第11話 秋良の想い
「明里、第二公園のベンチで泣いてる。藤倉……電話で申し訳ないけど、明里を、お願い」
『今、
「……もう決めたんだ。手術をして移植のドナー待ちで、その間にも僕はきっとどんどん弱っていく。僕じゃ明里を幸せにできない。ダメなんだ」
『お前……』
「……明里が、さ? 僕と一緒にいたいから、自分の悪い所直すって言ったんだ。泣きながらごめんね、ごめんねって。いっぱい甘えてくる所も、僕にくっつきたがる所も。いつか僕のお嫁さんにって、恥ずかしそうに笑う所も。明里の悪い所なんか、嫌いな所なんか一個もないのに!」
『……知ってるよ』
「僕だって明里と一緒にいたいよ! 大好きな明里とずっと一緒に生きていたかった! 明里……『お爺ちゃんお婆ちゃんになっても手を繋いで、あの海辺を歩きたいな』って言ってくれてた! 僕だって……僕だって! そうしたかった!」
『……ああ』
「……離れるしかない。僕の傍にいたら、明里は幸せになれないんだ……僕の事は忘れた方が、いいんだ……ううっ!」
『……もう、いいよ。わかったから泣くな。ごめんな、お前の辛さをわかってやれてなかった』
「ちが、う……僕が、自分勝手な、だけだ」
『……だけどさ。なあ、これだけは言わせてくれ』
「……?」
『見ててわかる。中濱さんは、お前の傍にいれる事が一番の幸せなんだ。お前と一緒だ』
「……」
『俺と遥、お前と中濱さんの四人で、中学からいつも一緒にいてさ。ダブルデート、何回もしたよな。俺達が頼み込んだ時もあったな』
「うん…………」
『あれさ……実は俺が遥とケンカしてた時が何回かあった』
「えっ?」
『でもどんなケンカをしてても、秋良と中濱さんを見てると……馬鹿らしくなってくるんだ。ケンカしてる時間がもったいなく思えるんだ』
「変な雰囲気だなって思った時は確かにあったけど……そうだったんだ」
『ああ。そん時はすまなかったな。すぐに仲直りして、四人で遊びまくったからわからなかったんだろうが……俺と遥から見たら、二人は理想のカップルなんだよ』
「……嬉しいよ、そんなふうに言ってくれて」
『だから、全てを話すって選択肢は……捨てないでくれ』
「うん…………わかった。ありがとう……」
●
《藤倉……ごめん。心配してくれてるのに……》
《でも……明里には、幸せになってほしい。夏のあの海のように、まばゆい太陽のように輝いていてほしい。曇らせちゃダメなんだ》
《明里の全部が大好きだったよ。にひひーって笑うところも、甘えん坊なところも。素直なところ、人懐っこいところも。手を繋ぎたがるところも、ヤキモチ焼きなところも……ふ、はは。全部大好きなのに……大好き、なのに》
「う、うう……う、ああああああ! あああああああああああ! いっそ、もう殺せよ今すぐに! 馬鹿な僕を死なせてみろよ! 殺せ! 殺せよ!! うああああああああああああああああっ!!」
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