第6話 ~未来を変えられる力~
翌日、彼女は学校を欠席した。
風邪だという。
週が明けて月曜日、彼女は朝から教室に現われた。
少しほっとしたけど、どうにも彼女の方に顔を向けられない。
視線を少し彼女の方に向けて様子をみると、彼女は教室に入るなり、少し辺りを見回していた。
一瞬、僕と目が合いそうになったが、僕はとっさに窓の外に目を向けた。
彼女がこっちを向いて、少し睨んでいるのが分かった。
午前中、なぜかソワソワして全く授業が耳に入らない。
そして昼休み、いつものように教室は騒がしい。
僕は、カーテンに包まれながら、週末に出たばかりの龍にまつわる冒険漫画を読むことにした。
でも、やはり、気になることが頭から離れない。
やむを得ず、本を閉じた。
範囲の思念から、助けを求める悲しげな刺激は感じられない。
カーテンをそっと開けて教室を眺めると、4人の女子とあの彼女がいつものようにはしゃいでいる。
無意識に、彼女に意識が集まった。
彼女の望む未来には、前とは違う姿が映し出されていた。
気が付くとまた、目の前に彼女がやって来た。
「何こっち見てんの!」
「チビのくせに」
「きっもっ」
笑顔で、僕にそう吐き捨てて、4人の方に戻って行ってしまった。
「はぁう、なんか疲れた」
「やれやれだ」
そうつぶやいて、ほくそ笑む。
そして、冒険の続きを愉しむことにした。
「救われたのはきっと、僕の方・・・だな・・・」
本物の勇気は、強い思念よりもずっと、未来を明るく変える力があるのかもしれない。
その後、彼女と会話どころか挨拶すらした記憶はない。
ま、当然か。
数か月後、3年生のクラス替えで、教室で見かけることもなくなった。
多分、別の教室で今も元気にはしゃいでいるに違いない。
合わせ鏡 シーズン2 ブライトさん @BrightSun
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