第3章 たった一つだけ

第14話 会いたいな

(真っ暗な世界……私は結局、だめだったのかな……)



(何も見えない、音も聞こえない)



(……秋君、どうだったかな。目、覚めたかな)



(信じよう。きっと……うまくいったって、信じよう)



(秋君、会いたいな……笑った顔、見たいよ)



(ねえ、秋君。私、ね?)



(怒るかもしれないけど、私がずっとこのままだとしても)



(秋君にも誰にも会えずに神様のお迎えがきたとしても)



(絶対に。絶対に後悔はしない)



(私の一番の最高の、目いっぱいの本気で、全力で考えた)



(私の体は、命は、きっとこの時の為にあった)



(もちろん、諦めない)



(秋君とまたお話できる日はくるって)



(秋君の笑顔を見れる日は近いって、信じてる)



(会いたい、なあ……)





「明里……お願いだから、目を覚まして」



「僕が未練がましく、よく待ち合わせをしていた駅に行ったから。もし一目だけでも会えたらって……また……」



《明里があの時僕にしがみついて、僕と一緒に電車に接触して飛ばされて……。僕がいなければ他に明里を助ける人がいて、結果こんな真似をしなかったんじゃないのか……?》



《明里が僕のドナーになった上に、目を覚まさないなんて!》



《こんな事になるなら、別れなければよかったのか? そうしたら、明里が僕のドナーになろうとなんてしなかったのか?!》



《何をどうしたら正解だったんだよ! 明里の人生を滅茶苦茶にしただけじゃないか! そうじゃない……そうじゃない! 明里には幸せな人生を送ってほしかったんだ……》



「うう……明里、ごめん……ごめん……」





《藤倉からのメール……》



『中濱さんには、俺らから全部話した。……正直、時折思い出の場所に向かっては打ちひしがれるお前を見てて、辛かった。だから俺の判断でお前の病気の事を話した、すまない』



《藤倉……》



『お前は、何で中濱さんを止めれなかったんだ、と言うかもしれない。本当にすまない。だけどな、中濱さんは車椅子や松葉杖を使って、傷ついた体で、ただひたすらにお前の為に頑張ってた。ドナーになれるってわかってからはご両親の説得にも、絶対に折れなかった』



《……そんな事が》



『そしてお前の体が手術に耐えられるうちにと、中濱さんの回復を待って手術が行われたんだ。その先はお前の親戚の病院だから詳しく聞いてくれ。……で、さ。お前は今日も、今この瞬間も、泣いているのかもしれない』



《泣くよ。泣くさ……! 全ては僕のせいじゃないか! ドナーになった明里が、手術が終わってから目を覚まさない。まるで僕と入れ替わるように。僕が一人で勝手に突っ走った結果がこれだ!》



『だけど、さ。中濱さんの幸せを願って身を引いたお前がいるなら、中濱さんと全力で向き合うお前はいないのか? お前が中濱さんの為にできる事ってないのか? 助けた、助けられたの前に、お前の気持ちとまずは向き合えないか?』



《僕の気持ちと向き合う……そして、僕が明里にしてやれる事、してあげたい事。僕が…………ううっ」


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