐えていたものが臨界を越えて、大粒の涙となって零れ出した。


 周囲から音が消える。景色も消える。鬼堂興国も数馬も朧月も二人の組長も、周囲の全てが見えなくなった。

 その代わりに意識の全てを占めたのは、物心ついた頃から傍に居た、一歳違いの弟の明るい笑顔だった。


『俺が居るよ、姉上』


 つい昨夜、そう言ってくれた声が蘇る。その時の笑顔が――不安と恐怖に耐えて、それでも懸命に前に進もうとしていた眸の輝きが、脳裏に映し出された。


「手をつけ、小娘。叩頭せよ。――どうした。何をしている。詫びぬなら、造反と見なすぞ。意味はわかるだろうな⁉」


 その声を、その笑顔を、鬼堂興国の金属質な喚き声が塗り潰していく。


(わかりたくない)


 どうすると言うのだろう? 

 その掌中に握っている兄の神珠を砕きでもするのだろうか。

 まだやっと四歳の末弟を、今度こそ取り上げると言うのだろうか。


(家族を、もう誰も、喪いたくない)


 だがそれは、贅沢だと罵られなければならないような願いなのか? 

 

 ずぶずぶと、意識が絶望の闇の中に沈んでいく。

 思考が緩やかに停止し、感情が諦念の中に落ち込んでいく。


「――二緒子、一言でいい、父上に詫びよ」


 押し殺した数馬の声が耳に届いて、二緒子は機械的に両手を地面に着いた。肘を折り、上体を屈めて、白砂利の地に額を押し当てた。


「申し訳、ありません……」


 自分で自分の心臓を握りつぶしながら、やっとのことで、それだけを絞り出した。


 ***


 清十郎が、正視に耐えかねたように目を逸らした。

 桧山辰蔵は、軽く鼻を鳴らしただけだった。


「――まあ、良かろう」


 ややあって、鬼堂興国が多少の余裕を回復させた声で吐き捨てた。


「もういい、二緒子。退出せよ。一也のところへ行け」


 頭の上で数馬の声が促すが、二緒子は蹲ったまま動かなかった。

 いや、動けなかった。


「全く、世話の焼ける」

「連れて行け、桧山。抵抗するようなら、少々痛めつけてもかまわんぞ」


 鬼堂興国が鬱陶しそうに吐き捨て、嶽川朧月が蠅でも追い払うような所作で手を振った。


 そこへ。


「――二緒子殿」


 桧山より先に、より大柄な人影が音もなく歩み寄って来て、傍らに片膝をついた。

 特に視ようとしなくてもわかるほど強い神珠しんじゅの気配に、さらに身が竦んだ。


 七尾清十郎。

 一番組の組長にして、八手一族最強と言われる戎士。


 二緒子はまだ一番組と組んだことはないので、まともに顔を合わせたのはこれが初めてだったが、確かにその勇名も頷ける神珠の輝きだった。

 桧山辰蔵の倍以上はあるだろう。実際、彼は三年前の斗和田で、一也とほぼ互角に渡り合った、唯一の八手一族だった筈だ。


 そんな強者がわざわざ出てこなくても、もう逆らったりしないのに――と、停止したままの思考の隅で思った時だった。


「三朗のことは、俺が引き受ける」


 ありとあらゆる予想を裏切って、聴覚に届いたのは、そんな言葉だった。


「絶対に、とまでは言い切れないが、できるだけのことはする。八手一族の祖神そじん八繰命やくりのみことの御名に賭けて誓おう。だから、あなたはここに残るんだ」


「――組長」

「莫迦か、お前は」


 竜之介と呼ばれた戎士が息を呑み、桧山が呆れたように吐き捨てる声が聞こえた。


 驚いたことでは、二緒子も同じだった。

 止まりかけていた思考が揺り動かされて、思わず視線を持ち上げた。


 祖神の名に賭けての誓約は、八手一族にとって最も重いものの筈だった。もし破った場合は、死の制裁を被っても止む無しとするものだ、と聞いた覚えがある。


「莫迦はお前だ」


 だが、清十郎は、平坦な口調で、桧山辰蔵の嘲弄を切り捨てた。


「この事態を招いた責任はお前にもある。八手の者が晒した恥は、同じ八手の者が雪ぐ以外あるまい」

「恥だと? 貴様、先の戸渡様のお話を聞いていなかったのか?」

「聞いていたとも。だが、一也と二緒子殿がここまでぼろぼろなのに、五番組の連中は打ち身切り傷程度、お前に至ってはほぼ無傷ではないか。その有様で、お前が真摯に、仲間を助ける為に『できるだけのことをした』とは、俺には思えない」

「ハァ? 仲間だ? あいつらは――」

「今は同じ里に住み、同じ陣営に立っている、仲間だ」


 さらに嗤おうとした桧山辰蔵を、清十郎は無表情に見据えた。


「まして、三朗は十二だぞ。形式の上では成人でも、まだ子供といっていい年齢だ。俺は、平気で子供を見捨てる大人にはなりたくない。理由が必要だと言うなら、それで十分だろう」


 一息に言い放つと、清十郎は、呆然と顔を上げた二緒子に、真っすぐ目線を合わせてきた。


「助ける為に行く、と約束する。簡単に殺して終わらせるようなことはしない。だから、あなたは少し休むんだ。今の有り様で無理に飛び出しても、三朗を助けるどころか、途中でぶっ倒れるのが関の山だ」


 真摯な口調であり、表情だった。敵意も害意も、嫌悪も憎悪も、侮蔑や反感も感じられなかった。


 そう思った瞬間、強張っていた肩から、力が抜けた。

 初めて、独りでそういったものと戦い続け、疲労の極にあった心は、もう色々と限界だった。思いがけず差し伸べられた手を見てしまったら、助けるという言葉を聞いてしまったら、これ以上疑うことはできなかった。


「お願い、します」


 もはやぎくしゃくとしか動かない手足を無理やりに動かして、もう一度、蹲るようにして額を白砂利に押し付けた。


「三朗を、どうか、助けて……」


 何とかそれだけを絞り出した途端、くらりと視界が回った。

 急速に目の前が真っ暗になり、どさりと自分の身体が横倒しになるのを感じる。誰かが何か言ったようだったが、もう、何も聞こえなかった。

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