第4話

「はぁ、はぁ、はぁ。」

(このままじゃ、死ぬ。)

私がこの森を彷徨って五日が経とうとしている。

私はあれ以来一滴も水を飲んでいなかった。

妖精と話した後、二時間ほど経ってから水筒が無いことに気がついた。おそらく妖精と話しているときに、持ってきた水筒を置いてきてしまったのだろうと考え、私はすぐに小高い木の所まで戻った。しかしそこには何もなかった。

その時になんだか少し木が高くなっているような気がした。


そして、水筒、つまり生命線を無くしてしまった私は一度帰ろうかとも考えたが、彼を探すことを優先した。それに、森に入った時にあった小川が見つかるかもしれないとも考えた。

しかし、結局彼も小川も見つけることはできず、今に至る。


(このままじゃ、本当に、死んでしまう。)

私は小さな声で叫ぶ。

「応援要請、応援要請、応援要請。」

しかし、もちろん誰も反応しない。

私の喉は渇き、限界をとうに迎えていた。

「水、水、水、、、」

それでも、私は彼を捜すことを諦めてはいなかった。

(いったい、おまえは)

「どこにいるんだ?」

私は風に吹かれて消えてしまいそうなほど小さな声で零した。

しかし、彼の心配以前に、もはや私自身が限界だった。

(くそ、苦しい。)

「たす、けて、、、」

その言葉を最後に私は意識を失った。



そのとき、森の中心にある小高い木が独り言を言った。まるで小馬鹿にするように何度も繰り返した。


「応援要請、応援要請」

「おうえんようせい、おうえんようせい」

「オーウェン、妖精、オーウェン、妖精」



〜完〜

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【ようせい】 空川陽樹 @haruki_sorakawa

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