第5話 まっ白

 銀太郎が買った品々はカウンターに陳列され、店員の手には例のブツが握られていた。

 例のブツは完全にこの事件の主役になっていた。レジ待ち3人の女性客が怪訝そうに沈黙していた。


 しかし、事件はこれで終わらなかった。さっきの妄想相手の可愛い女性が白衣を着たままこのコンビニに入ってきたのだ。彼女は銀太郎を覚えていたのだろう、軽く会釈をして銀太郎に微笑みかけた。だが、次の瞬間、散らかったカウンターと店員の手にしたものを見て可愛い微笑みは、軽蔑の冷たい視線に変わり、銀太郎の妄想を一気に粉砕した。


 明日ジュテームに会えるのに妄想を膨らませた罰として軽蔑の冷たい視線の集中砲火を浴び、さっきまで高揚していた銀太郎の顔は青ざめ頭の中は真っ白になった。


 コンビニの駐車場には銀太郎を慰めるかのように真っ白で大粒の雪が深々と降っていた。


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雪と白衣 銀の筆 @ginnopen

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