東京地下800 第1話

@sinpuson

第1話

皆さんは日本の首都東京の地下800メートルには何があるかご存知だろうか?

この先に書かれている内容は冒険家「鈴木」が見てきた東京地下800メートルの記録である。


ある夏の日、私はアフリカへの冒険へと向かおうとしていた。

自分のバイクに跨りエンジンを掛ける。

荷物がパンパンに詰まったリュックを背負い羽田空港を目指した。

私の仕事柄、一年の大半は海外を飛び回っている。

しかし、今回のアフリカへの旅は仕事には絡んでいない。

日本の乱れる風情に嫌気が差し海外へ行こうと自分自身で計画した旅だ。

今回の旅の目的は日本の良い所を再発見しようという衝動に駆られただけだ。

バイクを走らせ空港に到着。

空港で少し食事をした。

時間だ。

飛行機のチケットを握り締め飛行機へ搭乗する。

期待など無い。

ただ生きることを考えるだけだ。

飛行機から見下ろす東京の風景はどこか寂しく感じる。

機内食を頂き、旅の計画について考えた。

眠くなったので寝た。

起きる頃にはアフリカ上空。

乾ききった大地だがどことなく我ら日本人よりかは潤っている、そんな気がした。

飛行機から降りると空港はお祭りモード。

観光客をもてなすために地元の人々が騒いでいる。

私は少し心が救われた気がした。

背景にある事情など気にもせず、アフリカのとある国にある田舎を目指した。

空港から目的地まではバスで3時間。

バスに乗り込むと人で溢れていた。

お金をせびる人もいるが私は目的地しか頭にないのでそんなことは気にしなかった。

バスの中から見える風景は変わりもしないように感じる。

日本は時代とともに目まぐるしく変わっていると思われているが本当にそうなのだろうか?

バスは田舎町に到着。

バスから降りて現地の人にご挨拶。

私は今日泊まる宿が無いので、現地の民家に泊まろうと考えていた。

「今日泊まっても良い?」と聞くと快く泊まらせてくれた民家があった。

その家の大黒柱的な人は物腰柔らかいおばあさん。

荷物を置いて部屋に通してくれた。

少し休憩するとおばあさんが「シャワー浴びるかい?」

と聞いてきた。

もちろん答えはイエス。

お言葉に甘えてシャワー室に向かった。

シャワー室に入ると驚いた。

豪華なのだ。

日本と何ら変わりのないシャワー室はどこか私を沸々と興奮させた。

シャワーも浴び終わり昼食を頂けることになったので食べる。

現地では高級な食材が何品も置いてあるので聞いてしまった。

「お金持ちですか?」

するとおばあさんは「そんなことはあるかもしれない」

アフリカンジョークだろうか?

とにかく大金持ちで変りはない。

昼食を食べていると様々な事を質問された。

どこ出身か聞かれたので日本だということを伝えると、おばあさんは席を外し、どこかへ行ってしまった。

気分を悪くしてしまったのかと心配しているとある一枚の紙を持ってきた。

するとおばあさんが口を開く。

「これは地図じゃ。ただの地図じゃない。地下への地図じゃ」

僕は疑問に思ったが、おばあさんは一方的に話を進める。

「もし日本に帰ったらこの地図通り東京の地下へ行きなさい。800メートル下までね。

前にも行った人がいるのじゃが帰っては来ていない。危険な挑戦だけどやってみな。あとこのスーツを着なさい。」

その瞬間僕は冒険家という肩書に電撃が走りすぐに帰国の準備をした。

おばあさんにお礼を伝え家を後にする。

すぐに飛行機に乗った。

東京に着いたらすぐに地下へ行く準備をした。

カメラもバッチリ持った。

そして一息つくために地図を開いた。

私はてっきりとても難しいルートで地下へ行くのだと思っていたが地図によると簡単らしい。

その日は寝て翌日に行くことにした。

翌日、いつもよりスッキリ目が覚めた。

身支度をし、バイクに乗る。

まず目指すのは首都高だ。

首都高には政府関係者しか乗れない「政府関係者鉄道」というものがある。

首都高へ入り地図通りの所へ向かう。

本当にあった。

何度も首都高を走っているが初めてこんなところがあったと知った。

普段走っていたら絶対に目につかない所だ。

扉があり暗証番号を入力する必要があるらしい。

暗証番号も地図に書いてある。

暗証番号を入力すると扉が開いた。

階段があり下に下って行く。

驚いた。

政治家、総理、天皇陛下までもがホームにいるのだ。

疑問に思うだろう、私のような格好でも怪しまれないのか。

この鉄道に行けるだけで政府関係者とみなされるため大丈夫なのだ。

電車が来た。

私が乗るのは「皇居行き」だ。

皇居行きが来たので乗った。

電車は到着したようだ。

降りて外に出たら本当に皇居に居た。

そこで僕は流石にこの格好だと怪しいのでおばあさんから貰ったスーツ姿に変り荷物も必要最低限のものにした。

ここから地下への道は続く。

皇居の中には地下へ繋がるエレベーターがあるのだ。

そこまで歩いて向かう。

見つけた。

木々の中に隠れている。

私以外にも政府関係者と思われる人が多数いた。

増税や外交の話を平然としていた。

まるで異世界に来てしまったようだ。

エレベーターに乗り込む。

乗ってから秒数を数えているとなんと8秒で着いてしまった。

そう、ここが東京地下800なのだ。

エレベーターから降りると地下にいる皆からお辞儀をされる。

僕は訳が分からない。

怖くなったのでトイレに籠もった。

トイレなので安心すると思うと大間違い。

地上のトイレとは比べ物にならないくらい近未来的なのだ。

しかし、トイレはトイレだ。

安心した。

何分籠もっていただろう?

トイレから出るとお偉いさん的な人に見つかった。

「あ!代世さん!探しましたよ〜今日新しい代世さんが来ると聞いて待っておりました。」

そう言われると一室に案内された。

入ると目を疑う。

総理、天皇陛下、大臣までもがいるのだ。

なのにも関わらず私は一番偉い人が座るだろう席に通された。

すると先程声をかけてきた人が「それでは会議を開きましょう」

とラフな声をかけた。

私は何がなんだかわからないまま会議が始まった。

私の席にはモニターが2つ。

右側のモニターには「地下時間水準」と書いており、左側のモニターには「世界時間水準」

と書いていた。

見とれていると議長らしき人が口を開く。

「まず検討されている新宿高層ビル計画どうしますか?」

と皆に聞く。

議長は「建設予定は世界時間水準で2年後になります。賛成か反対か投票お願いします。」

そうすると皆は机に付いている赤と青のボタンのうち1つを押す。

私も投票する。

私は賛成ボタンを押した。

賛成ボタンは赤色だ。

すると議長が「そこまでです。代世さんが賛成ボタンを押したため建設決定となります。では代世さん決定ボタンを押して下さい。」

私は目の前にある決定ボタンを押した。

そうすると地下時間水準のモニター画面でビルが完成した。

私は思った。

もしかすると自分自身で世の中を操れるのではないのかと。

私は意見を言った。

「明日に来る沖縄の台風を温帯低気圧に変えましょう。」

すると皆が投票を始める。

結果は賛成。

またしても私は決定ボタンを押した。

少し疲れていた私は会議の終了を命じた。

すると秘書と名乗る人から「本日の給料です。」

と言い、1億2000万円が入っていると言われたカードを渡された。

このカードを政府関係者銀行でかざすと好きな額が引き出せる。

私はふざけて「もっとくれますか?」と秘書に言うと「左様でございます。ではカードの引取上限を撤廃します。」と言い従うのだ。

私は少し地上が恋しくなったので「地上に出ても良いかね?」と秘書に言うと「左様です。それでは列車をご用意致します。」

と言って私をホームへ連れて行った。

すると「要人用」と書かれた列車が来た。

乗り込むと行きたい場所を聞かれたので「沖縄」と答えたら「左様です。」と言い、本当に沖縄へ来た。

所要時間は1秒。

異次元だ。

地上では一人で行動しても安全らしい。

沖縄でショッピングを楽しんだら列車へ戻る。

専用のアプリで車を手配するとホームまで連れて行ってくれるのだ。

東京地下800メートルに戻った。

この日から私の独裁が始まったのだろう。

私は地下に戻ると皆の共用スペースに寄った。

そこには地上のテレビが写っていた。

今私の隣にいる総理がテレビで会見をしている。

録画かと思ったが総理が「代理で頑張っているな」と呟いた。

そう、我々が地上で見ていた政治家は影武者だったのだ。

私は自室へ入った。

物凄く豪華なのだ。

満足した。

よし、明日も頑張るか

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