第5話 じゅーう…………きゅーうぅ…………はーち…………
(キレイな夕陽。でももう……こんな時間)
「パラソル返してきたよ。うわあ、夕陽……」
「ね! 座って一緒に見ようよ!」
「うん!」
(少しだけ一緒に……もう少しだけ)
「いっぱい遊んだねー。肌がヒリヒリしてる。中濱さんは痛くない? 大丈夫?」
「日焼け止めとUVカットは乙女の基本だよ! SPFとPAがすごいのお母さんから借りてきたの!」
「わからないけど、何かスゴそうだね……」
(……好きって言いたい。でも、断られたらもうこんな風に一緒にいれなくなっちゃう。そんなの、やだよぅ)
「楽しい時間って、あっという間だね。中濱さん、疲れちゃった?」
「ううん! 私も楽しかったなぁって」
(話しかけてたら、もっと一緒にいれるかな。もう少しお話ししたいの。横にいたいの)
「だったらいいけど……時間的に、もうそろそろ帰らないと、だね」
「! ……だね! いっぱい遊んだー! また、その、機会があったら来ようよ! みんなで……たまーに、二人でとか!」
「……そう、だね」
(えっ……あんまりって感じっぽい? もしかして一人ではしゃいで騒いでた? ……泣きそう。ダメ……まだ泣いちゃダメ)
「あの、さ。中濱さん」
「はーい! 中濱明里でーす! ……どしたの? 高月君、疲れちゃったなら早く……帰ろ? 今日は楽しかったー!」
(……泣きたくなるような事、言っちゃヤダ。せめてまだ片想いで、いさせてほしいよ)
「……中濱さん」
「は、い……」
「好き、です」
「……えっ?」
「席が隣同士になって、その……お日様のような笑顔も、優しさも、元気も、全部全部好きでした。この夏休みでもっと好きになりました」
「も、もう! からかってるんでしょ! 私は騒がしくてだだ漏れで、きらきら女子っぽくない中濱さんだよ?」
「今日、告白しようって思ってた。本気です」
「そんな事言われたら、本気にしちゃうよ? 後で『やっぱりウソ』って言われたら……あ、あと十秒だけ、ウソだよーチャンス! 今なら許したげる! じゅーう…………きゅーうぅ…………はーち…………」
「ゼロ」
「……!!」
「返事はいつでもいいから、気持ちをいつか……あ、な、涙……そんなに嫌だった、のかな。……あはは! フラれるの、覚悟してたんだ! だから……だから……そんな顔しないで? み、ミニタオル出すね!」
「うう、ぐす……ち、ちがっ……うのっ」
「えっ?」
「うれ、嬉しくって…………嬉しいよう! うあああああーん!」
「そ、それって! あああ、泣かないで?!」
「ううう、怖かったのお! 今日でフラれちゃうって……思っ、おも……」
●
「お鼻ちーん、する? はい、ティッシュとミニタオル」
「えぐ、ぐす、ぐす…………ちーん! ……あーっ! ごめんなさい、高月君のミニタオルがヒドイ事に! あ、洗って返すね……」
「……? タオルだもん。使わないと、でしょ? それに中濱さんのお役に立てて喜んでるよ、きっと!」
(高月君、優しい。優しい、優しいっ! こんなにカッコよくって、優しくって、ステキな……え。私、またイメトレしてるとか……夢見てるの?)
「こ、こほん。イメージトレーニングでも、夢でもないよ」
「えっ……あ!」
「あはは。でも、これが夢だなんて僕は絶対イヤだよ。せっかく、せっかく! 好きって言えたのに。気持ちが届いた、のに……」
「……高月君、泣いちゃヤダ。ごめんね、ごめんなさい、変なこと言って。何か、夢みたいで……ぐすっ」
「ううん。でも、泣いちゃって……男らしくなくってごめんね。でも……でも僕も……嬉しい。嬉しいんだ……」
「私だって泣いたもん! おソロで、おあいこ! いいんだよ!」
「中濱さん……ありがとう……」
●
「僕……な、情けないところをいっぱいお見せしてごめんなさい」
「私もいっぱい泣いちゃって、ごめんなさい」
「ううん、僕が勘違いさせるような言い方したから……。とりあえず、暗くなってきたから帰ろっか。帰り、たくさんいろいろな話しようよ! ……ま、まままっ! 迷子にならないように……てててて、手とか繋ぐ?」
「……? あ、てててて、手ぇですねっ! ふちゅちゅかもにょにょ右手でしがっ? 嚙んじゃった?! それと、こんな私ですがっ!」
「めちゃめちゃ可愛……こ、こほん。
「はいっ!!!」
(ウソ、ウソ! 夢じゃない?! 高月君と手、繋いでる! 嬉しい! 嬉しいっ!)
「じゃあ、中濱さん! 出発進行です!」
「はいっ!!!」
「あ、その前に……もう一回、ちーんしない? 嬉しくって、また鼻の奥がつーんってしちゃって……」
「はいっ!!!」
「「ちーん!!」」
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