第2話

 私の行きつけのカフェはいつも人がそこそこ入っていて、ちょうど良い環境音が作業を捗らせてくれる。雨音もあいまって、今日はバリバリ作業できそう!

 長居しても怒られないのって良いよね。常連の特権ってやつかも!

「アイスコーヒーお待たせしました」

「ありがとうございます!」

 グラスもひんやり冷たいアイスコーヒーを一口。すぅーっとコーヒーの良い香りが鼻を抜けていく。冷たいのに香りがわかるってことは、とても良い豆を使ってるんだと思う。味もクセが無くて、すっきりしていて、のどごしもまろやか。カフェインが脳を活性化させてくれそう!

 これなら、良い作品を書けそう!

 私はタブレット端末をテーブルに置いて、キーボードを繋いで、早速執筆作業を開始する。

 異世界グルメ系の話にするから、主人公はカフェの店員が良いかな。ここの店員さんをモデルにするとしたら――見た目は中肉中背で顔はそこそこ。悪くないけど、良くもない。私の好みではないってだけで、ああいうのが好きな人もいるはず。彼女とかいるのかな……。いるとしたら、どんな人なんだろう……?

「あのー、すみませーん」

「はーい」

「お兄さんって、彼女いますか?」

「えっ」

「あ、いきなり変なこと聞いてすみません。いるのかなぁって気になっただけで」

「あ、ああ、そうですか。いませんよ」

「そ、そうですか」

 変な空気になっちゃった。

 でも、予想通りと言えば予想通りだったかな。せっかく呼び寄せたから、取材続けちゃおうか。

「ついでに、どういう人がタイプだとかありますか?」

「あ、え、あー。お客様、そういうのはちょっと困ります……」

「そういうのじゃないです。私がお兄さんのことタイプってわけではないんで教えてください」

「いえ、だから、困るんですって」

「じゃあ、もう良いです。変なこと聞いてすみませんでした」

 周りの視線が気になるからやめた。

 今の、もしかして匂わせちゃった? 気があるように思われたらどうしよう。まあ、そんなことないよねぇ。

 気にせずに執筆しちゃお。主人公は決まったから、次はヒロイン!

 なんかこうモデルになりそうな人いないかなぁ……。

 店内を見回していると、ベルの音が鳴る。

 私は頻繁に来るからだいたい常連客の顔を知ってる。けど、今来た人は見たことがない。たまたまカフェを見つけて入ってきた人かな。ここはテイクアウトもできるし、それを目当てに来る人もけっこう多い。SNSのフォロワーもじわじわ増えてる。私が来る度に投稿してるから、フォロワーが訪れてるってのもあるはず! だとしたら、今来た人も私のフォロワーかもしれない!

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