第6話 出来レース

すべての手続きは出来レースで、仕組まれたものでした。大財布内に合体委員会があって神への生け贄の選定に注力します。大財布と合体先の財布団地は、我らの団地が潰される前に筋書きを決めていました。他の財布団地の合体候補が何団地も上がるも、何かと難癖つけられてボツになりました。       私はうんこ財布の質と量は同じ機械帝国内で同じようにやっていて、そんなに差がつくものかと疑問を持ちました。食われた団地と存続合体した団地にどれだけの差があったのか。結果的にわが団地は生け贄にされたのでした。生け贄にされたのは、わが団地に実力かなかったのだと思います。       帝国議会で恣意的なうんこ検査マニュアルの運用の是非について取り上げられましたが、一旦決まった破綻は覆水盆に返らずで何も変わりませんでした。機械帝国の大多数の臣民にとって我らの財布団地の破綻など他人事で、政府のやっていることに何の疑問も持ちませんでした。皆は自分に降りかからない限り無関心で、すべてはなし崩し的に進んでいきました。               うんこ検査マニュアルの呪縛はその後も財布団地を縛り続け、新たな信用創造の阻害要因となり続けました。その教条主義に囚われた当局や財布団地は画一的に運用を続けて機械帝国の経済の足を引っ張り続けました。そして、この頃の当局は恣意的にマニュアルを運用して生け贄を求め続けました。破綻を恐怖した財布団地はとても臆病になって、うんこ財布になりそうなものをすべて排除しようとしました、しかし、生きている団地にあってはそんなことは不可能でした。  

                      我らの退職金は整理うんこ機構に取り上げられました。それというのも、退職金積み立て金を特定信託にするときに、名義をS 財布団地にしていたからです。S 財布団地退職金勘定にさえしていれば、押さえられなくて済んだものを、経理が馬鹿なために取り上げられました。そのことを不服として、裁判費用を皆から集めて、帝国オシラスに提訴しました。裁判長の判断は我ら原告側を敗訴にしました。退職金訴訟は、一審で敗訴、二審でも敗訴しました。もうこれ以上裁判を続けても意味のないことだと判断して、我らは敗訴の結果を受け入れました。普通に考えて、その特定信託が退職金であることは明らかなのに、司法は弱い側につかず、労働債権たる退職金を合法的に詐取しました。   

                    我ら食われた財布団地の者どもはそのほとんどがスクラップ状態になり大変な辛酸を舐めました。たくさんの者たちとその家族は不幸のどん底に突き落とされました。整理作業も終わり、採用されなかった私は毎日していた通勤もしなくて良くなって、毎日が日曜日になりました。私は電池の切れたようになりました、眠るといつも悪夢を見るようになり、私をなむうんこ~うんこ~と何かが追いかけてくるのです。私は恐怖で、叫び声をあげて、夜中に起きてしまいました。妻キヨラは悲しげに私を抱きしめて、大丈夫、大丈夫、とつぶやきました。息子はそんな私を見て恐がりました。家族との食事のときも上の空でした。その後、時が経ち私はもう少しでうんこになるところでした。キヨラは電池の切れたうんこ状態の私を静かに受け入れてくれて見守ってくれました。私は私の妻と息子を心から愛していました。息子のつぶらな眼を見ているだけで、癒されました。

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