第2話 わたしがラブレターを書いたその後

 親友が失恋した。

 もちろん親友はショックで泣いた。

 わたしの側で大泣きしながら、自分のことを悪く言う親友。

 もちろん、わたしはショックだった。

 わたし、あなたを好きだから。

 あなたの良いところ、わたしは全て知っているつもり。

 というか、あなたの全部が好き。

 その気持ちを言えないので、わたしは親友に手紙を書いた。

 それは無事に親友に届いたし、親友は元気になってくれた……と思ったら。

 わたしは自分の名前を書き忘れていたのだ。それによって、わたしは親友に糠喜びをさせてしまった。

 どうしよう……と、わたしは悩んだけれど答えは出た。

 ……よし。

 真実を言おう。

 親友のために……いや好きな子のために本当のことを伝えなくては。

 そういうことで、わたしは二通目を急いで書いた。またしても奇跡的に手紙は、ちゃんと好きな子に届いた。

 あとは、わたしが勇気を出して謝るだけ。

 ドキドキ。

 その結果、好きな子はドジなわたしを笑って許してくれた。そして、


「……あのときの手紙、覚えてる? 小学生のとき、あたしがフラれた後にくれた二通の」

「へ?」


 数年経った今でも、わたしたちは親友同士だ。一緒の小学校に通っていた二人は、中学も高校も同じ。わたしたちは、いつだって共に登下校をしている。そして今は、二人きりで下校中。

 でも……まさか高校生になって、あの手紙の話題が出てくるとは思わなかった。個人的に、あれは黒歴史だからだ。文章がストレート過ぎることと、名前を書き忘れるという自分のドジを思い出しては恥ずかしくなるのだ。

 とどめを刺してしまっているのは、わたしが好きな子と今も、あのころのままの関係性だということ。


「あー、ごめん。この話題、やっぱり嫌だったか。かなり泣いちゃったもんね」

「あ、気にしないで! 続けて!」


 好きな子は気を遣ってくれたけど、わたしは話の内容が気になるので続けてもらうことにした。


「じゃあ続けるよ?」

「う、うん! どうぞ!」

「今更で悪いけど……あれって、あたしを好きだってことだよね?」

「え!」


 ……嘘でしょ?

 あれ、伝わったんだ!


「い、いつから知っていたの?」

「ああ、やっぱりそうだったのか」

「あっ……」


 顔が、いや体全体が熱くなっていく。相変わらず間抜けなわたし。すぐに自分の口で好きと言えなかった、のろまで臆病なわたし。色々と恥ずかしくて真っ赤になっちゃった。


「ごめん、意地悪しちゃった。あたしさぁ、小学生のころは好きな人にブリッコしちゃっていたけど……最近になって本当の自分に気付いたんだよね。あたしは本来、好きな子に……あっ」

「……?」


 好きな子の言葉が止まった。わたしが不思議そうにしていると、再び口が開く。


「あたしから言うのは、間違っているかな」


 好きな子も、ほっぺが赤くなっている。

 ……そうだね、ありがとう。

 わたしは心の中で感謝した後、


「わたし、あなたのことが好き」


 好きな子に、ちゃんと伝えた。




「でも、いつから知っていたの?」

「中学んとき。まあ、あれ貰ってから数日後には……ん? って思い始めたけどね。で、あたしも同じ気持ちだって気付いたのも、ほぼ同じタイミング」

「それまで待っていてくれたの?」

「そうだね。でも、あたし結構せっかちじゃん? 待てなくなっちゃって、とうとう言い出しちゃった」

「本当ごめんね……」

「あ~、そりゃ色んな人間がいて当然だよ」

「……ありがと」

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優しいラブレター 卯野ましろ @unm46

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