第16話 『命は未来に向かって、手を伸ばしている』

「今日はホワイトクリスマスらしいよ。夜には雪が積もるって」


「明里にクリスマスプレゼント! 手袋だよ。大人びた明里からしたら不本意かもしれないけど、気に入ってくれるといいな」


「こんなに暖かい手。深いけど、聞こえてくる呼吸。明里は生きているんだ、ってホッとする」


「生きてるんだなって」


「……ダメダメ、涙なんて。見たなあ~。ナイショにしてくれると嬉しいなあ」


「ちーん、しないとダメみたい。明里さんや、ティッシュペーパーを分けていただけますかいのう……ぐすっ。ちーん……」





(……?)



(あれ? また何か聞こえた……?)



(気の、せいかぁ。……最近、こんな感じが多い気がする。秋くん、お父さん、お母さん……声が聞きたい。会いたいよ……)





「ごめんね、今日は来るのが少し遅くなっちゃった。病院に来る途中でさ、早咲きの桜を見つけたんだ。なかなか綺麗に撮れなくって。でも、ほらほら! どう?」



《……検査入院、叔父さんに頼んで早めにしてもらおうかな》



《明里と別れてから自暴自棄になって入院を伸ばしてた。それが体に影響してるって言ってた。こうなってみると……いや、今それを言っても、後悔してもキリがない。あれは、あの時の僕の本気だった。そうする事で明里が幸せになれるって……信じてたんだ》



《……結局、明里が目覚めない原因はわからないままだ。検査を重ね、過去のドナーの症例と照らし合わせても……手術以降の明里の容態は、昏睡状態と診断されるまでは問題が無かったそうだ》



《医療ミスが囁かれる中で、執刀医の河村教授はあらゆる手立てを尽くして、原因と治療の手立てを模索してくれている。叔父さんの病院と常に連携をして、小さな発見でもカンファレンスを開いてくれる》



《『いつだって、どんな時だって、命は未来に向かって手を伸ばしている。幸せに向かって手を伸ばしている。そう信じています。だから私達も貪欲に、最良の未来に向かって全力を尽くしていきましょう』……河村教授のあの言葉に僕らがどれだけ救われたか》



《僕ができる事を一生懸命に。明里に、気持ちが、声が届くと信じて。あの太陽のような明里の笑顔が見れる日は近いって》



「また来るね。にひひーって笑う明里、早く見たいなあ……楽しみにしておこっと!」




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