第8話 息が苦しいくらいに
「ううう、ぐすっ、ぐしっ」
「ラスト、僕も泣いちゃった。感動した……! ちーんする? はいハンカチ」
「ティシュで
「あらら。僕の服でちーんしちゃったねー、あはは」
●
「寒ーい!!」
「海風冷たいね、大丈夫? シート小さく置いて座ろっか」
「うん! 寒いのはだいじょーぶー! 私たちの思い出の海ー! お付き合いして四か月目の海―!」
「海ー! そうだね、本当にあっという間。いつ来ても特別な気持ちになる……あ、良かったらプレゼント、今受け取ってくれる?」
「あ、私も! 寒いからちょうどいいかも!」
「じゃあ、メリークリスマス」
「メリークリスマス!」
「……マフラーだ! すっごい深い青……! ありがとう!」
「マフラー! みっつの色が並んですっごい可愛い! やったあ! それにお揃いのプレゼント、気持ちが通じ合ってる感じ!」
「僕も思った! ではでは、さっそく」
「うん!」
「っていうか、嬉しくて体温が上がった。暖かくなった?」
「びっくりするくらい、胸がポッカポカです!」
●
「もう、お日様沈んじゃうね……」
「そうだね。でも、また見に来ようよ。来年は受験あるから頻繁には無理かもだけど、二人の思い出の場所に、来年ももっと先も二人で」
「……うん! うん!」
「もうそろそろ帰ろっか。バスの時間もあるし」
「そ、だね! そう、にゃのですが……いっこだけお願いが……あぅ! やっぱりいいや、忘れてください!」
「お嬢様、何なりとお申し付けください」
「カッコいい! ううう……あの、ですね」
「はい」
「息が苦しくなるくらいに……ぎゅうって、ハグしたいです」
「……!!」
「ダメ、ですか?」
「ダメじゃない! じゃ、じゃあ……ど、どうしたら?」
「私がお邪魔します……うやああああ、どーん。ぎゅうう」
「僕もぎゅうう……中濱さん、耳冷たい。マフラー半分こしよっか」
「高月君もほっぺた冷たい。でも……」
「うん。嬉しくて体も心も、ぽっかぽかになってきた」
「私も! っていうかすっごいドキドキしてるんだけど……離れたくありません。離しちゃヤダー、三年くらいぎゅー」
「何で三年?! ……でもそうだね、離れたくない。このまま時間が止まったらいいのに」
「何か……すっごい幸せな恋愛の物語のヒロインになったみたい。あああ! うそうそ! 私なんかがヒロインなんて! えへへ、聞かなかった事にして下さい!」
「中濱さんはヒロインじゃないよ?」
「えっ。う、うん……」
「待って、聞いて。中濱さんは僕だけの……お姫様」
「…………嬉しい。泣いちゃう。私の彼氏かっこよすぎ」
「実はですね。僕の彼女は世界一可愛くてステキな人です」
「あー、ズルい! じゃあ私の彼氏は宇宙一だもん!」
「あはは、やった!」
「もー! ……大好き」
「僕も大好きです」
「にひひー……ぎゅうう」
「ぎゅうう」
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