最終章 君という太陽に、寄り添う月でありたい。
第18話 叶った願い
【尾の瀬海岸前ー。お忘れ物のないよう……】
「着いたね!」
「着いた!」
「「ありがとうございました!」」
●
「かっこいー! クラクションで挨拶なんて映画みたい!」
「運転手さんってかっこいい人が多いよね。そういえば、明里はあの運転手さんに会えた? 僕、全然会えなかったんだ……」
「私も会えてない……今は違うバスなのかなあ。また会いたいね!」
「ね!」
●
「へー! カフェができてる! おしゃれ!」
「今年の春にできたらしいよ? 明里はここで待ってて、準備してくるから」
「ええー。私もお手伝いしたい!」
「ダメダメ。リハビリ頑張ってるけど、杖があるし重い荷物なんて持てないでしょ? 準備して来るから」
「それを言ったら秋君だって……あー! ジト目した! はいはーい。へーい。ぽよぽよぽよー……ひあ!
「あはは! もう本当に……明里は可愛いなあ」
「!!! ……ひううー」
●
《明里と、この海に来れた。嬉しい。嬉しい。神様、願いを叶えて下さってありがとうございます》
《今日だけどうしても、と出てきてしまった。明里も僕も、あまり芳しくない。けど、僕らが付き合い始めた今日を目標に二人とも必死で体調を整えた。河村教授、無理を言ってごめんなさい。本当に……ありがとうございました》
●
「ふう。ビーチパラソル立てたし、レジャーシートの端は石で固定した、と。明里がお弁当作ってきてくれたし、足りないものは買えばいい。もし具合が悪くなったらカフェに一時避難。スマホの充電も満タン、よし!」
「ちらっ? ちらりらっ……こそこそ。ささっ♪」
「障害物ないんだけど何に隠れた音なのかな? でも、明里がどんどん昔みたいな感じになってくれて嬉しい」
「私、いっぱい努力してお姉さんになったんだもん! 大人のレディなんですよ! それに私も少しくらいお手伝いしたいよ! さーびーしーい! かまってくれなきゃプンプンですよ!」
「うんうん、大人だね。そろそろ迎えに行くところだったからいっか。杖、貸して? ささ、お姫様。こちらへどうぞ」
「言い方ぁ! ……うむ、うむ。くるしゅーない。よい、しょっと! ありがと! 秋君も座って座って! ……おしり、あっつーい!」
「よっ、と。このタオル敷いてみたら? 今、飲み物出すね」
「ありがとう! おしり熱くないよ! ……ええー、お茶ぁ? ここはお酒でしょー。私達は立派な大人だよ? オ・ト・ナ。もう秋君、暑さでどうかしちゃったの?」
「明里、お酒が飲めるんだ? 知らなかった!」
「ふふっふふ、ふすー。ふふふゆー」
「口笛、一つも鳴ってないよ?」
「ふふふ、大人になった私に不可能などありませんことよ? ひゅふー」
「
「ふすー、ふゆひゅー……ぴるぴるぴー!!」
「ぶっふぅ!」
「やった! 生まれて始めて口笛鳴らせたよ! ……秋君お茶でビショビショじゃん! 早く拭かないと……もー、私がいないと秋君はホントにダメダメなひとでしゅねー」
「
「……!!! 私も! 私も秋君がいないとダメなの。にひひー」
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