第4話 生け贄
私のつぶやきにも似たとりとめない手紙を瓶に積めて大宇宙に放出しました。私のなかに長い間に貯まったものを解決したいけれど、私の仲間に尋ねても仕方ないことだとしか返ってきません。我らはあまりにすべてを受け入れて、仕方ない仕方ないと呪文のようにつぶやいて、今をやり過ごすことに慣れ過ぎたのかもしれません。私が手紙を大宇宙に放出するなどという、大それたことをなしたのは、私のなかにそうせざるを得ない何かが生じたからです。私のしたことが発覚すれば、私はスクラップにされてしまうでしょう。 過去に宇宙への進出を言い出したものもいましたが、そのようなことをして、我らの存在が知られたら、我らを支配するものが現れるかもしれないと、宇宙への進出を言い出したものはぐちゃぐちゃにスクラップにされました。もしそのようなことになっても、宇宙の片隅に閉じ込められている私は、私の拙い手紙があなたに届くことを願います。私の手紙を読んで解読できるものなら、私の思いを理解していただけるものと思います。 ではあなたに私の話からさせていただきます。私がしまい込まれたS 財布団地は大財布に潰されました。財布団地とは帝国内で通貨をやり取りする機関で、帝国内には多くの財布団地が存在し、我らの生活に欠かせない存在でした。すべての団地は定期的に帝国Bと大財布の検査を受けています。 大財布はうんこ財布の整理という大義を利用して、帝国内の財布団地の整理統合をはかろうとしていました。財布団地の破綻により数を減らして管理する団地の絞り込みを謀りました。帝国Bと大財布はタッグを組んで、それぞれの検査は独立してなされましたが、帝国Bは独立性を強調しましたが内実は財布省に支配されていました。定例の大財布の検査で、直前の検査において10割であった簡単財布の評価が突然7割になりました。わが団地の親玉はそのことに大変驚きました。 シンジュウというあらゆるものをターミ化することを正義とした考えに帰依してなんでもぶっ潰すことの大好きなスプリング大統領のもとバンブー長官はうんこ財布の処理という大義を旗頭にして多くの財布団地の廃棄処分を進めて、うんこ財布を切り分けて整理うんこ機構に売り飛ばしました。うんこまみれだとして財布団地を他国にただ同然で売り飛ばしました。 財布団地の資産のうち不良とされるものをうんこ財布と言っておりました。この査定はうんこ検査マニュアルによって恣意的に運用されて、生け贄として財布団地を神に捧げました。 大財布の役人たちは毎日神棚に向かってうんこ検査マニュアルを唱えて、検査のバイブルとしてマニュアルを神棚に飾っておりました。検査の始まる前には全員で唱和されました。わが団地の親玉たちにも、その唱和が義務づけられていました。その唱和の音は近隣に響き渡りました。なむうんこ~うんこ~と唱える姿は鬼気迫るものでした。
すべてはうんこ同様のものでした。神のデータベースのなかで読んだ開高健の夏の闇という小説のなかで主人公が彼女に愛情を込めてうんこちゃんと呼びましたが、我らを取り巻くすべてはうんこまみれでした。我らを闇のなかに落とすシステムが起動しました。我らの社会はいつも外部を必要としていました。起動したシステムには悪意が巣くっていました。生け贄を求めたシステムはターゲットに我らの財布団地をロックオンしました。我らの財布団地は巧妙なトラップにかかりました。
我が機械帝国の金融システムは、神のデータベースにあった金融システムのコピーでした。神のデータベースには、ニホンという地域のヘイセイという時代に金融システムの混乱がありました。じゃぶじゃぶのマネーが溢れて、ある時にピークを迎えた株価が暴落して、土地投機を止めるために総量規制が金融機関に通知されて、地価下落など資産バブルが弾けたそうです。まず、小規模な金融機関が破綻して、ジュウセン破綻が起きて、ホッカイドウにあったタクギンという金融機関が破綻しました。その後、ヤマイチやチョウギンなどが破綻、金融監督庁・金融庁と呼ばれる大財布が発足しました。そして、資産査定のバイブルと呼ばれた金融検査マニュアルが制定されました。資産価格の下落により不良債権が増加して多くの金融機関が破綻して金融危機が悪化しました。金融検査マニュアルは金融機関の検査を行うときのマニュアルでした。自己査定は金融検査マニュアルにより実施されて、信用格付というランク分けがあって、債務者区分として①正常先②要注意先・要管理先③破綻懸念先④実質破綻先⑤破綻先がありました。金融機関は金融庁の検査に備えて自己査定を実施し、その際に金融検査マニュアルによって資産査定しました。尚、金融検査マニュアルは環境変化に対応できなくなって廃止されました。
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