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 レナの魂の欠片を全て集めればレナの魂は蘇るとミズキは私に言った。

 機械化技術によって作られた魂のない脳にレナの魂を挿入することで生前のレナと同じレナの脳をつくることができるというのがミズキの仮説だった。ミズキはレナの魂の欠片を集め続け、ついに100%に達した。確かにそれはレナの魂だった。

 しかし、ミズキはそれが生前のレナと全く同じものではないということに真っ先に気づいてしまった。

 もしかしたらその100%という基準が間違っていたのかもしれない。もっと魂の欠片が必要だったのかもしれない。

 けれども、生前のレナと変わらないものをつくるという行為そのものがそもそも不可能なことだったのだ。一度分散した魂の欠片を全て集め、分散前の魂を再現しようとしても全く同じものができることはないからである。

 それはレナの魂自体にはなるかもしれないが、生前のレナの魂の全体性を表すものにはならない。

 結局、残された私たちは今あるものでしか魂を創り出すことしかできない。確かにそれはレナを構成していたものだ。けれどもそれは私たちの知っているレナを再創造しているだけで、機械を量産するかのようにレナの魂を再生産しているわけではない。

 ミズキはそれをわかっていたのだろうか。いや多分わかっていた。それでも、レナの完全再現ができると信じていた。事実はほとんどレナだった。

 でも……ミズキはレナを本当に愛していたから、限りなくレナに近かったがレナではないということを直感的に、誰よりも敏感に感じ取ってしまった......。


***


 私はこの計画が上手くいって欲しいと本当にそう思っていた。


 ミズキのことがずっと好きだった、恋愛的に、そして一人の人間として。でもレナとミズキの仲を引き裂きたいと思ったことなんて一度もなかった。好き合っている二人のことも私は大好きだったから。

 だけど、レナが死んで私はミズキと二人きりになった。ミズキのそばにいるということが生きている私にはできる。死んでしまったレナにはできない。

 計画が上手くいってほしいと願う自分がいる一方で、失敗して何もかも嫌になったミズキが私の元にきてくれたらと思ってしまう自分がいた。ミズキの一番がずっとレナだったとしても......そばに居続けられるのは私しかいないのだから。

「あ......ハルミ......」

 その表情からミズキが何に絶望しているのかは一目瞭然だった。私はなんと声をかけるべきなのか必死で考える。何を言ってもミズキを傷つけてしまうようで、ただ黙っていることしか出来なかった。すると「あれ」という声がミズキの後ろから聞こえてくる。ミズキは振り返ろうとしない。

 彼女は私の姿を見るや否や、パッと目を輝かせて私の元に駆け寄った。

「ハルミ?ハルミだよねっ?」

 彼女はこの空気感を感じ取っていないのか、とても明るい声色で無邪気に私の名を呼んだ。そんなの声だけがこの部屋に響く。

 チラッと私はミズキのほうに視線を移す。縋るようにミズキは私を見つめていた。

「......」

 今のミズキは、私のことしか見ていない......。

 私は、思わず上がってしまった口角を咄嗟に隠す。

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再創造 紗梨奈 @pear_4071

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