第21話
とりあえず……シャンドラが用意してくれたドレスを明日着ることにしよう……。
今日はなんだか色々あったなあ。
朝からお母さまから行かないでって言われたり
ドレス一緒に買いに行くことになったり…
シャンドラに協力してもらうことになったり……。
ルークと……思い返すとルークが自分を好きだなんて思いもしなくて恥ずかしくて枕にうずくまりそのまま眠った。
【その頃レビア・グランデ公爵令嬢は…】
ふんっロアン様がナーシャ・カルノスに私に呼ばれたことを伝えるなんて思わなかったわ。メイシーに相談したときもロアン様はあの女を絶対巻き込まないだろうねって言ってたのに。それも公爵まで連れてくるなんて。
「お父さま。私、ロアン様にナーシャ嬢の肩を持った事を謝って欲しいだけなのにロアン・バルセ侯爵ったらナーシャ・カルノス親子を連れてくると。だからお父さまにご一緒して頂きたいの!」
「ゴホンレビア。落ち着きなさい。シャンドラ・カルノスがロアンや義娘のために来るだと?」
「ええ!!」
「う~む。子供同士のことに…奴が義娘と一緒になあ…」
「私、あの女にみんなの前で侮辱されたのよ!?それなのにロアン・バルセもあの女の肩を持って恥をかかされたのよ。その上公爵を連れてくるなんて理不尽もいいとこだわ」
「ふんっ娘を侮辱した小賢しい令嬢にはしっかり謝罪して貰わないとな。これで公爵に貸しが出来るかもしれんな。はっはっは」
あの女…絶対全員の前で謝らしてやるんだから。
メイシーには伯爵令嬢時代からお世話になってたのよ。
本当になら私があの頃のメイシーを守りたかった。
だけどあの頃は幼くて知識も少なくてお父様に反対されて…。
そのメイシーがメイドとして雇ってもらうことになって安心してたのに。
あんなに優しい女性をいじめてきたあなたを絶対に許さないんだから!!
___________
私はいつもより早く目が覚めて、グランデ令嬢宅へ向かう為用意を済ませた。
コンコンッ「ナーシャ。少し早いんだが準備が終わり次第出られるかな?……お母さまも君を見ると心配してしまうだろうから」
やっぱりドレスを破ったのはお母さまなの…?
シャンドラはそれに気づいてて新しいものを準備してくれていたの?
分からない…。シャンドラのこと…もう信じてもいいの?
「お義父様、準備は出来ています」
ニコッと扉を開ける。
「おお。思った通り似合うじゃないか。…ハッ」
シャンドラはプレゼントが自分だと思われないようにするつもりだったらしく、口に手を当て目を逸らした。
「やっぱりお義父さまが準備してくださっていたの?」
「……ああ。お母さまと選んだドレスがいいかともおもったんだがね。気に入ればいいなと置いておいたんだ」
お義父さまはきっと私が選んだドレスを誰かが破り捨てたこともきっと全てをしっているのね。
ってことはやっぱりその誰かは…。
「…ドレス…用意してくれてありがとうございます。」
「ああ。とりあえず急いで出よう。寄りたいところもあるからね」
寄りたいところ?ロアンと合流するまで時間があるからその時間を潰す為かな?
私は頷き、お母さまに見つかることも無くをシャンドラと家を出た。
家の中では少し会話もするようになったものの馬車の中ではお互いに少し気まずく静かに馬の足音とキャビンの揺れる音だけが響き気まずさが増す。
この沈黙を破ったのはお義父様だった。
「…ナーシャ。君もきっと色々気づいて悩んでいると思う。けどお母さまの肩を持つわけではないがお母さまもきっと…色々混乱しているんだと思うんだ…。」
「…ええ」
「お母さまにとっては君のお父様が亡くなってからずっと…落ち込んでいたのを覚えているだろう?…君はお父さまと唯一血の繋がった大事な娘だから…大切に想ってるんだよ……。そんな君に酷いことをしてきた僕がいうのはおかしいよな………すまない……」
「……」
お義父はこうやって言ってくれるけど…。
暴力を見過ごしてきたこと。それに最近の様子といいお母さまには違和感を感じている私には心に響かなかった。
「着いたよ」
…宝石店?こんな所になんの用があるの?
「お義父様……?」
「ああ。令嬢に詫びの品をね」
詫びの品ですって!?何言ってるの!?
…結局私は信用されてなかったんだ…。
また…全て私のせいにする気なんだ……。
「ナーシャ。おいで」
「………私…何も……」
信用してしまった自分に怒りを感じると裏腹にロアン達の立場も考えると申し訳なくて…喉がつっかえるように声が小さくなった。
それに気がついたお義父は
「ああ…すまない。ナーシャ。君が悪くないことは僕も理解しているよ。令嬢から君を侮辱したんだ。だが、君も同じように令嬢を侮辱したには変わりないだろう?」
「………けど」
「ナーシャ。ロアンは君の為に仲裁に入ったと言ったのかい?」
「いいえ…。アイリスのお茶会を潰す訳にはいかないって…」
「なら、ロアンはもう一度そのままそれを伝えるだろう。レビア令嬢は君に怒りをそのままぶつけるだろう?君はもう一度同じように言い合うために令嬢のところへ行くのかい?これでは話に終わりが見えないだろう。侮辱し返したことはきっちり謝ろう。向こうも謝ら無ければいけない状況を作ってやろう。その後のことは僕に任せてくれたらいい。」
そういうことか…。確かにどちらかが大人にならなければ話しに終わりが見えない…。
令嬢のことだからきっと、話し合いの場でも侮辱を続ける。
それを見据えて…こっちが大人になるべきだというお義父様の意見を理解し、ロアンを無事に連れて帰ることしか考えていなかった無知さに恥ずかしくなり不安だった気持ちもスっと消え、私は深く頷いた。
「すまない。不安にさせてしまったね。先に説明するべきだった。お詫びの品はナーシャが選びなさい。」
わたしはこの間令嬢が来ていたドレスの雰囲気に合わせピンクサファイアの入ったブレスレットを選んだ。
きっとこのブレスレットにも文句を付けるんだろうななんて思いながらお義父さまにエスコートされ馬車に戻る。
ロアンとアイリスの元へ着くと既に門の前で侯爵と共に私達を待っていた。
「カルノス公爵、息子達とご一緒していただけることになって心強いです。私共が迎えに行くべきなのにこんな所まで来ていた只く形になって申し訳ありません。私も息子達について行くべきなのですがどうしても外せない仕事がありまして」
「はは。そんな硬いことはいい。こちらこそ義娘のことに巻き込んでしまって申し訳ない。」
「いやいや、カルノス公爵や令嬢が謝ることではありません。すみませんが息子達をよろしくお願いします。」
「ああ。じゃあそろそろ向かおうか。」
私達は別の馬車でレビア・グランデ令嬢の元へ向かった。
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私達は無事にグランデ家の屋敷に到着し、応接間に案内された。
そこには既に令嬢と公爵が座って待ち構えていた。
「急な訪問申し訳ない。」
「いやいや。娘から少しは聞いているよ。当事者が居ないと話し合いにならないと私も思っていたから気にしないでくれたまえ。」
「まぁお父様、私は令嬢の顔を見たくもないくらい怒っていましたのよ。けれどロアン様が令嬢の肩を持った理由を聞きたかっただけですの。それが公爵様まで一緒に来てくださるなんて。」
きっと令嬢はお義父様が自分の味方をして謝りに来たと思っているんだろう。
アイリスは負に落ちないようで
「レビア様が先にナーシャを…」
と言いかけたところでお義父様が遮断した。
「この度は令嬢を侮辱したとの事で申し訳ない。ナーシャ。君もしっかり謝りなさい」
「…レビア嬢、この間は言い過ぎましたわ。ごめんなさい。
これ…お詫びの品です。この間のドレスに合わせて選びました。」
「はっはっは。思ったより早く終わりそうだな。物分りかま早くて助かるよ。これも公爵のおかげかな。これで解決かな?レビア」
「ピンクサファイアのブレスレット?お詫びにしては小さなサイズですけど…」
「「なっ…」」
ロアンとアイリスは思いもよらない展開に困惑し、挙句、レビアのあまりにも偉そうな対応にこれでいいの?と言わんばかりに私のことを見つめる。
「まあいいわ。ナーシャ嬢がお分かりなら私は何も言うことはありませんわ。ロアン達も令嬢の肩を持ったこと、謝罪して下さるのかしら」
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