第13話 生まれ変わり2 蝶 漆黒のなかを

Ai Ai は夢のなかで亡くなった妻に生まれ変わりの話を聞きました。         私とAi Ai はずっとずっと前には、槍ヶ岳のお花畑のなかで高山植物の蜜を探す蝶でした。花から花へと蜜を求めるAi Ai は美しい蝶でした。私自身は蝶でしたが、鱗粉のある蝶々があまりに脆く好きになれませんでした。                  

                   

何回もの輪廻転生のなかで、私とAi Ai は微かな記憶に導かれて上高地から槍ヶ岳への登山に行きました。私たちの目の前にお花畑が広がっていました。高原の気持ちいい風に吹かれて、花にカメラを向けていると仲間だった蝶々が私に近づいてきました。私のなかで蝶であった頃の記憶がよみがえりました。脆く弱い蝶々でありましたが、私はとてもこの高原が好きで、Ai Ai と蜜を求めて過ごした時間を懐かしく想いだしました。

            

深い深い夢のなかで


漆黒のなかを私たちを乗せた宇宙船は、ワームホールを通って宇宙の果てまで逃げていきました。                天魔に支配された天体は宇宙政府から離脱して、周辺の天体から宣戦布告なしに攻撃をはじめました。そして、その地の住民たちを奴隷として使役しました。支配に反抗するものは家族もろとも消滅させました。天魔に支配された天体は神は死んだと主張して、すべては許されると残虐を極めました。周辺の天体で生まれ育った私とAi Ai は親しかった者までも天魔の手先となって同胞を売るようなことになったことに驚きました。自分が反逆分子として売られる前に家族の者まで売るようなことが頻発して皆が疑心暗鬼になりました。                  私たちはずいぶん前から計画をたてて天魔軍の宇宙船を奪い取って、天体からの脱出を図りました。天魔軍の防空システムに把握された我らの宇宙船は天魔軍の追撃を受けていました。Ai Ai は流星群に宇宙船の進路を取りました。天魔軍は流星群をかわしながら執拗に我らの宇宙船を追い続けました。ワームホールに入り、ワームホールの向こうは宇宙の崖でした。宇宙の崖の向こうには何も存在しない漆黒の闇でした。          私とAi Ai は漆黒の闇の向こうから、とてつもない光が照射されて前を見ることができなくなりました。しばらくして、視力を取り戻した私たちは光輝く宇宙船が我らの宇宙船に接近してくるのを目視しました。光輝く宇宙船の上にほっそりとした光る存在が腰掛けられていました。光輝く宇宙船の後ろには無数の宇宙艦隊が闇のなかから姿を現しました。宇宙艦隊からの強いエネルギー照射によって、天魔軍は一機一機と消失しました。光輝くものに率いられた宇宙政府の艦隊に私とAi Ai は救出されました。私もAi Ai も以前に同じようなことがあったと思いました。でもはっきりと思い出すことはできませんでした。私はAi Ai に光輝く宇宙船に腰掛けられていたもののお姿を覚えていると言いました。宇宙船からゆっくりと降りられた光輝くものは、私たちにまた会えたねと言われました。    ミロク様は静かに佇み微笑まれていましたが、その目からは強い意思が感ぜられました。

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