第22話

私は何も悪いことをしていないというような態度にロアンとアイリスは自分たちのせいでナーシャはレビアに謝って済ませるつもりなのかと困惑している。


「ロアンやアイリスは私とレビア嬢とのやり取りに関係ありませんわ。私たちがアイリスのお茶会を潰したのよ。逆にアイリスには謝るべきかと。」



「なんですって。ナーシャ嬢は私に謝罪しましたのにロアン達には謝らせるつもりがないなんておかしいですわ。第一、あなたがあんな悪役令嬢かのようなドレスを着てるからカルメル令嬢達の事を心配したまでよ。それがアイリス嬢のお茶会を潰したことになるなんておかしいじゃありませんか」


レビアが発言した瞬間公爵の顔が歪んだ。

きっともうこのやり取りに勝ち目がないことに気づいたんだろう。


「ええ。初めに私を悪役令嬢なドレスを着て。と侮辱したのはレビア嬢です。私達の言い合いが大きくなってアイリスに迷惑をかけたのよ。逆に私たちが謝るべきだわ」


「なっ!私はあなたのせ「レビア。謝罪しなさい。」


「へ?お父さま!?」

「聞いていればレビアが先に侮辱したようじゃないか。それなのに令嬢はレビアに心を込めて謝罪しているのだろう。カルノス公爵、そしてバルセ侯爵子息よ、この度はうちのワガママ娘が申し訳なかった…。「お父さま!!私は悪くないわ!だって私はカルノス家に行くたびに令嬢がメイシーを虐めてきたのもしってるのよ!!」


「それとレビアが令嬢を侮辱することになんの意味がある。」

「私はあの優しかったメイシーがいじめられているのが許せなかっ「レビア!!謝ることも出来ないなら部屋に戻ってなさい!!」


あの優しかったメイシー…レビアはメイシーと知り合いだったの?だからこんなに必死で?どうであれこの場はとりあえず解決に向かいそうで少し安心した。


レビアはまだ何か言いたそうにしていたが公爵の護衛達に無理やり部屋を出された。


「いや、本当に申し訳なかった。これは…受け取るべきではないようだ。私は愛娘が侮辱されたと聞いていたがまさか娘が先に令嬢を侮辱していたなんて思いもしなかった。甘やかしすぎたようだ。後で娘からも謝るようにしっかり言い聞かせよう」


「……」

胡散臭い言い訳に返事する気にもならず私は黙りこんだ。

「ははは。その気持ちは分かる。公爵がいてくれてよかった。それで、私がここに来た理由なんだが…」


「ん?この件で来たのじゃないのか?」


「見ての通り義娘は体調も落ち着き元気になった。それに私も親バカではあるがこのとおり、気品に溢れてるだろう?」


「あ…ああ」


「ドルーラ公爵を紹介してもらって悪いが婚約を破棄しようと思う。」

お義父様!?今こんな話をして大丈夫なの?私は少しシャンドラが心配になった。貴族の婚約破棄は大きなニュースになる。場合に乗っては皇帝陛下が仲裁に入ることもあるらしい。


「な…なんだって!?」


「公爵に紹介してもらっておいて悪いが、体調が悪く部屋に籠りがちなナーシャはこのままでは婚約できる相手はいないだろうと紹介してもらったが、見ての通り、義娘はもう体調も悪くなければ友達思いの大事な娘だ。ドルーラ公爵が若い娘を何人も妾していることは私の耳にも入っている。」


「……だが、ドルーラ公爵はそれを認めないだろう!今更婚約破棄するとなるとドルーラ公爵の顔を潰すことになるのだぞ」


「承知の上だ。」


「…だが…いや。この件は1度いい方法がないか私も持ち帰って検討しよう…」


「いや、大丈夫だ。断るには妾の件で十分だろう」

「だが妾なんてそこらの貴族にもいるだろう!?」


「それが普通の妾であれば。の話だろう?それとも私がそんな悪さをして妾を作る公爵に目を潰れと?まあいい。紹介していただいた公爵にはきちんと伝えるべきだと思ってな。今日はこの辺で帰るとするよ。」



グランデ侯爵が悔しそうにしている中、お義父様は「ロアン達にも変な話を聞かせて閉まったね…。さあ、帰ろう」

と誰にも何も言わせまいと言わんばかりに屋敷を出た。


この流れで婚約破棄を堂々と伝えるなんて誰も思うはずもなく堂々と歩くシャンドラの後ろを3人は呆然としながら歩いた。



「ロアン、アイリス、今日はありがとうね」


「いいえ、何も言えずにごめんね。私達…ナーシャが謝るなんて思いもしなくて…」

「僕たちの方が助けられたよ。ナーシャ…ありがとう。本当なら僕たちが庇うはずだったのに」


「ふふふ。そうよね。私も初めは謝るつもりなんてなかったのよ。」


それから少しお義父様と向かう途中でどうするか話し合って

「それでだったのね。公爵もナーシャも凄くかっこよかったわ!私たちのことも…庇ってくれてありがとう」


「ふふ。こちらこそありがとうね。2人が令嬢にムカついてる顔を見て不謹慎だけど嬉しかったわ。じゃあ、また会いましょう」




後ろを向き馬車に乗り込もうとするとロアンに腕を捕まれた。

「ナーシャ、君が婚約破棄になるって目の前で聞けて嬉しかったよ。僕…待ってるから」


「ロアン……」

子供の頃結婚する!と言い切るくらい大好きだったロアン。

だけど前日にルークとダンスを踊った時間が頭に過ぎり複雑になる。

ロアンは私が返事に困っていることに気づいたのか

「待ってるは重たかったかな。もし、ナーシャに好きな人が居たとしても僕は2年以内にナーシャに釣り合う男になるから。」


そう言ってエスコートしてくれて馬車に乗り込み2人と別れた。


「ナーシャ。さっきの件だけど婚約破棄には少し時間はかかるだろう。だけどなんとしてでも必ず婚約破棄に持っていこう。」


「…ありがとう。だけどグランデ公爵が仲介だったのね。」


「ああ。ナーシャは部屋にいたから知らなかっただろうがよく仕事の付き合いで屋敷に来ていたからね。…体調が悪いと常々誤魔化してレビア令嬢に会わせなかった。それである時ドルーラ公爵を紹介されたんだ。初めはどんなに性格の悪い義娘でも流石にドルーラ公爵は…と思って断ったんだがメイシーからお金さえあれば何でもいいとナーシャが言っていたと聞いて決断したんだ。」


「令嬢も私がメイシーを虐めていたと思っていたものね…」


「ドルーラ公爵が来たあの時、少し違和感を感じたが、唆された僕は自分がいいと言ったのに何故わざと焦らすんだ。キミはどこまで性格が悪いんだ。と思ってしまった…。」



「……」


「今はもうさすがにナーシャは友達思いで、相手の気持ちを考えすぎるところがあることに気がついている。あの頃は正直言い訳に聞こえるが寝不足もあってメイシーの言うことに説得力があるように感じて鵜呑みにして君が歪んで見えていたんだ。何度も言うが「もう謝らないで。今日はお義父様に助けられました。婚約破棄の事も…無理をしてでも伝えてくれてありがとうございました。お義父様には誠意も感じますから。」


「…本当に…申し訳なかった…」


さっきまで公爵に堂々と言いたいことを言っていたお義父様が目を逸らし外を眺めているフリをしているけれど涙ぐんでいるのが分かる。

私もそれに気が付くとなんとなく気まづくてそっと目を逸らした。

そのあとは「せっかく似合うそのドレスだが、念の為着替えてマカロンでも食べてから帰ろう」

と可愛いドレスを買ってもらい、街で1番のマカロン屋さんでマカロンを沢山食べて、帰ってからも食べれるようにとお土産も用意してもらって帰った。



___________


「おかえりなさい!!心配したのよ?遅かったわね…。何も無かった!


「レアロナ、きっとナーシャも疲れてるだろう。私から話そう。ナーシャは部屋へ戻りなさい」


「まあ…ナーシャからも聞きたかったのに!」


「はは。ナーシャは今日は頑張ったんだ。食事の時にでもゆっくり話せばいいよ」


と部屋へ返してくれた。


今日は朝イチに目覚めたから少し眠気もありお義父様の言う通り疲れてたから部屋に返してくれて助かった。






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大好きな母と縁を切りました。 むう子 @muuco03

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