第8話 息が苦しいくらいに

「ううう、ぐすっ、ぐしっ」


「ラスト、僕も泣いちゃった。感動した……! ちーんする? はいハンカチ」


「ティシュでらいじょぶ大丈夫……あいがとありがと。……二人が幸せになれてよかったぁ! うわああん!」


「あらら。僕の服でちーんしちゃったねー、あはは」





「寒ーい!!」


「海風冷たいね、大丈夫? シート小さく置いて座ろっか」


「うん! 寒いのはだいじょーぶー! 私たちの思い出の海ー! お付き合いして四か月目の海―!」


「海ー! そうだね、本当にあっという間。いつ来ても特別な気持ちになる……あ、良かったらプレゼント、今受け取ってくれる?」


「あ、私も! 寒いからちょうどいいかも!」


「じゃあ、メリークリスマス」


「メリークリスマス!」


「……マフラーだ! すっごい深い青……! ありがとう!」


「マフラー! みっつの色が並んですっごい可愛い! やったあ! それにお揃いのプレゼント、気持ちが通じ合ってる感じ!」


「僕も思った! ではでは、さっそく」


「うん!」


「っていうか、嬉しくて体温が上がった。暖かくなった?」


「びっくりするくらい、胸がポッカポカです!」





「もう、お日様沈んじゃうね……」


「そうだね。でも、また見に来ようよ。来年は受験あるから頻繁には無理かもだけど、二人の思い出の場所に、来年ももっと先も二人で」


「……うん! うん!」


「もうそろそろ帰ろっか。バスの時間もあるし」


「そ、だね! そう、にゃのですが……いっこだけお願いが……あぅ! やっぱりいいや、忘れてください!」


「お嬢様、何なりとお申し付けください」


「カッコいい! ううう……あの、ですね」


「はい」


「息が苦しくなるくらいに……ぎゅうって、ハグしたいです」


「……!!」


「ダメ、ですか?」


「ダメじゃない! じゃ、じゃあ……ど、どうしたら?」


「私がお邪魔します……うやああああ、どーん。ぎゅうう」


「僕もぎゅうう……中濱さん、耳冷たい。マフラー半分こしよっか」


「高月君もほっぺた冷たい。でも……」


「うん。嬉しくて体も心も、ぽっかぽかになってきた」


「私も! っていうかすっごいドキドキしてるんだけど……離れたくありません。離しちゃヤダー、三年くらいぎゅー」


「何で三年?! ……でもそうだね、離れたくない。このまま時間が止まったらいいのに」


「何か……すっごい幸せな恋愛の物語のヒロインになったみたい。あああ! うそうそ! 私なんかがヒロインなんて! えへへ、聞かなかった事にして下さい!」


「中濱さんはヒロインじゃないよ?」


「えっ。う、うん……」


「待って、聞いて。中濱さんは僕だけの……お姫様」


「…………嬉しい。泣いちゃう。私の彼氏かっこよすぎ」


「実はですね。僕の彼女は世界一可愛くてステキな人です」


「あー、ズルい! じゃあ私の彼氏は宇宙一だもん!」


「あはは、やった!」


「もー! ……大好き」


「僕も大好きです」


「にひひー……ぎゅうう」


「ぎゅうう」


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