最終章 君という太陽に、寄り添う月でありたい。

第18話 叶った願い

【尾の瀬海岸前ー。お忘れ物のないよう……】


「着いたね!」


「着いた!」


「「ありがとうございました!」」



「かっこいー! クラクションで挨拶なんて映画みたい!」


「運転手さんってかっこいい人が多いよね。そういえば、明里はあの運転手さんに会えた? 僕、全然会えなかったんだ……」


「私も会えてない……今は違うバスなのかなあ。また会いたいね!」


「ね!」


 

「へー! カフェができてる! おしゃれ!」

 

「今年の春にできたらしいよ? 明里はここで待ってて、準備してくるから」


「ええー。私もお手伝いしたい!」


「ダメダメ。リハビリ頑張ってるけど、杖があるし重い荷物なんて持てないでしょ? 準備して来るから」


「それを言ったら秋君だって……あー! ジト目した! はいはーい。へーい。ぽよぽよぽよー……ひあ! ほっへらのいはうおほっぺた伸びちゃうよ?! のいる伸びるー! のいはうー!!」


「あはは! もう本当に……明里は可愛いなあ」


「!!! ……ひううー」





《明里と、この海に来れた。嬉しい。嬉しい。神様、願いを叶えて下さってありがとうございます》


《今日だけどうしても、と出てきてしまった。明里も僕も、あまり芳しくない。けど、僕らが付き合い始めた今日を目標に二人とも必死で体調を整えた。河村教授、無理を言ってごめんなさい。本当に……ありがとうございました》

 




「ふう。ビーチパラソル立てたし、レジャーシートの端は石で固定した、と。明里がお弁当作ってきてくれたし、足りないものは買えばいい。もし具合が悪くなったらカフェに一時避難。スマホの充電も満タン、よし!」


「ちらっ? ちらりらっ……こそこそ。ささっ♪」


「障害物ないんだけど何に隠れた音なのかな? でも、明里がどんどん昔みたいな感じになってくれて嬉しい」


「私、いっぱい努力してお姉さんになったんだもん! 大人のレディなんですよ! それに私も少しくらいお手伝いしたいよ! さーびーしーい! かまってくれなきゃプンプンですよ!」


「うんうん、大人だね。そろそろ迎えに行くところだったからいっか。杖、貸して? ささ、お姫様。こちらへどうぞ」


「言い方ぁ! ……うむ、うむ。くるしゅーない。よい、しょっと! ありがと! 秋君も座って座って! ……おしり、あっつーい!」


「よっ、と。このタオル敷いてみたら? 今、飲み物出すね」


「ありがとう! おしり熱くないよ! ……ええー、お茶ぁ? ここはお酒でしょー。私達は立派な大人だよ? オ・ト・ナ。もう秋君、暑さでどうかしちゃったの?」


「明里、お酒が飲めるんだ? 知らなかった!」


「ふふっふふ、ふすー。ふふふゆー」


「口笛、一つも鳴ってないよ?」


「ふふふ、大人になった私に不可能などありませんことよ? ひゅふー」


天真爛漫てんしんらんまんさがパワーアップしてる……お茶お茶」


「ふすー、ふゆひゅー……ぴるぴるぴー!!」


「ぶっふぅ!」


「やった! 生まれて始めて口笛鳴らせたよ! ……秋君お茶でビショビショじゃん! 早く拭かないと……もー、私がいないと秋君はホントにダメダメなひとでしゅねー」


あおり方が大人びてる! でも……そうだね。僕は明里がいないと、本当にダメだ」


「……!!! 私も! 私も秋君がいないとダメなの。にひひー」


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