第10話 明里の願い
「秋君と付き合えて、楽しくて幸せで、夢みたいな毎日だったの」
「……うん」
「だから、いっぱい甘えちゃって、わがまま言って。たくさんたくさん……嫌な気持ちにさせて傷つけてごめんなさい」
「……ううん」
「もう一回……一回だけ、チャンスを下さい! 秋君にもう絶対、嫌な思いさせないから! お願い……!」
「……無理なんだ、もう」
「お互い忙しくてなかなか会えない時、毎日一回は電話でひと言でも声が聞きたい、なんて言わない。デートの時、恋人つなぎで一日中いちゃいちゃして歩きたいな、ってわがまま言わない!」
「それが原因じゃ……ない」
「だったら! これからもずっとずっと、秋君のそばにいたいって重いこと言わない! ……いつか秋君のお嫁さんになりたいと、か……。あ、はは。私、こんなに……おねだりばっか……ぐす……ううっ! おねだりばっか……して、たんだ」
「……………………そう、だね」
(まだ……まだ私の悪いところ、いっぱい、直せるって言わなきゃ。泣くな、泣くな明里。ここで……終わっちゃうんだよ?いっぱい嫌な思いさせてごめんなさい……って。わがままでごめんなさいって……!)
「秋、く……ん! ぐす、うぅ……ちが、ちょっとだけ、待っ……」
「……もういいよ、気持ちはわかった。でも、別れよう。今までありがとう。たくさん、たくさんの……幸せをありがとう。じゃ」
「あ! あ……ああ! あ……や、だああ! 置いてかないで! あ、あああああぁぁ!! あああぁぁぁ! うあああああぁぁぁぁぁ! 秋君! 秋君! 秋君! 別れたくないよ! やだよう! うあ、ああああぁぁぁん!」
●
《明里……ごめん。僕は、君を幸せにできない。僕なんかよりもっともっとふさわしい人がいる》
《腎臓の手術。臓器移植……ドナー待ち……》
《明里の未来に、僕はきっといない……》
《全部……叶えてあげたかった。どんな小さな事でも、叶えてあげたかった! なのに……!》
《僕が、幸せに……して、あげたかった、のに》
《いっぱい憎んでいいよ。怒るよね、嫌いになるよね……。でも、明里が僕の事を忘れてくれるなら……幸せになれるなら……これで、いい》
《これで……いいん、だ……》
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