キミが絶望しないならボクも絶望しない
@uwm54213
第1話
「その本、取ってくだ、くだ、さい」
扇🪭図書館は地方都市にひっそりとある、
小規模な市営図書館で、夏休みともなると、学生たちで賑やかになるのだが、今日は雨模様ということもあってか、人影はまばらだった。
「マルシアガルケスの本、お願いします。と、取ってください」
泉狭間(いずみはざま)が小さな声を振り絞った。
「これかい?」
真藤太(まとうだ)清吾が本を取って手渡してやった。
狭間も清吾も実は同じ高校🏫の一年生だったのだが、今まで一度も会ったことはなかった。
狭間は黒髪の似合う小柄な文学少女。
清吾はイケメン(?)の野球少年だった。
「あ、ありがとう、ございます」
「へー、ノーベル文学賞受賞作家か、オレなんかノーヘルでバイク🏍️🛵運転するくらいがいいとこだけどな」
「あ、バカ」
「ダレがバカじゃ、だれが?」
「アンタ」
「殺すぞ、テメェ!」
「難病少女でごさいます。なにとぞお許しを」
「難病なのか、オマエ」
「脚が思うように動かないの」
「フーン。じゃあ、オレが車椅子押してやるよ」
「エッ?」
狭間は意外で呆気にとられた。
キミが絶望しないならボクも絶望しない @uwm54213
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