七月の七分七十七秒のゆくえ
新吉
第1話 777
「な、な、な、」
「ばなな?」
「いや、違う、なんでお前ここにいるんだ?」
「いいだろ?」
目の前にいるのは転校していったオレの友達。
「ラジオ体操」
「ハァ?」
寝ぼけてこっちまで来たのか?3駅分歩いて?オレが寝ぼけてる?
「ラジオ体操だいいちー」
聞きなれた声がして、オレは深呼吸をはじめる。いつもこの手と、呼吸が合わない。
あいつは夏休み前に転校していった。夏休みになったらあれしよう、これしようといっていたのに。駄菓子を買い込んで家出しよう、近所の地図までかいて。雨がしのげるところ、寝るならオレがここでお前がこことか。
ちらっとあいつをみるとにこにこしている。なんだあいつそんなに楽しみだったのか。そうだっけ?あー宿題やんなきゃな、あいつ終わったんかな、あれ学校違うから宿題違うのか。
ひらいてとじてとじてとじて
宿題のページをひらいてはとじて
アルバムをひらいてはとじて
教科書をひらいてとじて
マンガもひらいてとじて
ラジオ体操が終わるとスタンプをもらいにいく。あいつのスタンプカードはオレのと違っていた。
「おいおい、待てよ」
「ビックリしただろ!?」
悪ガキの変わらない笑顔があって安心する。
「ビックリしたよ!朝早すぎない?」
「おれの特技忘れたのか」
「わすれてねぇよ」
「へへ、余裕できたから起きれたら来てみようとおもってさ、お前行くって言ってたし」
「うわーめいわくですー」
「迷惑がるなよせっかくの参加者だぞ」
「え?」
けんの声と体が急に大人になって、オレはやっと目が覚めた。ラジオ体操のわずか6分、いやはじまる前と終わってちょっとまで、幼なじみと一緒に体まで童心に帰っていた。はずかし。さすがに車で来たみたいだけど。
「スタンプくれないの?」
「あーごめんごめん。あ、おい、けん!終わるまで待ってろよ」
「いやおれも並ぶ」
「おっさんなんでカードもってんの?」
「いいだろ?」
「いーよー」
七月の七分七十七秒のゆくえ 新吉 @bottiti
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