第5話 添い寝
「ぐっすり眠ってましたよ……あなたが眠っている間にワイヤートラップやセンサー類を仕掛けて来ました。……えっ、私が隣で添い寝していた記憶がない? ま、まあ、そんな事してませんからね」
「ならば早くしろ? ずいぶん生意気な事を……怪我をしてから横柄な性格になっていますね、私が頭を開頭して脳に異常が無いか早めに診ましょうか?」
//SE ナイフを取り出す音
「ご覧のとおり研ぎたてのナイフなので、テイッシュを空中で両断出来ます」
//SE メイドがナイフを振り、ティッシュを切る音
「ふっ。またつまらんモノを切ったかな? まあ、アニメのように車を一刀両断とはいきませんが。ところで最近のアニメ作品は、最初は虐げられ、最強の力を後天的に会得、仲間や身内が死んでからやっと隠していた真の実力を出す作品が散見されます、何故主人公の彼ら彼女らは敵による被害が拡大する前に、本気で戦わないのでしょうか?」
「いいえ、私はあなたの好きな作品にケチをつけていません。単純に疑問になっただけです。……はい? はあ……世界観におけるルールに従うと必然的にそうなるんですか、納得しました」
//SE メイドがベッドに座る音
「もし……もしもですよ? 私たちの生きてる世界は誰かが、嫌々会社に向かう通勤の合間の暇つぶしにスマホのメモ機能で創った創作物の数ある作品の一つだったとしても私は、その誰かに感謝しています。こうしてあなたと一緒にいられる世界にしてくれたんですから、一つ苦言を言うならばイチャイチャした作品にしやがれ……なんでもありません」
「変な事を言っていると自覚していますが、時折思うのです。私の思考や行動は認知不可能な存在が決めているような気がするのです」
「適当な話題で話を逸らすな? そうですね、実際あなたにカバーして頂いたおかげで私は怪我をしていませんし……でも、無料はダメです。世界でも無料程に危険で醜悪なモノはありません、それを理解して頂くために私はあなたにトルコアイスを所望します」
「え、あのアイスは現在販売していないんですか? モチモチしていて腹持ちが良く大変美味しかったのに残念です」
「では、小さくて高級なアイスがいいです。抹茶味の……二個買って頂ける? 発言を録音しましたからね、二個ですよ。二個」
//SE メイドが隣に寝転がる音→耳元でささやく
「一個は、あなたのですけど」
「……変なところを無許可で触ったらナイフで削ぎますからね。具体的な削ぐ部位はご想像にお任せします」
「あなたの静養も兼ねて、ジャパンのアジトに行きませんか? 一般人の武器の所持が困難であり、多少平和ボケしている国ですが警戒ポイントを減らせるので私も楽ですし。年中入れる温水プールに行けば、あなたが動画配信サイトで熱心に見ている水着姿の女性も沢山拝見できますよ」
「そうですか、私の水着姿の方が見たいですか。実は恥ずかしながら水着を着た事がないのです。それに……あの布面積では下着とまったく同じではないですか? 良いのですか、私の布面積の少ない水着姿を他の男性に見られても」
「一向に構わない、ですか」
//SE メイドがナイフを出す音
「……ですよね? やはり私を独り占めしたいですよね。プライベートビーチを予約したら靴下の片方だけ脱いであげます。もっと見たいのであれば高級ホテルの最上階の温水プールを予約してください、そうすれば気分次第でもう片方の靴下を……まるで天井無しの悪質なガチャ? 意味が分かりません」
「さあ、無駄話をしていないでしっかり休んでください。私が子供に読み聞かせるようにお話をしてあげましょう。のんびり聞いてくださいね」
//SE メイドがあなたの背をゆっくりと叩く音→メイドが小声で話し始める
「一匹の猟犬がいました。……猟犬は何も考えず、飼い主の命令だけを忠実に命令を聞いて冷たい寝床に粗末な餌を与えられて、自分の世界以外を知りません。ある時、いつものように獲物を追いかけていると、飼い主と違う人間が猟犬に声を掛けます。命令の邪魔をする人間に猟犬は噛みつきますが、まったく動じません。それどころか、温かい寝床と美味しい餌をくれると言います。それは猟犬の知らない考えでした。他人が猟犬に何かをするときは、飼い主以外の全ての人間は極悪人なので嘘を吐いて殺す時だと、猟犬の飼い主から散々習った事です。ですが、極悪人の言葉に一瞬迷ってしまった猟犬は初めて獲物を逃してしまいました、怒った飼い主は猟犬を狩るように他の猟犬に命令します。かろうじて生き残った猟犬は極悪人に助けられて、広すぎて理解の及ばない本当の世界を知りました。それから猟犬は極悪人と一緒に暮らして世界中を旅をします、旅の先に何があるか分かりません。明日には二人共殺されるかもしれません……それでも」
「先が分からないから面白い。そうでしょう?」
元殺し屋メイドASMR 黒鬼 @nix77
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