アラン・フィンリー外伝 ~とある女達の日常~(女×女)

Danzig

第1話 とある女達の日常


ジェニファー:よし、ようやく、これで終わりね。

ジェニファー:あぁ、もうお昼になっちゃったか・・


ジェニファー:(N)私の名は、ジェニファー・コイル。 ロンドン秘密情報部のエージェント。

ジェニファー:(N)秘密情報部とは文字通り、秘密の組織なのだが、いつも特殊な事件ばかりを扱っている訳でもない

ジェニファー:(N)しかし、今日は、未明(みめい)に発生した、奇妙な事件の処理に追われ、気が付けば昼になっていた。


ジェニファー:(N)そんな時は、私はいつも、気分を変える為に、少し遠くても、街で人気のお店にランチを食べに行く事にしている


ジェニファー:(N)そして、その店で、私は少し懐かしい人物に出会った


ジェニファー:あれ? クレシダじゃない


クレシダ:あら、ジェニファー、久しぶりね。


ジェニファー:こんな所で会うなんてね


クレシダ:そうね、何年ぶりかしら、懐かしいわ。 元気にしてた?


ジェニファー:ええ、それなりにね


クレシダ:今、政府の機関にいるって聞いてたけど・・


ジェニファー:うーん、詳しくは言えないんだけどね。 まぁ調べものばかりの、オフィスワークってところよ


クレシダ:あら、意外ね、あなたは現場が好きだと思ってたわ


ジェニファー:そうね、私も現場が好きだけど、こればっかりはね


クレシダ:まぁ、私達は上から言われたら、従うしかないからね


ジェニファー:そうそう、嫌な仕事でも、やらなきゃね


ジェニファー:(N)私は少し前の、ある事件が脳裏をよぎった


クレシダ:どうしたの? 何かあったの?


ジェニファー:いえ・・ちょっと嫌な事を思い出しちゃっただけよ


クレシダ:そう


ジェニファー:その時は、やりたくもない仕事をさせられた上に、上司から、小言(こごと)を言われてね。


クレシダ:ふーん


ジェニファー:「経費の使い過ぎだ」ですって

ジェニファー:そりゃ、予算があるのは分かるし、その時は私も「少し使い過ぎた」とは思ってるのよ

ジェニファー:でも、民間人に依頼しなきゃ、出来ない事もあるのよね

ジェニファー:あんまり気分のいい仕事じゃなかったし、後味が悪くてね、それで少し思い出しちゃったのよ


クレシダ:大変だったのね


ジェニファー:もう、あんな仕事は二度とゴメンだわ


クレシダ:フフ、あなたも苦労しているのね


ジェニファー:クレシダこそ、どうしたの、こんな所で


クレシダ:ここが評判の店って聞いてね、気になってたのよ


ジェニファー:そうなの


クレシダ:本当は、もっと早く来たかったんだけどね、仕事が立て込んじゃって

クレシダ:それで、今日、ようやくここに来れたってところよ


ジェニファー:なかなか、思い通りにはならないものよね・・

ジェニファー:あ、そうだ、クレシダ! そういえば、聞いたわよ、保険省の汚職事件


クレシダ:あぁ・・


ジェニファー:あれ、あなたが解決した事件なんですって?


クレシダ:ええ・・まぁ・・


ジェニファー:製薬会社と保険省の癒着(ゆちゃく)だけじゃなくて、インサイダー取引や、製薬会社のデータの改ざんまで、挙(あ)げたそうじゃない


クレシダ:うん・・


ジェニファー:どうかしたの? 元気ないじゃない。

ジェニファー:ひょっとして、手柄でも横取りされたの?


クレシダ:その逆よ


ジェニファー:え?


クレシダ:あれは、私の手柄って訳じゃないのよ


ジェニファー:どういう事?


クレシダ:(N)私はジェニファーに、RI(アールアイ」)製薬の事件の全貌(ぜんぼう)を話した

クレシダ:(N)とある殺人事件を切欠(きっかけ)に、大規模な捜査に発展していった事

クレシダ:(N)その殺人と思われた事件が、実は、巧妙な筋書きを描いた、自殺だったという事

クレシダ:(N)そして、それを自殺だと見抜いた人物が、警察の人間ではなく、探偵だという事も


ジェニファー:そうだったの・・


クレシダ:だから、この事件を私の手柄と言われてもねぇ・・嬉しくも何ともないのよ


ジェニファー:そう・・ところで、それは本当に自殺だったの?


クレシダ:ええ、自殺という前提で、死体のあった部屋を念入りに調べて見たのよ、

クレシダ:そうしたら、本棚に僅かな凹みがあってね、ナイフの柄の形と一致したの

クレシダ:それで、本棚にナイフを押し付ける形で、自分で背中にナイフを刺したって事が分かったの


ジェニファー:そこまで、その探偵が見抜いたって事?


クレシダ:いえ、その探偵は、死体を見ただけで自殺だって分かったそうよ


ジェニファー:どうして分かったの?


クレシダ:死体に殺意が無かったんですって


ジェニファー:え?・・その人は、本当に探偵なの?


クレシダ:ええ、それから、その探偵について調べて見たけど、探偵という事以外は、何も出て来なかったわ

クレシダ:というか、逆に綺麗すぎるくらいなのよ、まるで、誰かがクリーニングしているかのようにね


ジェニファー:で、その探偵の名前は?


クレシダ:アラン・フィ・・いや、やめておくわ


ジェニファー:アラ・・ン・


クレシダ:どうしたの? 何か心当たりでもあるの?


ジェニファー:いえ、そういう名前の『探偵』は知らないわ


クレシダ:そう、まぁあまり有名ではないみたいだしね

クレシダ:でも、何とも不思議な人物だったのよね


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