【短編】貞操観念逆転世界でAV男優を目指そうとするが、デビューを全力で止められる話

キョウキョウ

短編

 俺は、転生者である。前世では、普通にサラリーマンとして働いて、急に死んだ。過労死だったのかもしれない。それが何故か、もう一度生まれ変わって赤ん坊からの再スタートを果たしていた。


 二度目の人生だが、特に何の変わりもなく。遊んで寝て、自由に過ごすような日々を送っていた。記憶があるから、最初の頃は勉強で周りの子達に負けなかった。天才少年だと呼ばれていた時期もある。だけど今は、普通になった。人生が二度目でも、頭はそんなに良くなかった。


 それと、前の世界と比べて大きく違うところがあった。男性に比べて、女性の数が圧倒的に多い。普段の生活で、身の回りには女性しか居ない。しかも、非常に魅力的な女性。


 顔が可愛かったり綺麗だったり、おっぱいが大きかったり形が良かったり、お尻も魅力的で太腿もいい感じだし、腕は細いし肌も綺麗で、足とか指先まで美しく整っている。とにかく美人が多いのだ。それにスタイルも、良い人ばかり。


 こんな世界に生まれ変わったら、男なら誰もが発情するだろう。俺は常に、悶々としていた。精通してから毎日ずっと自家発電している。それでも間に合わないぐらいに、ムラムラと性欲を持て余す日もあった。


 この世界で生きていて思ったこと。それは、女性が凄く無防備でエロいということだ。ちょっとした仕草や表情でドキッとする。胸元が開いた服を着ているのを見るだけでも、ドキドキしてしまう。とにかく大胆なんだ。


 だから、勉強なんて手につかない。頭も良くなるはずがない。


 そんな風に学生時代を過ごしてきて、そろそろ進路についてを考えないといけない時期が来てしまった。俺は、何をして稼いで生きていこうか。


 前のように、サラリーマンとして働いていこうか。でも、あんなに頑張って働ける自信がない。それに、あんなに頑張りたくない。サラリーマンとして働くのが怖い。また、過労死で逝ってしまいそう。


 好きなことをして、楽に稼いで生きていきたい。


「あ、そうか」


 そう考えたとき、一番に思いついた仕事がAV男優だった。色々と条件をクリアしていると思う。


 どうやら、それなりにモテるので容姿に問題ない。この世界で一番、エロい男だという自信もある。エロを追求する覚悟もあった。生半可な気持ちで、AV男優になるつもりはない。


 毎日の自家発電で、男の部分も鍛えられているはず。アソコに自信があった。他の男には負けない経験値を積んできた。


 そして、需要もあるだろう。女子たちが、男を見るエロい視線は知っている。俺も見られているのを感じる時がある。そんな彼女たちも見たいはず。


 うん。これは、とてもいい考えだな。早速、目指してみよう!



***



 私には、男の友達が1人いる。しかも、仲が良い。彼は、近所に住んでいる子だ。幼馴染という関係である。


 本当に幸運だった。私みたいな女が、男の子と関わる人生を送れるなんて。毎日、神に感謝した。本当にありがとうございます!


 だけど、まさか彼がそんな事を考えているなんて知る由もなかった。


 発覚したのは、とある日のこと。何気ない会話をしている時だった。いつも通りに話していたら、いきなり彼の口から衝撃的な言葉が出てきた。


「俺、AV男優を目指してみようと思うんだ」

「……え?」


 衝撃的すぎて、何が起きたのか分からなかった。私は今、友人と会話をしていた。何を話していたのか、一瞬で吹き飛んだ。えーっと。なになに? 私の聞き間違い、だろうか。


 いやいやそんな、男の口からAVなんて。そんな言葉が出てくるはずない。きっと聞き間違いにに決まっている。そうだ、そうに違いない。


「ごめんね、よく聞こえなくて。今、なんて」

「だから、AV男優になろうと思っているんだ」

「あわあわあわあわ……」


 AVって、あのAVだよね。男女がエッチしている動画。アニマルじゃない方。男優って言っているから、彼が出演する。いやいや、そんな馬鹿な。


「ダメ!」

「えー、なんで?」


 いやいや、むしろなぜ目指そうとしているの。意味が、わからない!


「だ、だって、そんな。知らない女と君が、せ、せ、せっ――をするなんて!?」

「見たくないの?」

「見たい!」


 そんなの見たいに決まっている。彼の裸。女と交わっている様子。気持ちよさそうにしている表情。ぜひ、見てみたい。


 知らない女とシている様子を想像してみると、ちょっと興奮してきた。それも良いかもしれない。


 いや、ダメだ! 彼の裸姿なんて晒したら、伝説になってしまう!


「とにかく、ダメ!」

「えー。じゃあ俺は、どうやって稼いだら」

「そんな事をしなくても、男だったら働かないで生きていけるでしょ! なんなら、私が、その、えっと、君のことを養っても」


 顔が熱くなる。なんでこんな話をしている途中で、プロポーズなんかしているか。もっと、ロマンチックな場面で言いたかった。しかし、彼の反応は飄々としたもの。


「でも、やっぱり男だから働いて稼ぎたいな」


 そんな事を言う彼。時々、彼の価値観が分からなくなる。男だから、別に働かなくても普通なのに。むしろ、男だったら働かないで養ってもらうほうが、ぽいのに。


 とにかく、彼を止めないと。これは、ちょっとした思いつきで挑戦しようとしているだけ。将来、彼は後悔してしまうもしれない。そうさせないため、なんとしてでも私が止めなければ!

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